だれかに話したくなる本の話

“伊坂幸太郎”作品の魅力とは?

伊坂幸太郎氏の作品の面白さの1つは、いくつもの伊坂作品の間で同一の登場人物が登場したり、その人物の行動が他の作品に影響を与えたりするところだ。読者はそのシーンを見つける度に「この人、前の作品にも出てきた!」と思わずニヤリとしてしまうことだろう。

 現在話題になっている最新作『マリアビートル』(角川書店/刊)ではその“カラクリ”が色濃く出ている。
 舞台は東京―盛岡間を走る東北新幹線。酒びたりの元殺し屋「木村」。機関車トーマスが好きな檸檬。生真面目で、小説が好きな蜜柑の殺し屋コンビ、やたらツイてない殺し屋「天導虫」こと七尾、中学生の「王子」。主にこの4つの主観で物語は進む。そして、それぞれの仕事、思惑がいつしか絡み合い、登場人物たちが交錯していく。

 この作品の魅力はこうした主役級の登場人物だけではない。以前の伊坂作品である『グラスホッパー』から「槿(あさがお)」と「鈴木」の2人が登場し、物語そのものに大きな影響を与える。
 つまり、本作は『グラスホッパー』の続編なのだが、主人公たちを刷新している以上、“新しい作品”としても読むことができる。

 小説の中に散りばめられた伏線、アイテムが、全て活かされ、つながっていく。綿密に練られた小説であり、伊坂幸太郎独特の世界を存分に味わえる一作。読者であるあなたも七尾たちの乗る東北新幹線に乗っているつもりで、読んでみてはどうだろう。
 もちろん『グラスホッパー』を読んだ人にとっては必読だ。
(新刊JP編集部/田中規裕)