だれかに話したくなる本の話

イケメン・美人ほどかかりやすい病

“自分の容姿は人と比べて劣っているのではないか”“私ってブスかも…?”
 こんな悩みを持ったことはありませんか?
 自分の容姿に関する悩み自体は、多くの人が一度は経験するものです。しかし、それがあまりに行き過ぎてしまい、対人関係をはじめとした日常生活に支障が出てしまっている人は、もしかすると“身体醜形障害”かもしれません。
 「身体醜形障害」とは、客観的に見て醜くないのにもかかわらず、自分をひどく醜いと思いこんで苦しむ神経症の一種で、日本では人前に出るのを避ける場合が多いため対人恐怖症の一種とされる心の病を指し、「うつ病」とならんで増加傾向にあります。
 身体醜形障害とは一体どのような病気なのでしょうか。
 『身体醜形障害 なぜ美醜にとらわれてしまうのか』(鍋田恭孝著/講談社刊)から、その原因や症状を紹介します。

■身体醜形障害の原因
 身体醜形障害が生まれる原因として挙げられるのは、自分で思っている自分の容姿と、他者からみた自分の容姿との間のズレです。こうしたズレが生まれる要因の一つとしてメディアが流す「魅力的な容姿のイメージ」に振り回されてしまうことなどが挙げられます。
 例えば女性なら、「やせている=美しい」というイメージに固執した結果、過度なダイエットをしてしまったり、男性ならカツラや育毛剤などのCMを見て、「若はげ」や「薄毛」を醜いと思いこんでしまったりということが起こるのです。
 思い悩むだけならまだしも、それが原因で人と接するのが怖くなってしまったり、家に閉じこもってしまったり、ということになってしまうようだと身体醜形障害の疑いがあります。

■身体醜形障害はイケメン・美人程かかりやすい?
 身体醜形障害の特徴・症状はいくつかあります。
・思春期の発症が多い
 思春期はさまざまな心の病を発症しやすい年代ですが、身体醜形障害も例外ではありません。15歳〜19歳の、理想と現実の境目で苦しむ年代が最も発症しやすいといいます。

・実際の容姿は魅力的
 自分の容姿を「きわめて醜い」と病的に思い悩み、結果として対人恐怖や強迫性障害、摂食障害を引き起こすのが身体醜形障害です。本書の著者である鍋田恭孝氏によると、身体醜形障害の患者で、明らかに容姿に問題があると思われる人はほとんどおらず、むしろ多くは「かなり格好いい」レベルの人だったそうです。

・自分の容姿は「−100点」
 身体醜形障害かどうかの判断をするにあたって、容姿に点数をつけてもらうという方法があります。「100点満点を超美人(または超イケメン)として、50点を平均とし、0点をひどく醜いとしたら、何点ですか?」と聞いてみるのです。そこで自分の容姿を「マイナス100点です」「マイナス30点です」などと答えた人は身体醜形障害の可能性が高いと考えられます。

・自己愛傾向、妄想傾向、対人不安傾向が見られる
 容姿が「きわめて醜い」と病的に悩むこと以外にも、自己愛が強い、妄想傾向がある、対人不安傾向があるといったことも身体醜形障害の特徴です。

・完全主義、負けず嫌いの人がなりやすい
身体醜形障害にはなりやすい性格の人と、そうではない性格の人がいます。なりやすい性格としては
・完全主義
・負けず嫌い
・一度感じた気持ちを他に転換するのが苦手
・納得いかないことに我慢できない
などが挙げられます。

◇ ◇ ◇
 身体醜形障害はひきこもりや対人恐怖だけでなく、家庭内暴力や自殺にもつながる軽視できない病気で、治療は薬物療法と心理療法を組み合わせて行われます。特に思春期に症状があらわれやすいということなので、その年代のお子様を持つ方はこの病気についての知識を持っておくべきかもしれません。
(新刊JP編集部)