だれかに話したくなる本の話

部下を成長させるリーダーが意識的にしている「声がけ」とは

リーダーとして先頭に立ってメンバーを引っ張ろうとしているけれど、どうも上手くいかない。価値観が変わり、どのようなリーダー像を目指していいのかわからない。

そんな人にとって『新時代のリーダーに必要な12のチカラ』(幻冬舎刊)は指針となる一冊だ。本書で書かれているのは、これからの時代のリーダー像。メンバーを引っ張るだけでなく、チーム全体を俯瞰し、個々の能力を引き出す力も求められる。そのために必要な「12の力」を紹介している。

今回は本書の著者であり株式会社サンコミュニケーションズ代表取締役社長の深澤哲洋さんにリーダーのあるべき姿についてお話をうかがった。

■これからのリーダーは部下を「褒めて伸ばす」

――まずは本書を執筆したきっかけをお聞かせください。

深澤:僕はイベントの企画、制作、プロモーションを行うサンコミュニケーションズという会社を経営しています。ですが、実はもともとは27歳まで音楽活動をしていて、今の会社に入ったのは28歳のとき。それが初めての就職でした。それから10年勤めて、5年前に前社長が体調を崩されたこともあって社長に抜擢されました。

それが結構急な話で、どうしたら社員をまとめていけるのかと考えたんです。そこで始めたのが、社員向けのコラムを書くことでした。こういう風に今の会社を考えている、次はこういうことに挑戦したい、あるいは業界の情報などを毎日発信していたのですが、やっぱり最初はあんまり読んでもらえなかったんですよね(苦笑)。ただ、やり続けることでだんだんと反応が出てきて「本にしないんですか?」と言われたり、自分もより長い文章が書けるようになり内容も充実するようになったので、本としてまとめたいと思ったのが、執筆のきっかけです。

――今、ご経歴のお話をされましたが、28歳のときに新卒同然の状態で就職されて、それから10年後に社長というスピード感は驚きます。もともと深澤さんにはリーダーシップがあったということでしょうか。

深澤:会社に入ったときはゼロの状態だった自分がなぜ社長になれたのかということを考えてみると、理由は1つだけではないと思っています。たとえば、この本に書いたものでいえば「やめない力」ですね。28歳で会社に入ってからやめずにやってきたからこそ、自然と上にたどり着いたというところはあると思います。

また、自分を社長に抜擢した創業者、今の会長には「君は組織論を持っているから社長に指名した」と言われました。弊社のプロデューサーはみな優秀で、クリエイティブの世界で能力をしっかり発揮しています。スポーツで言うならエースストライカーであったり、ホームランバッターですね。一方で僕はプレイヤーとして力を発揮するよりは、全体をまとめるコーチや監督タイプです。そういう背景もあって、リーダーにもともと向いていたということもあると思います。

――では、昔からリーダー的なポジションにいることが多かった。

深澤:そうですね。振り返ってみると、子どもの頃から今に至るまでリーダー的な役割を結構やってきているんです。それはなぜだろうと思って、その答えを探すためにこの本を書いたところはあって、ここに書いた12の力が自分にあったということが分かりました。

――会長から「君は組織論を持っている」と言われたとおっしゃいましたが、ご自身ではそういう感覚はありましたか?

深澤:もともと人を育成することは得意だと感じていました。自分が個人で結果を出すよりも、人を育ててその人に結果を出してもらうほうがモチベーションは高いですし、自分自身の仕事も結果的に楽になりますからね。

――本書では「キャラ系」「スキル系」「トライ系」という3つの系統に分けて、リーダーに必要な12の「力」を紹介しています。まずは「キャラ系」ですが、一時代前の引っ張るタイプのリーダー像から、今は調和型のリーダー像に理想像が変化しているように感じます。その変化について深澤さんはどのようにお考えですか?

深澤:そうですね。僕自身は引っ張るタイプのリーダーのもとで仕事を学んできて、だいぶ厳しい環境にも身を置きました。ただ、今はそうしても部下がついて来ないんですよね。自分自身も引っ張られるタイプのマネジメントは合わなかったと感じていますし、今はそうした経験を反面教師にしている部分もあります。

「調和」という言葉はまさにぴったりで、僕はよく「潤滑油だよね」と言われることがあるんです。周囲と調和をしながら、みんなで成果を出していく。そういうリーダー像を自分なりに模索してきました。

――おそらく深澤さんは人の能力を引き出すことに長けているのではないかと思います。これは部下の育成において重要なスキルだと思いますが、社長として社員と接するときに意識されていることはありますか?

深澤:部下の育成においては、その部下の良いところを常に見るようにしています。その人が新人ならできないのは当たり前です。その中で光る部分を探して、「ここは才能があるよね」「ここはスキルがあるね」と褒めて良いところを伸ばしていき、強みにしていく。そちらの方が短所を無理に改善するよりも成長が早いように思うんです。

それにモチベーションの管理も大切です。ちょっとでも成果を出したり、貢献をしてくれたら褒める。「君のおかげだよ」と伝える。これを意識的にやっていると、みんな頑張ってくれるんですよね。

――まさに褒めて伸ばすタイプですね。社員がチャレンジしやすい環境をつくっているような意識でしょうか。

深澤:そうですね。本の中でも「お任せ力」という項目が出てきますが、まだ早いかなと思うことでも、任せてみると意外に力を発揮したりしますし、逆に任せないと全然成長しません。

僕自身、28歳で未経験だった自分に先輩はどんどん挑戦させてくれました。そうせざるを得ない状況もあったのですが、2年目から何億円規模の仕事を任せてくれたりして、プレッシャーの中で成長できたという実感があるので、後輩にもそうしてあげたいという思いがあります。

――「スキル系」では「ハッタリ力」や「采配力」「言語化力」といった、学んで身に付く力が紹介されています。こうしたスキル系の力を身につけていくうえで必要なことは何だと思いますか?

深澤:繰り返しやって習慣化することが大事だと思います。先ほど僕が社長になって社員たちにコラムを書いていたとお伝えしましたが、実は文章を書くのは苦手で、それを克服するためにやっていたというのも理由の一つなんです。

それを続けてきて、こうして本を出せるまでになったわけですから、「継続は力なり」なのだと思います。だから、今の若い世代に伝えたいこととしては、とにかくいろいろ繰り返してやってみてほしいですね。習慣化できる力は特別なものではないですから。

(後編に続く)

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