中小企業経営者の頼れる伴走者「社外CFO」に求められる資質とは?
日本企業の99.7%を占める中小企業。
経営者たちは、日々「お金の見通しをどう立てるか」という壁に直面しています。
そのため、会社を成長させたいと願う一方で、事業や会社の状況を客観的に見てアドバイスをくれる「伴走者」を求めています。
そこで今、新たなキャリアとして注目されているのが、「社外CFO(最高財務責任者)」です。「社外CFO」とは経営者の伴走者となるのですが、中小企業の多くはこうした役割を担う人材がいないという問題があります。
『社外CFOになって、たちまち年収1200万円を稼ぐ方法(すばる舎刊)は、経理・会計の経験者や税理士事務所での業務経験者などが、「社外CFO」として経営者を支える存在になれるとしています。
今回は本書の著者で、自身も社外CFOとして活動している長友大典さんにお話をうかがい、今中小企業経営者が求めている人材や、「経理・会計」と「財務」の違い、社外CFOに求められる資質などについて語っていただきました。前編では、社外CFOという新しい働き方の可能性を伺いましたが、後編では実際に活躍できる人の特徴や、経営者がCFOに何を求めているのかを掘り下げます。
■社外CFOとして活躍できる人、できない人
――本書では「上場を目指していない中小企業の財務」を活躍の場として挙げています。このジャンルで必要とされるスキルや知識として「投資判断」「銀行との関係構築」が挙げられていましたが、その他にはどのようなものがありますか?
長友:上場企業は別として、非上場の中小企業の財務に限定すると、まずは「投資判断」と、「金融機関との関係構築」ができればいいと考えています。私自身もコンサルティングや社外CFO業務を始めた頃はそのくらいしかできなくて、お客さんのところに行って経験を積んでいくうちに、それ以外の様々な知識が身につきました。
だから、スキルとしてはその2つでいいのですが、逆にいえばスキル以外のところ、たとえばそのスキルやノウハウを使って目の前の課題にどうアプローチするかといったことや、CFOとしてのマインドにも目を向けてほしいと思っています。これらのことは今回の本の中で詳しく解説しているので、ぜひ読んでみていただきたいと思います。
――上場を目指していない中小企業の社外CFOに必要なのは株式の知識ではなく借入の知識であり、必要な知識が狭いため集中して学べば数カ月で身につくとされていました。ただ、座学で身につくことは限られていますし、実践的な知識をいかに身につけるかというところが難しいのではないかと思いますが、この点についてアドバイスをいただければと思います。
長友:多くの人が実践的な知識を欲しがりますし、それは当然のことなのですが、魔法の杖はないというのが正直なところです。特に企業財務は定まった答えがない世界で、一つの課題に対して答えが何通りでもありますから、「正解なんて存在しない」という前提を持って、「何がなんでもお客さんに貢献するんだ」という気持ちで向かっていくことが大切です。現場でそれを繰り返していくうちに実践的な知識が身についていくということを私も常に言っています。
そして、もし自分の力だけでどうにもならないのなら、その課題に対する答えを持っている人の協力を仰いだらいいんです。そのためにコミュニティが大切になってくるわけです。
――アドバイスを求められる人が周りにいるかどうかは大きいですよね。
長友:そうですね。でも企業活動の現場で2年もやれば、みなさんかなりのレベルになりますよ。
――企業の経営者側から見たら、社外CFOに入ってもらってよかったと感じる瞬間はどんな時なのでしょうか?
長友:まずは、自分だけでは気づかない課題に気づかせてもらった時ですね。経営者って、伴走する人がいないと「迷路」に入り込んでしまって、ゴールがどちらにあるのかわからなくなってしまうことがよくあります。そんな時に状況を整理して「ゴールはこっちですよ」とアナウンスしてあげるのが社外CFOの一つの役割だと考えています。それができた時は感謝されます。そして、もちろんそのゴールに到達できた時も感謝されますね。
――また社外CFOの需要について教えていただきたいです。CFOのいる中小企業はあまり多くないと思うのですが、必要としている経営者は多いものなのでしょうか?
長友:経営者の心理として「売り上げを作ることに専念したい」というのが本音です。何かやりたいことがあって独立したのに、それができずに金策ばかりしているのは、どう考えても本意ではないわけですから。売上を作ることに集中できればもっと会社を伸ばせるのに、と思っている経営者であれば、CFOがほしいはずです。
――社外CFOとして活動するうえで「どう顧客をつかむか」は誰もが考えるはずです。顧客とのマッチングの方法としてはどのようなルートが考えられますか?
長友:顧客とは紹介で会うのが一番いいと思っています。マーケティングの知識がある人はウェブ広告を出したりするのもいいと思いますが、ほとんどの人はそうではないと思うので。
最初の顧客をつかむために、いきなり交流会に行ってしまう人がよくいるのですが、これはいい方法とはいえません。“営業しない営業”が、社外CFOの理想形です。
信頼は紹介からしか生まれません。最初の顧客は、身近な人の紹介で出会うことをおすすめしています。
――社外CFOの適性がある人はどのような人なのでしょうか?スキルや性格、経験などの特徴を教えていただきたいです。
長友:これは「向いていない人」のお話をする方がわかりやすいかもしれませんね。さきほど「偉そうにする人は経営者から信頼されない」というお話をしましたが、「先生」と呼ばれたいような人は向いていません。経営者に伴走したいという思いが強い人や、人の役に立ちたい人が向いていると思います。
また、企業の財務の課題は定まった解答がありません。だから、唯一の正解を求めてしまう人や完璧主義の人も向いてないのではないかと思います。
――最後に読者の方々にメッセージをお願いいたします。
長友:税理士事務所や会計士事務所で働いていたり、企業で経理をされていたりなど、会計業務にかかわる様々な人に向けて書きました。というのも、こうした職業の方々は「作業屋さん」という目で見られがちで、評価も低いし単価も低い働き方になりやすい。でも、こうした方々がキャリアを飛躍させるチャンスは実はたくさんあります。社外CFOもその一つです。「自分はもっとできるのに」という思いを抱えている人にこの本が届けばいいなと思っています。
