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2016年02月26日 18時配信

CDを「読む」楽しさとは? 星野源が新作アルバムに綴った感動的な文章


『YELLOW DANCER』のブックレットに書かれた星野源の名文とは?
『YELLOW DANCER』のブックレットに書かれた星野源の名文とは?
「CDが売れない時代」と言われるようになって久しい。複数あるその理由・要因についてはいまさら説明するまでもなく、いまや日本のみならず多くの国の人々のあいだで「新曲を聴きたいからCDを買う」という行動は当たり前のものではなくなった。

◆多様化するCD購入の目的

主に90年代までは“当たり前”だった「曲を聴くためにCDを買う」という目的が無くなりかけているいま、特にここ日本において、人々が音楽CDを買う目的は多様化している。

ある人は憧れのアイドルと対面する機会を得るために買い、ある人はコレクションして所有欲を満たすために買い、ある人は特典のDVDのために買い、ある人は「配信(ネット)では買えない(聴けない)」から唯一の聴くための手段としてCDを買う。

そしてまたある人は、「ブックレット」を手に入れるためにCDを購入するのだ。

◆ブックレットとは?

ブックレットとは、CDに付属されている歌詞やクレジット、アーティストの写真(集)、そして作品に関する文章などが載っている小冊子のこと。(※「ライナーノーツ」という場合もあるが、ここでは「ライナーノーツ」は音楽評論家やコラムニスト等が書く作品に関する文章と考え、より広義な「ブックレット」を使用する)

ブックレットを目的にCDを買う際、やはりそのアーティスト、またはアイドルの“写真集”を見たいという思いから購入にいたる人が多いが、「アーティスト本人が書いた文章を読みたい」という欲求をもつ人も少なくない。

そう、アーティストによっては、作品にかけた思いやつくられた背景を文章にしてブックレットに収録することがあるのだ。

ファンにとって、その内容は応援するうえで絶対に知っておきたいものだろう。そしてときに、ファンならずともその内容に心を動かされることがある。

◆病気を乗り越えた星野源が綴った感動的な文章

俳優であり歌手の星野源が2015年12月に発売した4枚目のアルバム『YELLOW DANCER』は、くも膜下出血の治療専念のため2013年6月から一定期間活動を休止していた星野がおよそ2年半ぶりに発売したアルバムだ。

星野自らによる楽曲解説や星野へのインタビュー、そして郷愁を誘うイラストなどが収録された同アルバムの初回限定盤と通常盤の初回限定仕様に付いてくるブックレットは非常に読み応えがあるが、なかでも印象的なのは、病気による活動休止期間にこのアルバムをつくろうと思い立ったきっかけが綴られた星野本人による序文だ。

その一部を引用して紹介しよう。(以下、アルバム『YELLOW DANCER』ブックレットより引用)

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イヤホンで音楽を聴きながら、深夜の街を徘徊するのが好きです。寝静まった住宅街をふらふらと歩きながら踊ったり、ステップを踏みながら道を行く猫やゴキブリを追いかけたりして、音楽に塗れるのが好きです。2013年夏、少し長い休みをもらっていた時、坊主頭の自分は気分も落ち込み、先行きが不安で、音楽を聴くのも少し怖いような状態でした。ある夜、あまり眠れず、することもないので、また街を徘徊したいと思い立ち、念のために携帯音楽プレイヤーを持って出かけました。しばらく無音で歩いていましたが、やはりつまらないのでイヤホンを耳に差し込み、すべての曲の中からランダムで流れるように設定し、再生ボタンを押しました。最大音量に設定されていたプレイヤーから、力強いスネアの音が鳴りました。ストレージの奥の方から、たまたま引っ張り出されたその曲はPrinceの「I Wanna Be Your Lover」でした。音楽が始まった瞬間から、夜の街が一気に朝を迎えたように、ギラギラと輝き始めました。霧が消え、それまで曇っていた心の中がどんどん晴れていく感覚。気がつけば、ステップを踏み、踊り、猫を追いかけ、ゴキブリを道路脇の排水溝に追い詰めていました。それまで、どんな音楽を聴いても憂鬱でしたが、いつの間にか、こんなアルバムを作りたいという希望が湧いてきました。
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星野の人間性と音楽への深い愛がこれでもかと伝わり、心動かされずにはいられない感動的な文章となっている。

「長い休み」や「坊主頭」といった言葉に病気の存在が見え隠れするが、それを音楽とともに乗り越えた星野自身の体験が綴られたこの文章、そしてアルバムに収録された楽曲たちは、同じように何かに落ち込むリスナーを勇気づけることだろう。

「読む」と「聴く」が相乗することでより大きな楽しみが得られる。それが分かっている一部の少なからぬリスナーたちは、定額配信時代のいまでもCDを買わずにはいられないのだ。
(新刊JP編集部)

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