だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1458回 「14歳の人生練習ドリル 親子で学ぶ・考える「自分の人生哲学」」

本書は、夢を持って豊かな人生を送るための“人生のドリル”。「どれだけ○○できたかというのが、人生の究極の価値ですね(別所哲也さん)」 「仕事とは○○を集めることです(渡邉美樹)」 等、各界で活躍する15人のトップランナーたちへのインタビューをまとめた一冊です。人生の入り口に立つ子どもと、子育てに悩む親にとって大切なことを学ぶことができるでしょう。

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人生の悩みをトップランナーに聞く

 人生には節目があります。進学、就職、転職、結婚など、こういった節目は人生の大きな転機となりますから、悩むことも多いと思います。

 今回の本は、節目の決断で迷っている方、とくに若い読者におすすめしたい一冊です。

 まずは本書より概要を抜粋してご紹介します。

 14歳――人生の入り口に立つ子どもたちと、その親へ。 この本は生き方を考えるためのドリルです。 各界のトップランナー15人が、それぞれの経験をもとに問題を出します。 親子で正解をさがしながら、同時に自分だけの「答え」を考えてみて下さい。 その「答え」こそが、かけがえのない「自分の人生哲学」になるでしょう。

 この本には、芸能界、スポーツ選手、音楽家、学者、芸術家、パティシエ、会社経営者などなど、色々な業界で成功した、いわゆる“トップランナー”の人たちが、自分たちが悩んできたことや、経験してきたことが書かれています。

 どんなにすごい人も、輝いてる人も、みんな同じように悩んでいたのですね。 トップランナー15人はどんなことに悩んで、考えてきて、親の教育はどんなものだったのか、この本で知ることができます。それらは人生の貴重なアドバイスとなります。

 「人生練習のドリル」とタイトルに付いていますが、本の構成がドリルのようになっています。たとえば、俳優の別所哲也さんは、インタビュー記事の冒頭に、こんな言葉が書かれています。

 「一生を通じてどれだけの人に出会って、どれだけ(         )できたかというのが、僕にとっては究極の価値ですね。」

 この、(          )の部分を、別所さんへのインタビューを読みながら考えるという、ちょっとユニークな構成です。別所さんが言う「究極の価値」ってなんだろう? と考えながら読むから、頭に残りやすいのです。

“好き”から見つけた、人生の目的

 続いて、「野菜ケーキ」で人気に火がついた、パティシエの柿沢安耶(かきさわ・あや)さんのページをご紹介します。

柿沢安耶さんは、「情熱大陸」「カンブリア宮殿」「ソロモン流」などテレビ番組への出演多数。2008年にはオールナイトニッポンのパーソナリティを務めるなど、話題の方です。

 幼少の頃から動物がとても好きで、アーノルド・ローベルの『どろんこぶた』という絵本を読んだことがきっかけで、「将来は豚を飼って暮らしたい」「豚を飼って暮らすにはどうしたらいいか」と考えていたといいます。

 そして、ある日、フランス料理の材料である「トリュフ」は、豚が掘っているということを知り、柿沢さんは、「豚と暮らすためにもトリュフについて調べてみよう」と思い調べはじめ、それがきっかけでフランス料理に興味を持つようになっていったそうです。

 柿沢さんは身体が弱く、学校を休むことも多かったそうですが、柿沢さんのお母さんは、どんなに忙しくても、毎日きちんと栄養バランスのよいご飯を用意してくれたといいます。そんな経験から、柿沢さんは「食生活の大切さ」を心に感じ、「食べて健康になる料理をつくりたい!」と思うようになっていったのです。

 そしてそれは、後に野菜ケーキ作りをはじめた原点となっていると語っています。

 「野菜ケーキ作りをはじめた原点」というのはどういうことなのでしょうか?  インタビュー先を読みすすめると答えが見えてきます。

やりたいことは見つかるまで探せる

 フランスに留学して、ホテルリッツが経営する料理学校で学んでいるとき、柿沢さんはどうしても超えられない壁にぶち当たりました。

 それは、調理の下ごしらえとして鳥の毛をむしったり、内臓を取り出したりという作業です。動物が大好きな柿沢さんにとって、これは大きなショックで、どんなにがんばっても、この作業にだけは慣れることができなかったといいます。

 これを一生やっていくのは無理だと悟った柿沢さんは、挫折して一旦帰国しますが、その後、動物の毛をむしったりする料理をしないでもいい調理を目指し、ケーキ店で働き始めます。

 ところが、ここでもまた違和感を感じるようになったのです。  見た目においしいケーキをつくるには、着色料などの食品添加物や大量の砂糖を使うことは避けられません。

 しかし、柿沢さんがやりたいことは、「食べて健康になる料理をづくり」です。そんな思いと、見た目重視のケーキ作りにギャップを感じ、そしてその悩みは、「おいしさ+αで何かできないか」を考えるきっかけになったのです。

 こうして柿沢さんは、本当にやりたいと思えること、マクロビオティック(穀物・野菜・豆類を中心に、肉や魚を使わず地元で栽培された旬なものを食べ、健康になることを目指す食事法)に出会ったのです。

 好きだと思ってた「豚」から「トリュフ」、「トリュフ」から「フランス」、「フランス」から「シェフ」、「シェフ」から「パティシエ」、そして、「野菜パティシエ」という仕事へ道が開けていったのですね。

すべての経験はゴールにつながっていた

 柿沢さんは、これまでの人生を振返ってこのように語っています。

 「自分のたどり着きたい目標が定まっていると人は強くなれます。 私の場合は、途中で方向性の違いを感じ、あせることもたびたびでした。でも、とにかくがんばって続けていると、すべてのことは最終的につながっていくんです。」

 「すべての経験はゴールにつながっていた」ということなんですね。やりたい、思いを形にしたいという気持ちが満足するまで、色々なことを経験し、努力を続け、そして、野菜パティシエに出会ったのです。

 柿沢さんは、「人生の中で仕事をしている時間は長いので、一生やっていくにはまず自分が好きなことでなければなかなか続けられないのではないか。だから、この本を読んでいる子どもたちには、ちょっとした「好き」でもいいので、やって楽しいと思えることをさがしてほしい。そのためには自分の視野を広げ、できそうなことがあったら迷うことなくチャレンジしてほしい」とメッセージを送っています。

 もし、これを聞いてるお父さん、お母さんは、子どもが好きだと思えることに出会っていたら、それは素晴らしいことなので、ぜひ続けるサポートをしてあげてほしいと思います。そしてもし、出会っていないようだったら、色々経験させてあげてほしいと思います。

*本書の登場するトップランナー*

俳優/別所哲也 脳研究者/池谷裕二 弁護士/土井香苗 医師/安藤高朗 プロサッカー選手/楢崎正剛 ディー・エヌ・エー取締役/南場智子 パティシエ/柿沢安耶 ワタミ取締役会長/渡邉美樹 演出家/宮田慶子 メイクアップアーティスト/黒田啓蔵 建築家/中村拓志 俳優・歌手/つるの剛士 陶芸家/青木良太 探検昆虫学者/西田賢司 ギタリスト/村治佳織

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