だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1448回 「「怒り」がスーッと消える本―「対人関係療法」の精神科医が教える」

「なぜ怒ってしまうのか?」「本当はイライラしたくないのに…」そう思っている人は意外と多いのではないでしょうか。本書は、対人関係療法の精神科医が教える、「怒り」の感情との付き合い方や、怒らずに生きていける「心のコントロール術」をまとめた一冊です。怒りは「我慢」でも「抑制」でもなく、「消えていく」ように操作しなければならないのです。

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精神科医が教える、怒りが「消える」方法

● 著者プロフィール 水島広子さんは、精神科医。対人関係療法専門クリニックの院長を勤めていらっしゃいます。慶應義塾大学医学部を卒業し、同大学院修了。慶應義塾大学医学部の非常勤講師も勤め、「対人関係療法」の日本における第一人者と言われている方です。

まずは、この本を通して水島さんがどんなことを伝えてくれるのか、冒頭の一文より、朗読でご紹介したいと思います。

「怒りがスーッと消える」というタイトルをご覧になって、「そんなわけがない、何やら怪しげな魔法の本なのだろうか」と思われているでしょうか。 もちろん精神科医である私にはそんな魔法の本を書くことなどできません。 本書は精神科医としての私の経験に基づく、ごく合理的な本です。ポイントは、怒りを「消す」のではなく、怒りが「消える」というところにあります。 怒りは「結果」です。「ひどい」と思う何か(原因)があったとき、結果として出てくるのが「怒り」という感情です。「結果」に過ぎない「怒り」を抑え込もうとすると、かえってひどくなったり、爆発したりすることもあります。 しかし原因を取り除けば、もちろん結果である怒りもスーッと「消える」のです。 本書では、その、「原因の取り除き方」をご紹介していきます。 (P3「はじめに」より)

怒りを「我慢」するわけでもなく、「抑える」わけでもなく、スーッと「消える」方法です。 そんなことができるのなら、ぜひ方法を知りたいものですよね。

なぜ怒ってしまうのか?

「怒り」という感情をうまくコントロールするには、まず「怒り」がどんな存在なのかを知らなければなりません。ということで、「怒り」とは何か? というところを見ていきたいと思います。

水島さんは、「あらゆる感情には意味がある」と言います。 私たちの身体には、自分を守るために備わっている力がありますね。 例えば、熱いものに触れたとき、「熱い!」と感じて、手を引っ込める反射。これは、「痛覚」が火傷という「被害」から身を守ってくれているわけです。

では、「怒り」という感情はどうなのかというと? 例えば、会社の上司から、「お前は本当に何をやってもダメな奴だな!」と、頭ごなしに、侮辱的なことを言われた。これも典型的な「被害」なのだそうです。 熱いものを触ったときのように、身体的な痛みは感じませんが、「心」が、「侮辱された」というストレスを受けます。 つまり、「怒り」は、「心の痛覚」ということなのです。

怒りがあるから、「そういう言い方は傷つくのでやめてほしいです」と申し出るなど、状況を変えるために行動したりしますけど、心に痛覚がなければ、ずっと侮辱されたままになってしまいますからね……。

ですから、「怒り」は我慢したり、無理やり抑えたりしてはいけない、大切な感情ということなんです。

怒りは、こころの「痛覚」ということなのです。

怒りをスーッと消す方法

それではお待ちかね、「怒りをスーッと消す方法」を紹介していきましょう。

私たちはどんなときに「怒り」を感じるでしょうか?

足を踏まれた… 相手が待ち合わせに遅刻しておいてまったく悪びれない… 部下が期待通りの成果を出してくれない… 一生懸命選んだ恋人へのプレゼントに文句をつけられた…などなど。

これは、自分が何らかの「被害」に遭って、「怒った」といえるのではないでしょうか。

水島さんは、「被害者でないひとは怒りを感じないと言ってよい」といいます。 ですから、起きてしまった怒りをどうするか以前に、そもそも自分は本当に被害者なのかを検証してみると、ムダに怒らずに済むのだそうです。

たとえば、恋人や友人と、2人でお茶をしているのに、携帯で長電話をされたとしたら? こんなとき、あなたならどう思うでしょうか?

なんだか自分よりも、電話の相手を優先されて、粗末にされた感じがして、腹が立ってしまう気がしますが…。

ここで、「ある発想」が必要になってきます。

あなたを怒らせているのは自分自身だった!

「自分が粗末にされた」というのは本当なのでしょうか?

相手がなぜ長電話をしたのか、理由はまだわかりませんよね。 そして、一緒にお茶をしいてたその人が、電話の相手と、自分とを比較した上で、長電話をしたのか? というのもわかりません。

もしかしたら、久しぶりの人からの電話だったのかもしれませんし、電話を切らせてもらえない内容だったのかもしれません。

それなのに、「自分が粗末にされた」と自ら思い込んでしまったとしたら、それは「わざわざ自分を傷つけている」ということになってしまいます。

「自分が粗末にされた」と思うとき、私たちは「怒り」の感情に支配されてしまって、「これは相手が悪い!相手のせいだ!」と、意識がそればかりにいってしまうのだと、水島さんは言います。

相手が「ちょっとゴメン、電話」といって席を立っただけという、情報が何もない状況で、「自分が粗末にされた!!」と考えることは、本当のところはどうかわからないのに、自分で自分を傷つけていることになっているのです。

あなたはここに気づくことができましたか?

この本には、こんな話題がたくさん出てきます。 「人はなぜ怒ってしまうのか」「怒りの原因はなにか」といった、感情の解説からはじまり、「怒らない・怒らせないコミュニケーション術」「心穏やかに生きるコツ」。そして、「もし、相手にキレられたらどうしたらいいか」という、怒る人への対処法などがまとめられています。

さすが精神科医の先生らしい、事例に基づいた解説で、頭にスーッと入ってきます。

怒ってしまう人、または怒る人が苦手な人は、読んでみてください。

「怒り」がスーッと消える本―「対人関係療法」の精神科医が教える

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