だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1572回 「読む力ドリル」

多くの情報が溢れる世の中において、今もっとも重要な“インプットの技術”を経営コンサルタントの小宮氏が解説した一冊。大きな成果を出すためには、良質な情報をインプットしなければなりません。本書では、実際にさまざまな文章を読みながら、「速読」「通読「熟読」の3つのステップで、「読む力」を底上げしてくれます。

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概要

こんにちは、ブックナビゲーターの矢島雅弘です。

あなたが最近読んだ本や雑誌・新聞などを、ちょっと思い出してみて下さい。

思い出せたら、その内容を50〜100文字くらいで要約できますか?

ちなみに、僕が最近読んだ本ですが・・・

諸葛亮孔明の奥さんである黄月英という人が、歴史上すごいブスだと言われているんですが、この人は、“こういう解釈だったら可愛いよ”っていうほのぼのマンガです。(82文字)

こんな感じでしょうか。

さて、今日紹介する本はインプットに関する内容の本です。

普段、何かものを読むとき、漫然と読んでしまいせっかく取り入れた情報が何も頭に残っていないいるとすれば、それはとても勿体ないことです。

そこで、良質なインプットの方法を学んでみましょう! という内容の本です。

◆今日の一冊 『読む力ドリル』 (小宮一慶/著 大和出版/刊)

◆著者について 小宮一慶さんは経営コンサルタント。ビジネス著者としても活躍しており、経営、会計・財務、経済、金融、仕事術、人生論まで、多岐にわたるテーマで本を執筆され、その数、なんと80冊以上、累計発行部数200万部を超える著作を発表されています。

この情報を正しく要約できますか?

本書のテーマは、「読む力」です。

ビジネスのベースとして、まず何よりも「結果(アウトプット)」を生み出すことが求められますが、そのためには、「書く(企画書など)」「話す(プレゼンなど)」「まとめる(報告など)」といったスキルが必要になります。

これらのスキルを高めるにあたって、小宮さんは、“「インプット」(「読む」過程)に磨きをかければ、良質なアウトプットを生み出すことができるようになる”と言います。

「読む」という行為は、ごく自然なこととして当たり前のようにやっていると思います。

しかし、ただ漠然と読むのではなく、小宮さんが本書で指摘している“真の読み方”が、良質なアウトプットを生み出す手助けとなり、大きな成果に結びつくのだそうです。

“真の読み方”とは何なのか。小宮さんはこのように言います。

真の意味で『読める』ようになれば、例えば、新聞の見出し1行からでも、日本経済のこと、世界経済のことが見えてきて、大げさではなく、世界が広がっていくのを実感できます。

この言葉の意味するところを、例をあげてご紹介しましょう。

下記の文章は、朝日新聞(2012年1月19日)の記事です。

【ダルビッシュ、レンジャーズと契約合意 6年46億円】 ポスティング(入札)制度で大リーグ移籍を目指していた日本ハムのダルビッシュ有投手(25)が米国時間の18日、独占交渉権を獲得していたテキサス・レンジャーズとの契約に合意した。球団側が同日、正式発表した。米メディアによると、6年契約で、年俸総額は6千万ドル(約46億円)。同制度を利用した選手の中では、2006年オフに西武からレッドソックスに移籍した松坂大輔投手の6年総額5200万ドルを上回る史上最高額の契約となった。 (以下、省略)

・・・・・。

さて、ではこの新聞記事を見返さずに、50字程度で簡潔に要約してみてください。

・・・・・。

<回答例> ダルビッシュ有投手が、テキサス・レンジャーズと6年間で総額6千万ドルの契約を結んだ。

こんな風に答えられた方は合格。正しく内容を理解する技術はあると言えるでしょう。

書いてないことも読む

次のステップとして小宮さんは、「書いてないことも読む」ということを上げています。

文章を読んで、疑問を持ったことを知識と照らし合わせて検証するステップです。

例題の場合では・・・、

なぜ、ダルビッシュ有投手は、こんなに多額の年俸をもらうことができるのか?

これは記事には書いてないことですが、単に記事の内容を理解するだけのところから一歩発展させて、理解の掘下げを行っていきます。

・なぜダルビッシュ有投手はこんなに多額の年俸をもらうことができるのか? ・能力があるから? ・だとすれば、じゃあどうして日本よりアメリカに行く方が高いのか? ・もしかしたら、アメリカの方が日本よりも経済的に豊かだから? ・じゃあちょっと、二国間のGDPを見比べてみようか? ・うーん、GDPにそう大きな差はないぞ。 ・あ、もしかしてアメリカの経済格差がこんなところにも現れているのか?

…このような具合に疑問を持って記事を読み、考え、調べ、追求していくことで、同じ記事であってもは読み方は如何様にもなるのです。

「なぜ」「どうして」と、興味を持って主体的に読むことが大切ではないでしょうか。

例題の詳しい解説は本書を参照してみて下さいね。

◎ここまでを一旦まとめておきましょう。 「読む力」をトレーニングするにあたって心がけるべき3つのこと。

1.事実を「客観的に」つかむ まずは主観を交えず、事実を客観的につかむようにする。これが「読む力」を高める第一歩となります。

2.語彙や文法などの「知識」を身に付ける 読める漢字や、知っている言葉、専門用語が少ないほど、理解できる文章の幅は狭まってしまいますから、日ごろから色々なことに関心を持って知識を増やしていくのが大切ですね。まずは自分の仕事に関する知識から理解を深めていきましょう。

3.自分のもっている知識と「関連づけ」る 事実を客観的に理解することができたら、その中から重要なポイントを見つけ、自分の持っている知識と関連付けながら、理解を深めていきます。すると、先ほど紹介したように、「なぜ?」「どうして?」と頭に浮かんできた疑問について考えたり、調べたり、追求していくことで、客観情報に対する「自分の意見」が固まっていきます。

みなさんが普段しているインプットと比べていかがですか?

入社3〜4年目のベテラン社員さんだったら当然のこととして出来ていることかもしれませんが、新入社員の方はもしかしたらまだ身に付いていないかもしれませんね。

良質な情報を得る3つの読書法

本書では、こういった基礎力の解説を経て、続いては「読書法」を身につけるドリルを解くステップに入っていきます。

本書で解説されている読書法は、「速読」「通読」「熟読」の3つです。

「速読」 ・・・自分にとって必要な部分だけ読む読書法です。情報を素早く得ることが肝要であり、多くの情報を取り入れるために目を鍛えるとか、そういった類のものではありません。

「通読」 ・・・一通り読んで、全体像をつかむ読書法です。一定の知識を得たり、読書を楽しむために、本の始めから終わりまで一通り読み、全体像を理解します。

「熟読」 ・・・専門書などを多くの知識と関連付けながら、深く掘り下げる読み方です。ある箇所だけを、他の専門書や資料なども参照しながら理解できるまで時間をかけて、完全に読み込みます。

この3つの読書法を身につけることで、本でも、記事でも、書類でも、企画書でも……あらゆる情報において、本質を捉え良質なインプットをすることができるようになるのだそうです。

本質を捉えたインプットというのは、つまり、「何が大切かポイントを理解する」ことや、物事を構造的に捉える論理的思考力のトレーニングでもありますので、アウトプットにも効果てき面ではないでしょうか。

◎具体例をあげれば・・・

・先方のニーズにぴったりはまる企画書づくり ・顧客の興味をくすぐる宣伝文づくり ・人をその気にさせる情報を盛込んだ営業トーク

などなど。

全体としてライトに作られていて、情報収集テクニックの入門者でも、難なく読めるように作られています。

ドリルを解く中で、“自分の頭の中で情報が整理されていく感覚”が気持ちよく、情報を整理するトレーニングとしては楽しくもあり、学びにもなる一冊です。

読む力ドリル

読む力ドリル

読む力ドリル

多くの情報が溢れる世の中において、今もっとも重要な“インプットの技術”を経営コンサルタントの小宮氏が解説した一冊。大きな成果を出すためには、良質な情報をインプットしなければなりません。本書では、実際にさまざまな文章を読みながら、「速読」「通読「熟読」の3つのステップで、「読む力」を底上げしてくれます。