だれかに話したくなる本の話

「シンプルに端的に」の逆を行く 滝口悠生・新刊『茄子の輝き』を語る(前編)

「シンプルに端的に」の逆を行く 滝口悠生・新刊『茄子の輝き』を語る(前編)

「小説」や「文学」に対する一般的なイメージとして多いのは「難しくて読みにくい」「よくわからない」といったものだろう。それだけに、「どうせ最後まで読めないから」と敬遠されてしまうことが起こり得る。

しかし、「よくわからないが、抜群におもしろい」「読みにくいが、なぜか読めてしまう」類の小説は、確実に存在する。

滝口悠生氏の小説はその代表格だろう。スピード感のあるストーリー展開で、読者を物語に引っ張り込んでいく、というタイプではない。語り口はゆっくりと、迂回したり、寄り道したり、立ち止まって佇んだりのそぞろ歩き。もどかしさを感じるかと思いきや、案外それが心地よかったりする。

そんな世にも不思議な「滝口ワールド」。ご本人はどう考え、どう創りあげているのだろうか。(インタビュー・記事/山田洋介)

『茄子の輝き』

茄子の輝き

輪郭を失いながら輝き続ける、記憶の中のいくつもの場面。芥川賞作家、待望の受賞後第一作。旅先の妻の表情。大地震後の不安な日々。職場の千絵ちゃんの愛らしさ――。次第に細部をすり減らしながらも、なお熱を発し続ける一つ一つの記憶の、かけがえのない輝き。覚えていることと忘れてしまったことをめぐる6篇の連作に、ある秋の休日の街と人々を鮮やかに切りとる「文化」を併録。芥川賞作家による会心の小説集。