だれかに話したくなる本の話

テキストの「なんとなく買い」はNG 英語力を高めるたった一つの方法

なかなか英語が上達せずに悩んでいる人、そしてこれから英語を勉強しようと思っている人にぜひ読んでみてほしい本がある。
このほど出版された『英語学習2.0』(KADOKAWA刊)だ。

本書は、大学卒業後マッキンゼーでキャリアをスタートするも英語ができず悔しい想いをした株式会社GRIT代表取締役の岡田祥吾氏が、自身のコンサル時代に使った「問題解決アプローチ」と最先端の科学を英語学習に適用、画期的な「英語学習法」を解説している。

「人によって課題は異なります。自分の課題に適した解決法(学習法)を選ばなければ学習の生産性は上がらない」と繰り返し述べる岡田氏。そして「短時間ですぐに英語力が高まる魔法の学習法は存在しません」とも。

いわば新時代の「英語学習法」ともいえる英語コーチング「PROGRIT(プログリット)」。その全貌とは?
新刊JPは岡田氏にインタビューを行った。

(新刊JP編集部、撮影:森モーリー鷹博)

■本当に英語力が伸びる学習方法の方程式とは?

――岡田さんのご経験でもあったように、週1回の英会話レッスンだけではなかなか英語力は上達しません。それは一体なぜなのでしょうか。

岡田:英語学習が上達するかどうかはシンプルに2つの軸で考えるべきで、それが「学習生産性」と「投下時間」なんです。それが大きいか小さいか。

週1回の英会話レッスンがなぜNGなのかというと、それは学習生産性も小さく、投下時間も少ないからです。これでは英語力が伸びるはずがありません。

巷でよくある「1日●分テキストを解くだけで英語力がすごく伸びる」というのも疑問が残ります。●には15分や30分などが入りますが、仮に本当に生産性が高い方法であったとしても、それでは投下時間が少なすぎる。また、「単語を1日3時間覚えています」という生産性は低いけれど投下時間は大きいという根性型勉強法。これは非常に勿体ない。努力の割に英語力が伸びないというパターンです。

――週に1回のレッスンは時間が少なすぎるというのは理解できるのですが、なぜ生産性も低いと言えるのですか?

岡田:英会話レッスンがそもそも何のための学習法なのかというと、野球に置き換えるところの練習試合なんです。「英会話の5ステップ」で考えたときに、英会話レッスンって、どこにも当てはまらない。つまり、鍛えるものではないんです。5ステップ全部を「試す」場なんですね。まさに、練習試合です。

野球の場合、守備が下手ならノックを受けますし、打撃ができていないなら素振りをします。イシューを解決するために行うのが練習ですよね。そして、成果を実戦の場で出してみましょうということで練習試合がある。

英語も同じです。本質的で効率のいい英語学習をするには、個別のイシューを解決するトレーニングをする必要があるんです。ただ、もちろんトレーニングばかりではいけなくて、練習試合は絶対に必要です。だから英会話レッスンを受ける。

――英会話レッスンはそれまでやってきたことを出す実戦の場というわけですね。

岡田:そうです。英会話レッスンを受けることは悪ではないのですが、それだけをやっているとずっと練習試合をしていることになり、効率が悪いんです。練習にあたるトレーニングをしっかり積んだ上で適度に英会話レッスンをすると生産性は格段に上がります。

――また、投下時間の多さも大事というところで、本書を読むと改めて「楽して英語力を高める方法なし」ということを実感しました。「1日●分で英語力が上がる」CDブックみたいなものですとか、「中学英語で英会話はOK」を謳う本も書店でよく見かけます。ついに楽な学習法に流されていってしまっていたなと。

岡田:そもそも英語学習は枝葉の議論ばかりで、「このメソッドをやればOK」「映画を観るのが効果的」というような本質的ではない話になりがちですよね。人によって抱えている課題も、習熟度も違うのに、「これさえやればOK」というのはありえないんです。この本を通して、枝葉の議論ではなくて本質的な議論を提示したかったというのはありますね。

また、楽に英語を身に付けるって耳障りはいいですけど、政治のマニフェストのようなもので、耳障りがいいことって実際にほとんど現実化しないんですよね。生産性の高い学習と、ちゃんと投下時間を多くすることでしか、英語力は伸びません。

――本書の岡田さんの言葉は読者にとっては厳しく聞こえるかもしれませんね。

岡田:私はできないことをできるとは言いませんし、この本も「こうやったら絶対伸びますよ」みたいなことは言わないというポリシーで書いたので、そうかもしれません。

――ただ、それでも「毎日3時間を3ヶ月続けることがベスト」は「えっ」と思ってしまう読者もいるのではないかと思います。

岡田:これは経験則ですが、まずは1日2、3時間は勉強するのが大事です。そして、それを1ヶ月続けると何が起こるか。これが何も起きないんです。1ヶ月ではほとんど何も変わりません。ただ、1年続けると全然違います。

――なるほど。ただ、1年続けようと思ってスタートするって、最初から厳しくないですか?

岡田:そうです、きついんです。だから続かない。でも3ヶ月ならどうでしょう。1日3時間を3ヶ月続けるとかなり英語力が伸びますし、成長を実感できるんですよね。

――確かに成長実感を持てると次のステップに行きたいと思います。

岡田:どんどんローリングしていく感じになりますよね。

■毎日3時間の勉強時間を捻出するスケジュール法

――ただ、毎日3時間となると、その時間を捻出することができない人も多いのではないかと思います。本書では「ゼロベースでスケジュールを考えよう」とアドバイスされていますが。

岡田:そうですね。だから私が提案するのは、まず寝る時間を決めること。何時間寝ると自分のパフォーマンスが最大化するのかを考えて、就寝時間を決めます。3時間勉強をするために、6時に起きて勉強したい。自分は8時間睡眠がちょうどいいからそうなると寝る時間は午後10時に決まりますよね。そこから日中のスケジュールを最適化していくという流れです。

――なるほど。勉強時間3時間と自分の睡眠時間をまず確保してから考える。

岡田:そうです。22時に寝るためにはどう仕事をして、どの飲み会を断って…と、どうすれば勉強生活がサステイナブルにまわるのかを考えます。そうしないとまず睡眠時間が削られてしまうんですよ。

――睡眠時間が削られると勉強しても頭に入ってこなくなります。

岡田:それもあるし、続かないですよね。体がもたない。

――3時間は分けていいんですか?

岡田:これは分けた方がいいですね。それぞれ30分から1時間ほどがちょうどいいと思います。まあ3時間ぶっ通しで集中力が続くという人もいるのでしょうけど、ほとんどの人はだいたいそのくらいで集中力が切れますから。

――本書はある意味で、英語教育業界に殴り込みをかけるような一冊でもあります。

岡田:そうかもしれません。単語は1000語だけ使えればいいとか、難しい単語も覚えた方がいいとか、英語学習にはいろいろな説がありますが、私から見ればそのどの説もすべて正しいし、正しくないんです。その人の課題に合っていれば正しい。だから個別の学習法がどうであるという議論は意味がないんです。

――「これだけ覚えれば」みたいな本もたくさんある中で。

岡田:ありますよね。これって「これで株式投資は成功する」 みたいな言説と近いと思っています。確かにそれで成功をする人もいるかもしれないけれど、 そうじゃない人もいる。 それは人それぞれで、万人に通じる答えというのはないのだと思います。

――本書をどのような方に読んでほしいですか?

岡田:英語学習に少しでも興味のある人は読んでほしいですね。英語学習で少しでも悩んでいる人にとっては、大きく考え方が変わる本だと思っていますし、今勉強していて順調な人や、英語に興味があってこれから英会話とかやろうかなと思っている人にも読んでいただきたいです。

また、本書は30万部を目指しています。この本を通じて、英語学習の幻想を取り除き、世界で活躍する日本人を少しでも増やしたいと思っています。
本書は英語だけでなく他分野の学習に応用できる考え方だと自負しています。今やっている英語以外の学習がなかなか上達しないという人もぜひ参考にしてほしいです。

(了)

英語学習2.0

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新刊JP編集部

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