まったく新しい感性をもった作家と各方面から賞賛される真藤順丈氏へのインタビュー。このページでは『庵堂三兄弟の聖職』の世界観から執筆時の苦労話、そしてこの小説のテーマである「死」と「遺」について語ってもらった。
◇「遺工師の「遺」という文字、これが『庵堂三兄弟の聖職』のテーマですね」◇
―長男は家業を継いで工房にこもって、次男は進路に迷いながら東京に出て、三男は家業を手伝っている、という設定はどのように考えたんですか?
真藤 遺工という仕事自体が突拍子もない架空の職業であることもあって、人物造形はできるだけベーシックな家族小説の形にしたいと考えていました。現実にありえるような特質を持っている3兄弟にしようと考えていきました。
―3人の兄弟で、個性がばらばらで、それぞれの道を進んでいるという点で、個人的に『カラマーゾフの兄弟』を重ねました。
真藤 実は少し『カラマーゾフの兄弟』を意識している部分はありますが、「兄弟」というつながりで言えば「3」というのが大きいですね。3人という構成が絶妙で、物語を生み出しやすかったんじゃないかと思います。
―遺体の解体作業の緻密さも評価されていますが、あれは想像でお書きになったんでしょうか?
真藤 いえ、かなり調べました。本、特に医学の専門書を読んだり、人体標本の展覧会に行ったりもしました。伝手をたよって人体解剖に立ち会わせてほしいと頼んだこともあります。さすがにそれは断られましたけれど。
―そういった描写はグロテスクですが、書いていて疲れたりしませんでしたか?
真藤 書いていて気が滅入ったりもしましたが、闇に引っ張られすぎないように、バランスをどううまくとれるかどうかが、鍵だと思いました。だからこそ、途中で兄弟たちがじゃれあっているようなシーンを書くのは、非常に楽しかった。
―本書で扱っているテーマの中には「死」があると思うんですが、真藤さんご自身は死についてどう捉えていらっしゃいますか?
真藤 「死」はピリオドではなくて、その先も何らかの形で続いていくものではないかと考えています。だからこそ、続いていく形をどういうふうに残せるか、どういうふうに続けていけるのか、「遺工」という作業を通じて考えて、それを表現してみたかった。
そもそも、それぞれの人との関わりとか、それぞれが考えてきたこととか、生きてきた環境で「死」の受け止めかたにさまざまな形があって当然ではないかと思ったんです。
現代日本で一般的とされる火葬だって、亡くなって数日後にはもう燃やしてしまう、そこに疑問を感じる人もいると思うんですよね。一つの節目をつけるということにもなると思うんだけれども、そう簡単に未練を捨てきれないという人もいると思うんです。「死」っていうのはとても題材にしやすいテーマだと思うんですけども、とてもデリケートだし、自分も本腰を入れて書きたいテーマですね。
―身体を解体して物をつくる「遺工」という職業には、「死」の後に続いていくものがあるという真藤さんの思想が強く反映されていますね。
*次ページでは、小説家としての真藤氏に迫る&サイン本プレゼントのあて先!
「常識を取っ払ったところで人がもがき苦しむ姿を描いた」―【著者インタビュー】真藤順丈さん『庵堂三兄弟の聖職』作者(2)
[2008/12/26 配信]











