だれかに話したくなる本の話

“無縁死”の現場を知るための3冊

“無縁死”という言葉をご存知だろうか。

 2010年1月31日にテレビ番組「NHKスペシャル 無縁社会〜“無縁死”3万2千人の衝撃〜」(NHK)で取り上げられた “無縁死”。身元不明の自殺者や行き倒れなど、誰にも知られず、引き取り手もないまま孤独に亡くなる人が急増しているという現代社会の病巣を追ったこの番組は、視聴者に大きな衝撃を与えた。

 毎年3万2千もの人が孤独に死んでいくというその事実は、人と人の関係が希薄になっているという社会そのものの状況を如実にあらわしているのかも知れない。
 ここでは、この“無縁死”の現場をより深く知るための3冊の本を紹介する。

 2006年、2008年に扶桑社からそれぞれ出版された『遺品整理屋は見た!』『遺品整理屋は見た!!─天国へのお引越のお手伝い』は、亡くなった人々の遺品の整理や供養などを遺族に代わって請け負う「遺品整理屋」を経営する吉田太一さんが、現場で見た光景をつづった衝撃のノンフィクションだ。

 家族からは既に見捨てられ、死臭によって近隣からも疎まれ、アパートの大家からは「次の入り手がなくなる」と迷惑がられる。こうしたシーンを読み進めていく中で感じることは、「寂しさ」に他ならず、それが現実であると思えば思うほど、「生きる意味」が問い直されてくる。

『遺品整理屋は見た!!─天国へのお引越のお手伝い』特集ページはこちらから(著者インタビューも掲載)

 もう1冊は阪急コミュニケーションズから出版されている『ひとり誰にも看取られず 激増する孤独死とその防止策』
 NHKスペシャル取材班と佐々木とく子さんによって書かれた本書は、2005年9月に同じくNHKで放送された「NHKスペシャル ひとり団地の一室で」を書籍化したもの。このとき事例として取り上げられた千葉県の常盤平団地で起こった独居者たちの孤独死の問題は、「孤独死」を一般的な言葉にし、研究者、自治体、NPO、地域団体など様々な識者たちがテーマとして取り上げた。

 様々な「死」の形があるにせよ、これらの本を読んだとき、そして番組を見たとき、寂しさ以外を感じることが出来なかった。
 現在の社会の奥底を見つめ考え直してみるきっかけとしては、うってつけの3冊であるといえる。
(新刊JP編集部/金井元貴)