何事も、うまくいっている時ほど落とし穴に注意しなければならない。こういう時は、普段は持っているはずの、自分自身がやっていることを客観視することが難しくなるからだ。
特に企業の経営は、順調に業績が伸びている時期ほど、数字だけを重視することなく、その会社をどんな会社にしたいか、ということや、設立当初の理念に立ち返ることが重要になる。それを怠り、勢いに任せた経営をした結果、事業が立ち行かなくなったという例は数知れずあるのだ。
コーヒーチェーンのスターバックスもその一例である。
スターバックスは好調な業績から商品提供の効率化や、エンターテイメント産業や書籍の販売などへの事業拡大を目論むも失敗、本来スターバックス持っていた「一杯のコーヒーを通して人と人とのつながりや変わることのない関係を築く」という理念もいつしか色褪せてしまった。
本書『スターバックス再生物語 つながりを育む経営』(徳間書店/刊)は、同社CEOのハワード・シュルツ氏の著書。企業理念が失われるという、会社の存在意義を揺るがす危機に直面したスターバックスを立て直すまでの、同氏の試みや葛藤の物語だ。
シュルツ氏が再びCEOに就任したのは2008年。かつて一度担ったこのポストを退き、13年間にわたって会長職を務めた後だった。その時すでにスターバックスは世界中に店舗展開していたが、それは同時にシュルツ氏が考えていた改革案の実行の困難さも示していた。
しかし、それでもシュルツ氏は創業当時の理念を取り戻すべく、改革を実行していく。
本書には、シュルツ氏がスタッフ向けに送信したメールが外部に流出した事件や、商品提供までの手順が粗雑になっていたこと、外部からのスターバックスへの批判など、同社のとって“都合の悪い”事実も率直に書かれており、好感が持てる。
成長
↓
事業拡大
↓
理念(初心)の喪失
↓
復活のための取組
↓
再成長
スターバックスが歩んだこの道のりは多くの経営者にとって示唆に富んだものだろう。
自分の会社をどんな方向に向かわせて、将来的にどんな姿にしたいのか。
経営者たちはこういった理念を、業績がいい時も、伸び悩んでいる時も、決してブレることなく持ち続けなければならないのだ。
(新刊JP編集部/山田洋介)
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