今年の楽天は強かった。
球団史上初の日本シリーズ進出の夢は断たれたが、シーズン開幕前の下馬評からしたら大健闘であり、このチームを4年間率いた野村克也氏の手腕への評価はさらに高まるに違いない。
野村氏の監督哲学は、その場を球場からオフィスに移しても応用可能ということで、これまでに多くの人材育成・組織論に関する書籍を残している。本書『弱者の兵法 野村流 必勝の人材育成論・組織論』も、いかにして一人前の人材を育てるか、育てた選手をいかにして起用するか、という視点で語られている。
しかし、監督としての実績で言えば、現役監督だけに絞っても落合博満氏(中日)、原辰徳氏(巨人)、梨田昌孝氏(日本ハム)など野村氏に引けを取らない名将は何人かいる。彼らも独自の育成論・組織論を持っているに違いない。
なぜ、野村氏だけがここまで注目されるのか。
今シーズン、野村氏の「ぼやき」に頻出したのが「無形の力」という言葉。これは個々の能力を繋ぎ、チームとしてのパフォーマンスを最大に高めるための力で、言い換えれば「次に起こることを予測し、確率で優先順位をつけ、対処していくプレー」ということだ。
私自身も小・中・高と10年近く野球をやっていたが、「気の利いたプレーをしなさい」というセリフをどの段階の指導者からも言われたことを記憶している。
この「気の利いたプレー」こそが野村氏の言う「無形の力」だったこと(あくまでアマチュア野球のレベルではあるが)は今なら理解できるが、当時は全く理解できなかった。身体性を伴わない言葉だったために私も理解できなかったし、指導者たちも「気の利いたプレー」としか表現できなかったのである。
この曖昧な言葉を何かを選手たちに理解させ、完全とは言えないまでも選手たちに体現させたことが、他の監督にはない野村氏の凄さではないか。
個々の能力の総計以上の成果を残すことができ、そこまでの人材を育成するというのは、言うまでもなく管理者・監督者の使命であり、能力が問われるところ。
スタッフをまとめる立場の人、育成する立場の人はぜひ一度野村氏の考えに触れてみてはいかがだろうか。
「無形の力」を持つ組織づくりは容易ではないが、決して不可能ではないことに気づくだろう。
(新刊JP編集部/山田洋介)
◆『弱者の兵法 野村流 必勝の人材育成論・組織論』
著者:野村克也
出版社:アスペクト
定価(税込):¥1500
発売中
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『弱者の兵法』に見る野村組織論の粋
[2009/10/26 配信]










