株式会社エニグモが発表した新サービス『Corseka』(コルシカ)。
ユーザーが250誌以上の中から読みたいと思った雑誌を購入すると、Web上ですぐに閲覧できるというこのサービスは、オンライン出版の新たなプラットフォームを目指し、10月7日にオープンされた。
しかし、この『Corseka』が出版業界に激震を走らせている。
問題に入る前に、まずは『Corseka』の概要からお伝えしよう。主な機能は3つ。
(1)ユーザーが雑誌を購入すると、Web上の専用ビューワーでその雑誌のスキャンデータが閲覧できる。
(2)読み返したいお気に入りコンテンツがすぐ読めるように、クリッピングが可能となっている。
(3)もしその雑誌の現物が欲しくなった場合、送料を支払うことで実物を郵送してもらうことができる。
エニグモはこのサービスによって、ユーザーはインターネット環境があれば購入した雑誌をいつでも読むことができ、もちろん場所もとらないというメリットを謳う。また、出版社側へも、取次を通して販売する数量の雑誌をコルシカが実購入するため、雑誌販売の機会が増加するなどのメリットがあることを強調する。
しかし、このサービスに日本雑誌協会が猛反発したのだ。
◆出版社の許諾が取れていないままの配信は「複製権侵害」
日本雑誌協会は8日、報道関係機関宛てにFAXを送付。
「当該雑誌の権利者である各出版社の許諾なしに、雑誌誌面のスキャンを複製することによって成立しているものであり、明らかな著作権侵害行為」であるとし、サービスの即時中止を求める声明を発表した。
某大手出版社のデジタル部門責任者であるA氏がこの『Corseka』の存在を知ったのは、サービスが開始した7日のこと。「新聞の紙面で記事を見つけて、実際に閲覧したのが最初ですね。そのときは、すごく面白いサービスだなと思いました」と話す。
しかし、事態は急変。「うちの雑誌が載っているけど、話が通っていない」という声をあげる出版社が多くなり、実態を調査。その結果、一切出版社の許諾を取らずに雑誌が配信されていることが判明した。
朝日新聞が10月7日に配信した記事において、「ユーザーが購入した雑誌をスキャンして電子化することは、個人利用の範囲」であるというエニグモのコメントを掲載している。しかし、著作権に詳しい弁護士・金井重彦氏は「事業で行っている以上、私的複製には含まれない。訴訟された場合、複製権侵害になる可能性が高いと思います」と語る。
◆先走り過ぎた『Corseka』の未来は?
インターネット上でもブログや掲示板、twitterなどを中心に議論が巻き起こっており、『Corseka』の違法性を指摘するコメントがある一方で「雑誌の新しい展開になりそう」などの好意的な意見も見られ、賛否両論となっている。
しかし、A氏が「事業でやっており許諾が取れていない以上、このサービスは著作権侵害にあたります。白でもグレーゾーンでもなく、黒と判断せざるを得ません」と強く語るように、サービスの違法性は高く、今後の出版社・雑誌協会の動き次第では存続できない可能性もあるだろう。
また、例えば有名芸能人が使われている表紙は出版社だけでなく、その芸能事務所の許諾が必要になるなど、雑誌は権利問題の構造が非常に複雑であるという。A氏は「我々出版社側は、これまで少しずつ雑誌のデジタルコンテンツ化を進めてきていた。エニグモは少し先走り過ぎたのかも知れない」とため息をつく。
渦中のエニグモは、問題が表面化のち、まだ新たなコメントを公式に発表してはいない。共同代表の田中禎人氏は10月7日付けのブログで「雑誌市場、これから盛り上げます」とつづっていたが、スタートして間もなく大きな壁にぶちあたった形となった。
最後にA氏は編集部に「繰り返しますが、このサービスはとても魅力的だと思います。だけれど、ルール違反はルール違反です」と告げた。
今後のエニグモの声明が待たれる。
(新刊JP編集部/金井元貴)
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