だれかに話したくなる本の話

新刊ラジオ第1702回 「親の家を片づける 土地 建物 相続問題 (ゆうゆうBOOKS)」

7軒に1軒が空き家。今日、空き家の増加は社会現象になりつつあります。「売るか?」「貸すか?」「住むか?」処分に困る親の家、土地問題の悩み、相続手続の悩み、解決すべき方法がこの一冊につまっている。12人の実例から学ぶ32のコツ。親が健全なうちに知っておきたい事実がここにあります。

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概要

こんにちは、ブックナビゲーターの矢島雅弘です。

今回紹介する本は主婦の友社よりでております、『親の家を片づける 土地 建物 相続問題』という本です。

本書では「親の家を片付ける」ことを「親家片」(おやかた)と称しており、新刊ラジオでは前作、前々作と紹介させて頂いております。

1作目の副題は「ある日突然、膨大な老親の荷物や家の整理と処分が、あなたの身に降りかかってきたら、どうしますか?」離れて暮らしていた親が高齢でひとり暮らしができなくなって自宅で同居することになった、介護施設に入ることになった、亡くなって家を処分することになったなどの理由で、突然、膨大な量の親の荷物を整理して処分するという難題が降りかかったときにどうすればいいのか・・・という未知の問題に手探りで取り組んだ15人の体験をまとめたものでした。

二作目は「実践ハンドブック」と銘打っており、実践チェックシートなどが付属し、実際どうしたら良いのかということを教えてくれました。

そして今回三作目はついに「土地 建物 相続問題」となり、まさに「親の家を片付ける」ということになります。

あまり考えたくありませんが、親が亡くなったり1人で暮らせなくなったりした場合、親が住んでいた土地、建物の「親家片」、これは避けて通れない道です。

さらに前回までの「物」を片付けるということと違い、親類縁者、不動産屋、買い手、借り手、などなど1人だけで完結できる問題ではありません。

また、皆様はご存知でしょうか?現在、空き家の増加が社会現象になりつつあることを。

2008年の空き家軒数は757万戸、これは住宅総戸数の13.1%にもなるそうなんです。

さらに、5年ごとの調査のたびに100万戸前後の規模で現在も増加し続けているんだそうです。

不動産取引が活発な都市部や十分な広さを備えた優良物件ならともかく、ごく普通の家の売却はなかなか簡単にいかないのが現状です。

本書では、

【第一章】なかなか買い手がつかない地方の家! 売れない親の家を売る方法

【第二章】売却以外の選択 売れない家を売らずに有効活用する方法

【第三章】親の家を売る以前に知らなきゃ売れない不動産の常識

【第四章】空き家の売却以前に知らなきゃ困る相続の常識

【第五章】親の家を相続するときの基本手続きQ&A

と五章に分かれて12人の実例が掲載されており、32の「親の家を片付けるときに役立つコツ」が掲載されております。

それでは実際いくつかのエピソードを紹介させて頂きましょう。

エピソード1

【家を売るにも貸すにも東京のほうが有利。それなら自分たちが東京を離れて親の家に移り、東京の家を売るか貸すかしたほうがいい!東京都 58歳 大塚幸子さん(仮名) 】

大塚さんはこう語ります、

「10年間で何回、実家を往復しましたかね。1か月2回として年24回。10年なら240回の計算になりますが、実際にそれくらい実家と行き来しましたね。今後、しばらくの間は180度様変わりです。これまでは実家に帰っていたのが、これからは実家から出かけるようになります」

大塚さんは旦那さんの60歳の誕生日を機に、東京の家を引き払い、夫婦で一緒に大塚さんの実家に移り住むことを決めたのです。

旦那さんは、リタイアはしないものの、1、2週間に1、2日程度出社するだけになるといいます。

大塚さんの帰省が頻繁になったのは、実家に住んでいた叔母、母、父の3人が、2000年から10年間に相次いで病に倒れたり、介護が必要になったりしたためです。

ひとり娘である大塚さんの負担は大きかったのでしょう。

大塚さんの実家は、栃木県の芳賀地区にある。

「益子焼」やサーキットの「ツインリンクもてぎ」などで知られる地域で、茨城県に隣接します。

大塚さんは自動車の免許を持っていない為、電車を何度も乗り換えて実家と往復する必要があり、都心から100km圏内といっても、新幹線や直通電車がないので時間がかかる為、こういった方法をとったんだそうです。

なるほど、こういった選択もあるんですね。

もちろんこの選択は何度も旦那さんと話し合いを重ねて出したんだそうです。

そして都内のマンションは売却せずに甥に貸したんだそうです。

エピソード2

【土地の境界線があいまいで売るに売れない義父の家。隣の家との話し合いの場を持つだけでひと苦労。いくら買い手がいても、隣家との境界が確定するまでは不動産取引は一歩も進まない。東京都 59歳 飯塚勝さん(仮名) 】

隣近所とうことで、普段はあいさつを交わしたりして親しそうに思えても、境界線の確定となると大変なものです。

飯塚さんは売却の仲介を頼んだ不動産会社から、

『個別にやったらまとまるものもまとまりませんよ。境界の立会いは関係者全員が集まり、その場で決めてしまったほうがいいです』

とアドバイスを受けたので、隣接している4軒に声をかけましたが、1軒の方がなかなか応じてくれなかったんだそうです。

飯塚さん曰く「かなり以前にフェンスの設置をめぐって義父と多少のいさかいがあったそうです。それを根に持っていたのかもしれません。」とのこと。

こんな思いをするなら、空き家のまま放っておこうかとも考えたという飯塚さんは当時こう振り返っています。

「しかし、そうもいかず立会への参加をお願いしました。菓子折りを持って、三拝九拝で頼み込んで、ようやく了解してもらったのです。」

実際に境界線確認の立会日がくるまで、最初にお願いしてから3か月は過ぎていたといいます。

しかし3か月をかけてセッティングした立会を飯塚さんはこう振り返っています。

「土地家屋調査士にも来てもらい立会いを始めました。ところが始めたら始めたで、『垣根がはみ出している。実際は、もっと垣根を下げて作るべきだったんだ』といった類の『物言い』が際限なくありました。義父の土地を売って儲けようといった気持ちはありませんでしたし、それよりも早く決着したいと、ひたすらこちらが折れ続けることで、なんとかまとまりました。しかし土地に対する執着というか、自分の土地が減るということに対して、人はあんなにも嫌悪感を示すものだとは、初めて知りました。」

実際、隣接する家との境界があいまいなままでは、不動産を売ろうにも、売れません。

境界が不明ということは、登記されている土地を現地で特定できないからです。

つまり、親がなくなり空き家になった実家などを売却しようという場合は、登記に加え、境界がはっきりしていることも確認する必要があるんですね。

できることなら、親が存命中にすませておくべき事項です。

境界を確かめるとは、具体的には「境界標」の確認です。

境界標とは、隣接する家との地境を示すもので、十文字などの印がついた杭になります。

木製のものもあれば、石やコンクリート製、あるいは金属でできている場合もあるそうです。

皆様の家、実家の周りには杭が打ち込んでありますでしょうか?

こうした境界標がない場合は、隣接する全ての家に立会いを依頼し、場合によっては専門家である土地家屋調査士のアドバイスなどを受けながら、境界確認の書面を制作することになるそうです。

ただし、飯塚さんのケースのように、境界の立会を依頼しても、すべての隣家がすんなり応じてくれるとは限らない場合もありますので要注意です。

今回は飯塚さんが折れる形で話を纏めましたが、実際自分にこういった問題がふってきたらはたしてどうしますでしょうか?

まとめ

今回紹介させて頂いたエピソードは、そのエピソードのあくまでさわり程度です。

本書では、どうしてそういう経緯になったか、どうやって解決したか、そしてこういったエピソードを元に、「土地 建物 相続問題」の「親家片」とどうやって向き合えば良いのかが紹介されております。

エピソードに加え、図解、チェックシート、Q&A、などで相続や売却の知りたい所、痒い所、ツボをおさえた一冊となっております。

また、相続税は2015年から新税制に移り、基本的には増税となります。

これを機にこちらの一冊をお手にとってみてはいかがでしょうか?

親の家を片づける 土地 建物 相続問題 (ゆうゆうBOOKS)

親の家を片づける 土地 建物 相続問題 (ゆうゆうBOOKS)

親の家を片づける 土地 建物 相続問題 (ゆうゆうBOOKS)

7軒に1軒が空き家。今日、空き家の増加は社会現象になりつつあります。「売るか?」「貸すか?」「住むか?」処分に困る親の家、土地問題の悩み、相続手続の悩み、解決すべき方法がこの一冊につまっている。12人の実例から学ぶ32のコツ。親が健全なうちに知っておきたい事実がここにあります。