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【「本が好き!」レビュー】『怪異古生物考』土屋健著

提供: 本が好き!

世界各地の伝承や伝説の中に現れる空想上の生き物の起源を、古生物学的な観点から推測する一冊。
筆者は大学院で古生物学を学んだサイエンスライターで、監修者として哺乳類化石を専門とする古生物学者が名を連ねています。

ユニコーン、グリフォン、ルフ、キュプロス、龍、ぬえ、天狗、八岐大蛇、鬼の全9章から成っており、それぞれの怪異(=あやしいこと・もの、ばけものの意味)の元となった生物を、イラストと化石の写真から、専門家の観点から探ります。

本書で取り上げられる怪異は想像上の生き物ですが、怪異の中には化石を元にしたのではないかと言われている例がいくつもあり、化石を元に過去に存在した生物について研究する古生物学の知見から調べると、科学的にも納得できる形でこれらを結び付ける事ができるという訳ですね。

一つ具体例を挙げると、ギリシア神話に出てくる一つ目の神であるキュクロプス。
目が一つの生物なんて、どこから模倣したのだろうかと思ったのですが、牙のないマンモスの頭の骨が、まるで一つ目の人間のような形をしているのです。

と言うのも、マンモスの頭骨には正面に大きな孔が開いており、これが大きな一つの目と捉えられたのだろう、という事です。
実際はこの大きな孔は鼻の孔で、眼の孔はその左右にあるくぼみになるのですが、写真を見たら一つ目の骸骨の頭と認識してもおかしくないと感じます。

このように、空想上の生き物を実在の生き物と結び付け、そこにちゃんと科学的根拠を提示している点が、自分好みでもあり、興味深かった一冊です。

(レビュー:アカナ

・書評提供:書評でつながる読書コミュニティ「本が好き!」

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怪異古生物考

怪異古生物考

「怪異」って、想像の産物じゃない?怪異は、何でもかんでも“架空”というわけではない。科学的考察のもと、「怪異」と「正体」が結びついていく。

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