だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1832回 「霧 ウラル」

『今日から、海峡の鬼になる』
地元有力者の三人の娘、その次女・珠生が恋をしたのは、海峡の汚れ仕事を請け負うヤクザの組長だった――。
良家の生まれでありながら、自信の生き方を貫いてきた彼女に、極道という生き様はどのような変化をもたらすのか。
桜木紫乃が満を持して贈る渾身の任侠物語、開幕!!(提供・小学館)

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その女は、修羅の道を選ぶ

こんにちは、ブックナビゲーターの矢島雅弘です。

さて、今回ご紹介するのは小説なのですが、内容は任侠ものです。

舞台は北海道の根室。もう北も北ですね。

みなさんは、任侠ものっていうとどんな物語を想像しますか?

おそらく、真っ先に思い浮かぶのはヤクザものでしょう。

かくいう僕もそうだったりします。

はい、それで本書なのですが、ここまでの話でお察しの通り、ヤクザもの……なのですが、ちょっと普通のヤクザものとは違った色を見せています。

まず、主人公は女性。

ヤクザもので女主人公と言えば『極道の妻たち』などが有名ですが、こちらの作品はそんなにバチバチとは進みません。

流血沙汰も少なめです。

女性著者ならではの柔らかなタッチで、繊細な心情の揺らぎを書かれていて、むしろ静かに時が流れていくようなイメージですね。

ちょっと大げさかもしれませんが、少女漫画のような雰囲気を持っているとも言える作品です。

とはいえ、題材は任侠。

初めは戸惑うことの多い主人公も徐々に、その生き様を変えていきます。

こういった部分が本書の魅力、読みどころとなるのは確実です。

それでは、一体どんな物語なのか、内容を見ていきましょう。

主人公は、地元有力者の次女である河之辺珠生(かわのべたまき)。

彼女は家のいいなりになるのではなく、自分自身で生きるために中学卒業とともに花街で芸者の道を歩んでいました。

そんな彼女が恋に落ちた相手は、地元の海峡で汚れ仕事を請け負うヤクザの男・相羽重之(あいばしげゆき)でした。

『相羽組』組長の妻として生きて行くことを決めた珠生。

生まれた環境とはまるで違う世界に足を踏み入れた彼女は、その生き方をどのように変えていくのでしょうか。

といったところで、本編の一部をドラマにしましたので、どうぞこちらをお聴きください。

■キャスト(敬称略) 中村麻未 設楽裕生 坂本夏実 小林直人 中村純也

◆著者プロフィール 桜木さんは、1965年、北海道生まれ。 2002年に「雪虫」で第82回オール讀物新人賞を受賞。 2007年には同作を収録した初の短編集『氷平線』が新聞書評等で絶賛されました。 2013年に『LOVE LESS(ラブレス)』で第19回島清恋愛文学賞を受賞。同年『ホテルローヤル』で第149回直木三十五賞を受賞されました。 また、『起終点駅 ターミナル』が2015年秋に映画公開予定となっています。

霧 ウラル