だれかに話したくなる本の話

気鋭の経営者が明かす起業の実際 「試練は成長のきっかけになる」

起業するということにどんなイメージを持っているだろうか。
自分のやりたいビジネスができる。一方で成功するためにはとてつもない努力が必要。いろいろなことが頭の中に浮かぶが、「チャンスがあるなら起業すべき」と言う人がいる。
オーラルケア事業を手掛ける株式会社シャリオンの角田哲平氏だ。

自身の半生を軸に、起業のすすめやオーラルケアの必要性についてつづった『獅子奮迅 次世代ビジネスのイノベーター』(幻冬舎刊)を上梓した角田氏。本書に込めた思い、そして起業家として考えていることについてお話を聞いた。

(新刊JP編集部)

■「起業というチャンスがあるのなら、それをつかんでほしい」

――まずは本書を執筆したきっかけからお聞かせください。

角田:三つ動機がありまして、一つめは日本人の歯に対する意識の低さに対して啓蒙したかったということです。実は定期的に歯科医院に受診に行く人って6%ほどしかいなくて、日本人の成人の7割から8割が歯周病に罹っていると言われています。その歯に対する意識を高めてもらいたいということがありました。

二つめは、私は30歳で起業をしたのですが、その経験が自分にとってすごく良かったんです。ただ、やはり日本人って起業に対してハードルが高いというか、意識があまり高くないですよね。やりたいことがある若者にはどんどんチャレンジをしてもらって、一緒に世の中を変えていこうというメッセージを伝えたかったんです。

――そうですね。本書にも「日本は起業家の少ない国」だと書かれていました。

角田:そうなんです。そして、三つめが、僕の人生においてキーポイントになった方々、お世話になった方々に対して、自分のやっていることを伝えたい。恩返しとまでいかないですが、「自分は今、頑張っているよ」ということを伝えたいという想いがあり、この本を書かせていただきました。

――いろいろな要素が詰まった一冊だと思います。角田さんの半生を振り返りつつ、歯の啓発や若い起業家のエールも書かれています。タイトルの『獅子奮迅』は角田さんの座右の銘なんですよね。

角田:そうですね。会社の名前が「シャリオン」なのですが、そのモチーフにもなっています。

――角田さんにとってとても重要なキーワードだと思います。この言葉と最初に出会ったのはいつ頃のことなんですか?

角田:高校時代、極真空手をやっていたのですが、その道場の会長から教えてもらった言葉です。そのときから私はずっとこの「獅子奮迅」という言葉を使っていて、メールアドレスもこの言葉を使ったアドレスを使っていました。

――ずっと大事にされてきたわけですね。「猛進するような激しい勢い」といった意味合いがありますが、ご自身で「獅子奮迅」の状態だなと思う時はありますか?

角田:会社の経営はまさに「獅子奮迅」です。いろんな問題が起きては、それに向かって乗り越えていく。例えばこのコロナ禍もそうなんですけど、やはり影響はあるわけで、そこを乗り越えるために「獅子奮迅」のごとく動いていくと。

――2015年に株式会社シャリオンを起業され、これまで5年間、経営者としてやってきました。今、自分自身を経営者として評価するとしたら、どのような評価をつけますか?

角田:まだまだです。新たにやりたいこともどんどん見つかっていますし、もっとやれることもあるので。5年間は本当に一瞬でした。でも、経営者として納得のいかない時間だったと思います。

――やりたいことがどんどん見つかっているという点で、今後特にやりたいことはなんですか?

角田:シャリオンはオーラルケアのメイン事業に据えています。だから、そこから外れることなく、より活動を強化していく感じですね。11月8日が「いい歯の日」だったことあって、例えばレアル・マドリードという世界的サッカークラブがやっている日本のフットボールスクールとコラボして、子どもたちのための歯みがき教室をしたり、港区に住んでいるひとり親家庭に歯ブラシと歯磨き粉を配ったり、児童養護施設に歯ブラシと歯磨き粉を寄贈したりしました。

こうした活動を通して、歯に対する意識を高めて、健康な体をつくりましょうということを言っていきたいと思います。

――角田さんがもともと経営者を目指されたきっかけはなんだったのですか?

角田:もともとサラリーマンをしていたのですが、その時から社長という存在にすごく憧れがあったんです。前職の会社の社長もすごく格好よくて憧れでしたが、自分もトップに立って会社を動かしていきたいという野望があったんですね。

――理想とするリーダー像はどんなリーダーですか?

角田:強く、ブレない、芯がしっかりした人ですね。

――憧れているリーダーとか、理想とするリーダーで具体的な人はいますか?

角田:そうですね…。幻冬舎の見城徹さんはすごく憧れるリーダーです。言葉がすごく強いし、人を惹きつけますよね。

――社長という存在に憧れがあった中で起業をされたわけですが、ただ起業って勇気がいることだと思います。ハードルの高さというか、失敗してしまうのではないかという恐怖感もあるでしょう。その点で、起業しようかどうか悩んでいる人たちにアドバイスを送るとしたら?

角田:とにかくやってみないと分からないので、まずは挑戦してみてほしいです。私はプラス思考なので、何か起きても乗り越えられると思っています。むしろ、乗り越えるために神様が与えてくれた試練なんだと考えるので、それすらも成長のきっかけにしようと思うんですね。

起業というチャンスがあるのなら、それをつかんでほしいです。そして自分にできることを探していくことが大事だと思っています。

――実際、起業する前と後では経営者のイメージは全く違いますか?

角田:全然違います。経理のこと、財務のこと、人材のこと、全部見なきゃいけないので、すべてが学びのようになっています。サラリーマン時代は数字なら売上だけ見ていればよかったのですが、経営者はそうではないのだなと。

それと大切なのが、危機管理能力ですね。何か違和感があったら、そのまま突っ走らないで一度止めるという選択も必要なのだなと。

――特に大変だと感じたことはなんですか?

角田:人材育成でしょうか。思いを伝えて、この事業を一緒にやっていくメンバーを集めて、成長させていく。それはすごく大変なことなんだなと思いました。

――角田さんが経営者として最も大事にしていることは何ですか?

角田:常にアンテナを張って、時代の先読みをすることですね。5年後、10年後を読んで、ビジネスをしていこうと思っています。

(後編に続く)

獅子奮迅 次世代ビジネスのイノベーター

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