今回、10年ぶりに大改訂され、新たに2600語を増補し、さらに使いやすくなった『岩波国語辞典第七版』。大きな活字や豊富な用例など、さまざまな進化を遂げた国語辞典だが、そもそも辞書はどのように編集されているのか? また、その苦労とは?
我々新刊JP編集部は、『岩波国語辞典第七版』を出版した岩波書店の辞書編集部・平木さんにお話を伺った。
(以下敬称略)
◆新しい語を載せるときのポイントは「日本語として定着したと判断したとき」
―『岩波国語辞典』は今回で第七版となりますが、改訂のポイント・特長を教えていただけますか?
平木「大きく六つのポイントがあります。まず2600語を増補して65000語になったということ。2600語というのは、この規模の国語辞典ではかなり大規模な増補なんです。
それから解説欄を充実させて、言葉の来歴や類義語との違いもわかるようになっています。また、「あかあかと」は言うけれど「あかあかに」は言わないなど、実際に副詞を使うとき後に続く助詞をここまで詳しく解説している点も過去の国語辞典にはなかったことです。他には現代の作例だけでなく、明治期以降の文学作品を実例として掲載している点や、擬音語・擬態語を大幅に増補したこと、文字を大きくしたことが挙げられます」
―今回の改訂の評判はいかがですか?
平木「まだ発売されていないので、書店さんとか取次さんの意見しか聞けていませんが、見た目に関する評判が多いですね。きらきらしたレインボー箔のカバーが女性からの評判がいいというのは耳にしています。書店に行って国語辞典の棚を見ると10種類以上は目にします。その中からどれを選ぶかというところで、見た目は大事なのではないかと思います」
―今回の改訂で削った語もあるということですが、どのような語が削られたのでしょうか。
平木「今回は大体400語ほど削ったのですが、大体は古語ですね。もともと岩波国語辞典は古語まで視野に入れて編集していたのですが、現代語のみを扱う辞典に特化しようということで古語を減らしています。たとえば助動詞の『けり』ですとか『犬追物』(鎌倉時代に始まったとされる日本の弓術)は今回の改訂で削りました」
―改訂によって増補される語というのはどのように決まるものなのでしょうか。
平木「編者の先生を中心として、編集会議で決めます」
―新しく増補する語は、やはり時代に即した語という基準で選ばれるのでしょうか。
平木「新語だからすぐに入れる、というわけではありません。また、古い言葉だからといって、もう収載しないかというとそうでもないんです。例えば、『居敷当』【単衣の着物の尻のあたりに、補強のために裏から当てる布】、『お蚕ぐるみ』【絹の着物ばかりを着ていること。ぜいたくな暮らしをしていること】などという言葉は、今ではあまり使わなくなってしまいましたが、昔の文献や小説を読んでいれば出てくることもある、という視点も持っています。
また『ごち』とか、『コピペ』という俗語も入れます。今回、最後の最後に入れたのが『パンデミック』や『ジャンキー』。『パンデミック』は新型インフルエンザの話題でよく出てきた言葉ですし、『ジャンキー』も酒井法子さんの問題で耳にしました。
増補する語は、その時々のニュースと連動したところもありますが、一時的な流行語は現代用語辞典などに任せればいいところなので、日本語として定着した語だと判断したときに収載されます」
―改訂はどのようなタイミングで行われるのですか?
平木「そうですね…内輪のお話ですと、編集部の体制がうまく整わないことで改訂が遅れることもあります。それと、これは広辞苑の例なのですが、第4版を出した直後にソ連が崩壊して、国名から制度までガラッと変わってしまいました。そんな事情があって4版と5版の間は短いんですよ。内的・外的な事情によって改訂のタイミングは変わります」
―改訂のプロジェクトというのは、始まりから終わりまでどれくらいの時間がかかるものなのでしょうか?
平木「新版を出すときからもうすでに次の改訂の編集が始まっている、といえます。というのは、今回発売する第7版を編集した段階で、さらに改善したい点が出てきていますし、今回は載せることができなかった言葉や新しい言葉はいくらでもあるので。それらをどこかの段階かでプロジェクトを本格的に立ち上げて総ざらいし、改訂作業に入るということになります。本格的にプロジェクトを立ち上げてからですと、3、4年だと思います」
―電子辞書と比較して、紙の辞書のいいところはどんな点だと思いますか?
平木「隣の語だとか、下の段の語まで目に入り、言葉の視野が広がるという一覧性ではないでしょうか。それに、電子辞書ですと、つづりが少しでも違えば、見つけられないこともありますが、紙の辞書なら“大体そのあたりにあるだろう”ということで探すことができます」
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【関連リンク】
・新刊JP FEATURING 『岩波国語辞典第七版』(本書の特集ページ)
・新刊ラジオ第978回 『岩波国語辞典』(新刊ラジオ)
岩波国語辞典が10年ぶりに改訂 辞書編集の裏側を探る
[2009/11/20 配信]










