だれかに話したくなる本の話

ミュージシャンにしてマイケル愛好家の西寺郷太が描き出す“マイケル・ジャクソンの光と影”―【書評】『新しい「マイケル・ジャクソン」の教科書』

2009年6月25日。その日、一人の偉大なエンターテイナーがこの世を旅立った。その名は「マイケル・ジャクソン」。“King Of Pop”と呼ばれ、世界で最も影響力のある人物の一人だった彼だったが、その最期に何を想いながら亡くなっていったのか、もう知る由もない。

 そして彼が亡くなった後も、その狂騒は治まることはない。多くの追悼盤がリリースされたと思えば、先月29日には、「自然死」ではなく薬剤の過剰投与による「他殺」と断定されるという衝撃のニュースが駆け巡った。
 さらに、昨日28日には死の直前に行ったコンサート・リハーサルの模様を映画化した「THIS IS IT」の前売りチケットが発売され、ファンが長蛇の列を作ったという。

 もちろん追悼本も次々に出版されているが、その中でも一際評価が高い本がある。ビジネス社から出版されている『新しい「マイケル・ジャクソン」の教科書』だ。

 本書を執筆したのは日本のポップ・ロックバンドであるノーナ・リーヴスのヴォーカリスト・西寺郷太氏。西寺氏は知る人ぞ知るマイケル・ジャクソンマニアで、あまりの“緻密さ”にファンをはるかに凌駕するレベルの知識と研究の成果が本書に詰め込まれていることにまず驚くだろう。

 本書で描かれているマイケルの人生は壮絶だ。兄弟たちとジャクソン・ファイヴとしてデビューし、確かに成功は果たした。しかし、父親による“恐怖政治”のもとで育ったマイケルは、友だちはおらず寂しくて泣いていたという。

 その後、「スリラー」(1982年)や「BAD」(1987年)といった歴史的なアルバムを生み出し、名実ともに“King Of Pop”という称号を手にしたマイケルだったが、90年代に入っての奇行ぶりはご存知の通りだろう。西寺氏はあとがきでこう綴っている。

 残念ながら90年代以降、マイケル・ジャクソンはなぜか一般的に嘲笑の対象のような存在になっていました。彼の「ファン」であるぼくですら、冷笑、誹謗中傷を受けたことは一度や二度ではありません。(p316より)

 しかし、マイケルは本当に迷走していたのだろうか? 完璧主義者であったというマイケルが、音楽と向き合う姿勢のあまりの深さに周囲がついに理解できなかったということなのかも知れない。

 本書は大手ネット書店の「Amazon」でも、レビュアーからは数あるマイケル本の中でも非常に読みやすく、西寺氏によるマイケルへの愛が感じられるという意見が多くを占め、マイケルファンたちにも好評だ。
 ファンだけでなく、マイケルの音楽が好きな人は、本書を読み直し、今一度、世界のポップスターを見つめなおしてはいかがだろうか。
新刊JP編集部/金井元貴)

『新しい「マイケル・ジャクソン」の教科書』
著者:西寺郷太
出版社:ビジネス社
定価(税込み):1995円
発売中