だれかに話したくなる本の話

映画「K−20」公開、「怪人二十面相」の世界へあなたを招待

映画「K−20 怪人二十面相・伝」が本日より全国で公開されている。

 謎の男に騙され、世間を騒がせていた怪人二十面相に仕立て上げられたサーカス団員・遠藤平吉を主演である金城武さんが演じる本作は、北村想氏の小説『怪人二十面相・伝』(小学館)が原作となっている。

 「怪人二十面相」シリーズは過去に幾度となく制作されている。近いところでいえば2002年にビートたけしさんが演じた「二十面相」(2002年8月27日にTBS系で放送)があるが、このドラマを覚えている方も多いのではないか。
 今作は北村氏の作品が原作であるが、やはり「怪人二十面相」といえば、江戸川乱歩であろう。

 自分の顔を忘れてしまうほどの変装の達人であり、郵便ポストや、時には巨大カブトムシにさえ化けてしまう怪人二十面相がどう描かれているかに期待が高まるが、乱歩の作品には「怪人二十面相」シリーズのもの以外にも隠れた名作が多い。

 二人の若者(「怪人二十面相」シリーズでは、そのうち一人は若かりし頃の明智小五郎だとされる)が刑務所に入っている泥棒が残した大金を巡ってその隠し場所を示していると思われる暗号に挑む『二銭銅貨』(講談社)は乱歩にとっても、そして探偵小説にとって歴史的に重要な作品だ。また、四肢すべてと聴覚を失った戦傷軍人の妻が、夫を愛する気持ちと、虫のように這い回る他なくなった彼をもっと傷つけてやりたい気持ちの間でさまよう『芋虫』(角川書店)は非常に芸術点が高い作品である。

 これらはシリーズに属さない短編であるが、本家「怪人二十面相」シリーズでは、二十面相と明智小五郎の知恵比べが存分に楽しめる『青銅の魔人』(ポプラ社)、『怪奇四十面相』(ポプラ社)がお勧めだ。奇抜なアイデアと、深く緻密な心理描写を併せ持つ乱歩作品を、映画と共に味わってみるのもいいかもしれない。
(記事/山田洋介)