だれかに話したくなる本の話

いまだから読んでおきたい 「原爆」を知る16冊

1945年8月6日午前8時15分、広島。
1945年8月9日午前11時2分、長崎。
日本に落とされた2つの原子爆弾は、あまりに多くの犠牲者を生んだ。

それから73年。今を生きる私たちは過渡期にいる。物心をついた年齢に被爆した人たちは高齢となり、原爆を経験していない世代が被爆体験を継承し、原爆の悲惨さを語り継ぐ時代に移り変わろうとしている(そして、実際にその波は押し寄せている)。

次世代に伝えるために、私たち学ぶべきことがある。そしてそれは本からも学ぶことができるはずだ。
今回は新刊JP編集部が「原爆を知るための16冊」をピックアップし、紹介する。

『夏の花・心願の国』<広島>

著者:原民喜 出版社:新潮社
原爆文学の代表的な作品。淡々と凄惨な風景が、その文に映っている。

『屍の街』<広島>

著者:大田洋子 出版社:日本ブックエース
原爆投下の瞬間、その直後の惨状を直視した一冊。『夏の花』にならぶ原爆文学の代表作品。

『ヒロシマ』<広島>

著者:ジョン・ハーシー 出版社:法政大学出版局
1946年発行、「20世紀アメリカ・ジャーナリズムの業績トップ100」の第1位。

『はだしのゲン』<広島>

著者:中沢啓治 出版社:中央公論社
原爆の凄惨さ、恐怖、それでも生き抜く者たちを描いた不朽のマンガ作品。

『夕凪の街 桜の国』<広島>

著者:こうの史代 出版社:双葉社
「桜の国」は、被爆二世以降の様子を描いた数少ないマンガ作品。

『原爆と検閲』<広島・長崎>

著者:繁沢敦子 出版社:中央公論新社
原爆投下直後の検閲に迫る新書。惨状を「伝えない」のはどうしてだったのか?

『原爆・五〇〇人の証言』<広島・長崎>

著者:朝日新聞社(編) 出版社:朝日新聞出版
1977年、朝日新聞社が500人を動員して作成したルポ。「原爆とはなんだったのか」を突きつける。

『夕凪の街と人と(大田洋子集第3巻)』<広島>

著者:大田洋子 出版社:日本図書センター
1953年の広島のルポルタージュであり私小説。原爆はその後長く、因縁を植えつける。

『ヒロシマ・ナガサキ 二重被爆』<広島・長崎>

著者:山口彊 出版社:朝日新聞出版
広島で、そして長崎でその惨状を経験した山口氏の生き方は勇気を与えるだろう。

『長崎の鐘』<長崎>

著者:永井隆 出版社:日本ブックエース
長崎大学医学部の永井博士が執筆したナガサキ原爆文学を代表する一冊。

『ナガサキ 消えたもう一つの「原爆ドーム」』<長崎>

著者:高瀬毅 出版社:平凡社
浦上天主堂はどうして残らなかったのか?現代からその謎に迫る。

『長崎原爆記―被爆医師の証言』<長崎>

著者:秋月辰一郎 出版社:日本ブックエース
福島原発事故直後から話題になった、長崎の医師によって書かれた被爆証言。

『原爆の子』<広島>

著者:長田新 出版社:岩波書店
少年少女たちによる被爆体験記録。世界に知れ渡る本。

『黒い雨』<広島>

著者:井伏鱒二 出版社:新潮社
被爆日記をもとに書かれた、被爆者たちの実像。不朽の名作。

『戦争論理学 あの原爆投下を考える62問』<広島・長崎>

著者:三浦俊彦 出版社:二見書房
原爆投下は「正しかった」のか、究極の問題を考える。

『「被爆二世」を生きる』<その後>

著者:中村尚樹 出版社:中央公論新社
一番大切なことは、私たちがこれから「原爆」とどう向き合っていくかである。被爆二世たちの活動からその一つの形を学ぶことができる。

 ◇

原爆のむごたらしさ、悲惨さを知るとともに、その後、人々がどのように生きていったのかということを知るということが必要であると感じている。

『夕凪の街 桜の国』の「桜の国」で描かれている被爆二世以降への「差別」は、現代を生きる私たちにおいて重要なトピックである。
冒頭に述べたように、これから原爆を実際に経験していない人々が原爆投下を語る時代に入っていく。その際にその出来事が「歴史」として語られないように注意しなくてはならない。その問題は、現代を生きる私たちに今なお突きつけられている。

(選定・評:新刊JP編集部/金井元貴)

*この記事は2011年に新刊JPで公開された「夏読ミュージアム」の「いまだから読んでおきたい 「原爆」を知る16冊」を再編集したものです。

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金井元貴

1984年生。「新刊JP」の編集長です。カープが勝つと喜びます。
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