だれかに話したくなる本の話

“合併の破算”が作った金融の歴史―『日本の三大銀行』

2002年4月1日に第一勧業銀行と富士銀行、そして日本興業銀行が統合しスタートした「みずほ銀行」。「三菱東京UFJ銀行」「三井住友銀行」の現在の3大メガバンクを形成する口火を切り、当初の報道は「世界最大のメガバンク」とも言われた。
 そんな「みずほ銀行」の前身会社である第一銀行(第一興業銀行の前身)が、実は三菱銀行と合併するはずだった歴史があることをご存知だろうか。

 日本の3大メガバンクの歴史と現状を丁寧になぞっていく『日本の三大銀行』(奥村宏・著/七つ森書館)によれば、その事実が明らかになったのは1969年1月1日の読売新聞1面トップであったという。そこには「三菱、第一銀行が合併、両行首脳合意、夏にも実現」という見出しが躍り、大きく報道されていた。

 当時の日本は高度成長真っ只中であり、欧米諸国にも対抗できる経済力をつけつつあった。それは金融業界においても同様であり、欧米に対抗しうるワールドバンクの必要性が叫ばれていた。そういった状況の中で、三菱と第一銀行が合併に合意したのである。
 しかし、第一銀行が所属する第一グループ系の企業から合併反対の声があがる。なぜなら、この合併は事実上、三菱グループが第一銀行を吸収するものであり、第一グループが三菱グループに呑み込まれることを意味していたからだ。

 結果的に、両行の頭取間では同意していたものの、第一グループの井上会長(当時)の反対により、合併は御破算となった。

 なお、小説家・高杉良氏の『呪縛』(角川書店)はこの合併騒動をテーマとしている。

 もしこのとき、三菱銀行と第一銀行がそのまま合併していたら、今の3大メガバンク体制は全く違っていたものになっていただろう。いや、さらに言えば、今の日本の経済構造そのものも変わっていたのかも知れない。
 1つの選択・決断がその後の歴史を作っていく、ということを強く思い知らされるエピソードである。
(新刊JP編集部/金井元貴)