だれかに話したくなる本の話

11月公開「MIRACLE デビクロくんの恋と魔法」原作者にインタビュー

出版界の最重要人物にフォーカスする『ベストセラーズインタビュー』!
 第60回となる今回は、今年7月に新刊『小森谷くんが決めたこと』(小学館/刊)を刊行、そして昨年発売された『デビクロくんの恋と魔法』が映画化と、ますます勢いに乗っている中村航さんです。
 『小森谷くんが決めたこと』は、実在する一般人「小森谷くん」に徹底取材、彼の半生をそのまま小説にするという、風変わりな小説です。
 この奇妙な小説は一体どのように生まれ、書き上げられていったのか。映画版が11月公開予定の『デビクロくんの恋と魔法』の話も含めて、中村さんにお話を伺いました。今日はその第二回をお送りします。

■願わくば世界が少し優しく見えるような小説を書きたい
―中村さんといえば、2013年に刊行した『デビクロくんの恋と魔法』の映画化も話題となっています。今年11月公開ということですが、もうできあがった映像はご覧になりましたか?


中村:まだ見てないんですよ。もう少ししたら見られるのではないかと思います。

―キャスティングが原作のイメージにぴったりですね。

中村:そうですね。デビクロくん(主人公の分身)が生まれたのが12月24日なんですけど、その役の相葉雅紀さんも12月24日生まれなんですよね。偶然なのですが、おもしろかったです。

―デビクロくんもそうですが、中村さんの小説には、優しくて、少し気弱な男性が主人公になっていることが多い気がします。

中村:男性を主人公にする時、丁寧でやさしそうな子を書くことは、確かに多いです。反対に、ロックンロール! みたいな人を書くこともある。『デビクロくんの恋と魔法』の主人公は、「デビクロくん」として活動する時は「闇の化身」、「書店員」として働いている時は子供に優しく、丁寧に生活することを心がけているような人、という極端な二面性があります。僕の小説を読んでくれている方にとっては、どちらも馴染みやすいキャラクターなのではないでしょうか。

―中村さんの小説は、読んだあとに心がすこしほぐれて温まったように感じられるのが特徴的です。ご自身にとっての小説の理想像がありましたら教えていただければと思います。

中村:読み終わった後に世界がクリアに見えるような作品ですかね。願わくば世界が少し優しく見えるような小説を書きたいと思っています。

第3回「仕事をやめて退路を断ち、小説家を目指す」につづく