そんな最中にビジネス社から出版された『ビジネス読解力を伸ばす未来経済入門』は、テレビのコメンテーターなどでも活躍しているコンサルタント・小宮一慶氏がこれまでの歴史の流れや言説、膨大なデータを手がかりに、政治・経済の未来を予測する一冊だ。
今回、新刊JP編集部は著者である小宮氏への単独インタビューに成功。民主党政権の意味や注目すべき新興国、資源問題など、「日本と世界の政治・経済はどう変わっていくのか?」をテーマに質問をぶつけた。
2週にわたってお送りするインタビューの第1週目は“日本編”ということで、主に民主党政権になり日本国内の政治・経済はどのように変化するかをお伝えする。小宮氏の声にじっくりと耳を傾けて欲しい。[海外編はこちらから]
(取材・記事/金井元貴)
Q、8月の第45回衆議院議員総選挙で民主党が第一党となり、政権が交代しました。「戦後政治の総決算」とも謳われたこの政権交代劇によって、日本の政治はどのように変わるのでしょうか。
小宮一慶氏「民主党は霞ヶ関主導ではなく、政治主導に体制を作り直すという、今までの既成概念を大きく変えることをやっていくのではないかと思っています。
例えば国土交通大臣の前原誠司さんが動いている八ツ場ダムの問題もそうですし、あとは農家個別支援政策の問題ですね。これは今までJAや地方組織を通じて農家にお金を分配していたものを政府が直接お金を分配するというものですが、こうした政策が進むことで、これまで既得権益で守られていた人たちの構造が徐々に変わっていくと思います。もちろんそれがプラスのインパクトが出るのか、マイナスのインパクトが出るのかは、今のところは予想がつきません」
Q、一方、国民は民主党に対して非常に大きな期待を寄せています。
小宮氏「今回の選挙の様子を見ていて、国民が「政権が変わる」ことに固執していた気がします。確かにそれも重要ですが、政治とは人を幸せにするための手段です。だから、変わることだけに固執すると上手くいかないこともあるということは注意しなくてはいけません。
また、もう1つは、民主党も自民党政権と同様、永久に続くわけじゃない。必ずどこかで揺り返しがあります。だから、また揺り返しがきたときにそれにどう耐えていくかということも考える必要があります。
これからの日本は、政権が変わることを前提とした仕組みを作っていくことが大事だと思いますね」
Q、民主党は日米FTA締結をマニフェストに入れるなど、市場開放に対して積極的であるように思います。こうした動きは日本経済にどのような影響を与えると思われますか?
小宮氏「本書にも書きましたが、日本は1998年の外国為替法の改正によってほとんどの分野で市場開放されています。例外的に行っていないのが農産物ですね。米や小麦は非常に高い700%くらいの関税がかかっています。農産物の市場開放は民主党も当初のマニフェストから外しましたが、私自身としては、やはり食料自給率の問題等、影響が大きい部分なので当面開放できないのではないかと思います。
ただ、その他の部分に関してはほとんど関税がかかっていないものも多いですから、FTAを締結してもインパクトは少ないでしょう。むしろFTAを多くの国と締結することは、日本の方にメリットが多くあると思います。色んなものが行き交うようになるわけですから」
Q、国民は日本の政治の向かっている先が正しいかどうかを、どのようにチェックしたらよろしいのでしょうか。
小宮氏「それは簡単で、政治が変わったことで自分たちが幸せになったかどうかを見ていればいいんです。そして、幸せにならなければ次の選挙で別の政党に入れればいいでしょう。最初に言ったとおり政治は国民を幸せにするための道具なのですから。
私たちが幸せになるためにはやはりまともなリーダーが必要だと思いますが、私自身はそのためには首相公選制にしないといけないと思いますね。よく首相公選制にすると衆愚政治になりかねない、と言いますが、今回の民主党政権も衆愚政治だと思います。アメリカはまともなリーダーが出ることが多いと思いますが、それは長い時間かけて大統領を決めるから。その辺も含めて、国民が政治に関心をもたないといけないと思いますね」
Q、では、日本が政治的にも、経済的にも今後注目しなくてはいけない新興国家はどこだと思われますか。
小宮氏「やはり中国です。もちろん他にも色んな国が発展していますが、日本からとても近いし、発展スピードがすごく速い。早ければ今年の末、遅くても来年の前半には日本のGDPを抜くといわれていますよね。これは驚くべきスピードです。
去年の暮れに3年振りに上海に、今年のシルバーウイークに8年ぶりに北京を訪問したんですが、以前とは全く違う街になっていたのは驚きでした。また、中国人もその発展のスピードに慣れてきたという印象があります。昔は国民自身が国の発展スピードについていけないという印象を受けましたが、今はもう落ち着いていますよね。特に沿岸部は。もっと発展していくと思いますね」
「小宮一慶さんに聞いた“日本と世界はどう変わる!? 経済のこと、政治のこと”【海外編】」はこちらから! 小宮氏が注目すべき国だと語る“中国”とは一体どんな国なのか? 資源インフレで日本の工業は危機に立たされる? など今、旬のトピックを聞いています。
◆小宮一慶(こみや・かずよし)
経営コンサルタント。株式会社小宮コンサルタンツ代表取締役。十数社の非常勤取締役や監査役も務める。1957年大阪府堺市生まれ。81年京都大学法学部卒業後、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行。84年7月から2年間、米国ダートマス大学経営大学院に留学しMBAを取得。帰国後、同行で経営戦略情報システムや M&Aに携わったのち、岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングにあたる。93年初夏にはカンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。94年5月からは、日本福祉サービス(現セントケア・ホールディングス株式会社)企画部長として、在宅介護の問題に取り組む。96年に小宮コンサルタンツを設立、現在に至る。

◆『ビジネス読解力を伸ばす未来経済入門』
著者:小宮一慶
定価(税込み):1575円
出版社:ビジネス社
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