だれかに話したくなる本の話

『ダ・ヴィンチ・コード』作者が来日 最新作のテーマ「人工知能」を語る

単行本・文庫合計で一千万部を突破する大ヒットとなった『ダ・ヴィンチ・コード』などで知られるアメリカの作家、ダン・ブラウン氏が来日。5月28日に都内で記者会見を行った。

今回の来日は、2月に発売された新刊『オリジン』(上下巻、KADOKAWA刊)の刊行を記念して実現したもの。日本でも人気、知名度ともに高いブラウン氏だが、来日するのは1983年以来、作家となってからは初めてだという。

『オリジン』は、『ダ・ヴィンチ・コード』や『天使と悪魔』と同様、ロバート・ラングドン教授が事件に巻き込まれ、追跡劇を繰り広げながら歴史の謎に迫るシリーズの5作目。ラングドンについては、俳優のジャン・レノが演じている映画版が印象に残っている人は多いだろう。

表紙

■ラングドンシリーズ最新作のテーマは「人工知能」!著者が語るシンギュラリティの行く末

デビューから一貫して「宗教と科学のパラドックス」をテーマとした小説を書いてきたブラウン氏だが、その作風は今作でも健在。『オリジン』で、科学の象徴として「人工知能」をモチーフとしている。

人工知能は近年ホットワードとなっているだけに、会見でも人工知能にまつわる質問がよく投げかけられた。

「人工知能がいずれ人類を滅ぼすのではないか」という議論は、AIの話題をする時に必ずといっていほど出てくる。AIの知性が人類の総和を超える瞬間を「シンギュラリティ」と呼ぶが、この瞬間へのイメージはやはり不安なものだろう。

ただ、ブラウン氏は「あらゆる技術は、悪にも善にも使えるもの。人類を破壊する技術は核兵器や生物兵器といった形ですでに存在しているわけで、それでも我々が生き残っているのは、人類を存続させようという直感的な願望が、そうでない人たちの思いよりも上回っているからだ」と語った。

表紙

シンギュラリティについての見解も、楽観的で「賢く扱うことができれば、シンギュラリティは人類にとっての大躍進の瞬間になる」とした。

『オリジン』では、人工知能に代表される技術と、人類が古くから依ってきた宗教との対立がストーリーの背景として描かれている。作中ではこの対立がかなり苛烈な形で表現されるが、現実でも起こっているこうした対立については、「これまで神聖なものとして保存されていた領域に、科学は少しずつ侵入する。科学によって“神の領域”はが減るにともなって、宗教の影響力は小さくなっている。科学と宗教の対立はその過程で起きるものだ」とした。

2月の発売以降、既に多くの反響を呼んでいる『オリジン』。人類が直面している問題や課題が壮大な物語の中に織り込まれている本作は、誰にとっても刺激的な読書体験になるはずだ。
(新刊JP編集部)

オリジン(上・下)

オリジン(上・下)

宗教象徴学者ラングドンは、スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館を訪れていた。元教え子のカーシュが、“われわれはどこから来たのか”“われわれはどこへ行くのか”という人類最大の謎を解き明かす衝撃的な映像を発表するというのだ。カーシュがスポットライトを浴びて登場した次の瞬間、彼は額を撃ち抜かれて絶命した。カーシュ暗殺は、宗教界によるものか?もしくは、スペイン王宮の差し金か?かくして、誰も信用できない中で、ラングドンと美貌の美術館館長・アンブラは逃亡しながら、人工知能ウィンストンの助けを借りて謎に迫る!

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