だれかに話したくなる本の話

【「本が好き!」レビュー】『芥川症』久坂部羊著

提供: 本が好き!

表題にはじまり、短編のタイトルが作品にぴったりです。
というか、タイトルが先ですよね。

最初の数ページでハマってしまい、やめられなくなりました。
父親が病院で亡くなったが、医者の説明に納得がいかない息子、
手術をしたのかしないのか、聞く人によって違う答えが返ってくる。
読み手も身内になったかのような錯覚を覚え、
専門用語に振り回される「病院の中」

アメリカで心臓移植手術をするため、寄付が募られた。
集まったお金で無事手術は成功し帰国した。
しかし、重労働はできないため仕事は長続きしない。
そのうちパチンコ漬けの毎日になった。
多額の寄付金を食いつぶす毎日、しかし慈善家から叱られた。
パチンコをさせるために活動したのではないと。
自分の身体ではあるけれど、人の思いが覆っている。
ある日交通事故で死んでしまった。
自分はこの世とあの世の中間点にある門をくぐれないでいる。
どうしたらいいものか悩む「他生門」

半身不随で一日中炬燵に座っている父親を看ている息子、
新米のケアマネの直子が訪ねることになった。
頑固一徹、元職人78歳の父親は、そんな直子を拒否した。
父親と息子は、常に喧嘩口調で仲はよくない。
半身不随ながら、息子と取っ組み合いのけんかもしょっちゅうで、
何度目かに訪れた時遭遇した。
間に入ろうが何しようがやめないため、大声を出した、ケアマネ失格だと思った。
しかし、それが仲直りをするきっかけとなった「バナナ粥」
これが一番面白かった。

他に、ちょっと気持ち悪いグロテスクな「耳」
生き物の命を救うことで、自分は救われると信じる看護師の話「クモの意図」

どの作品も面白く、再読したいと思える作品でした。
一章読み終えて、もう一度前の一章を再読、
2度目でも、初めて読んだ時の面白さを同じように味わえました。
2度おいしい本です。

(レビュー:ネコ

・書評提供:書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」

本が好き!
『芥川症』

芥川症

芥川龍之介の名短篇に触発された、前代未聞の医療エンタテインメント。黒いユーモアに河童も嗤う全七篇。

この記事のライター

本が好き!

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