― 『 愛され花嫁修業~幸せを引き寄せるための6つの教え~』についてお話をうかがえればと思います。この本は、結婚前の女性に向けて、結婚してから経済的に困ることのないようアドバイスを授けてくれますが「経済的な自立」という言葉がキーワードになっていると感じました。この「経済的な自立」がどんな状態を指すのか、まずはお聞かせ願えればと思います。
青柳:
「経済的自立」というとお金をたくさん稼ぐことだと思われがちなのですが、そうではありません。今ある収入できちんと生活を成り立たせて、なおかつ貯蓄や資産形成にもお金が回るように自分で支出をコントロールしているというのが、この本でいう経済的自立です。
もちろんこれは、専業主婦はお金を稼いでいないから自立していないということではなく、世帯単位で考えていただきたいです。仕事をしてお金を稼いでいるのが旦那さんだけだったとしても、それを奥さまがやりくりして家計を管理しているのであれば、それも自立ですよ。
― 青柳さんはお金の勉強を「花嫁修業」の一つだとされています。お金の勉強として、特に重要なのはどんなことですか?
青柳:
一番に大事なのは、やはり「お金の貯め方」です。これは人から教えてもらう機会がないですし、毎月の収入で生活して余った分を貯金に回そうという意識ではなかなか貯まりません。
支出をコントロールして、収入の中から余裕を持ってお金を貯めていくやり方を身につけるには、ある程度勉強が必要かもしれません。そのやり方が身について、貯めていけるようになったら、次はそれを投資に回して少しずつ増やしていくことを考えていくのですが、いきなり100万円とか200万円の投資となると大変なので、月々1000円からの積立投資から勉強していくのがいいですね。1000円というと額としては少ないですが、できる範囲で投資の勉強をしていくことが大事なんです。
― 投資の重要性ということでいうと、今の若い世代は貯蓄だけで老後に備えることは難しいのではないかと言われていますね。
青柳:
今、銀行預金の金利は普通預金で0.02%ですから、100万円を預けても年間の利子は200円です。振込手数料で400円とられたりしますから、赤字ですよね。
今は所得も減っていますから、そもそも貯蓄に回せるお金も少ないですし、貯めても増えません。そして、65歳から老後が始まると考えて85歳が寿命とすると約20年、年間400万円ずつ使っても8000万円くらいは必要なわけです。
これを全部貯金で作るというのはほとんどの人にとって無理でしょう。だから、自分で何か対策をとらないといけません。
かつて、預金で6%~8%の金利がついていた時代があって、その時は預けておけばお金は増えてました。でも今は0.02%ですからこの差を何とかしないといけません。そうなると運用しかないんです。
でも、日本にはそういうことを教えてくれる場所がほとんどなくて、「年金貰えるのかな?」「貯金もこのくらいで大丈夫かな?」、とはっきりしたことがわからないまま、ぼんやりと不安を抱えている人がたくさんいます。そういう場合でも、自分でお金について勉強する助けになればいいなという思いもこの本にはありますね。
― フィナンシャルプランナーとして、そういった方々に向けてお金に関する指導をされている青柳さんですが、生徒さんは若い女性の方が多いんですか?
青柳:
30代の女性が多いですね。お金についての知識もさまざまで、貯金ができなくて、という人もいれば、借金があって貯金にまで手が回らないという方もいます。
― 30代の女性となるとどうしても「結婚」が視野に入ってきます。ただ、お相手の男性が「経済的に自立している」とは限りません。もし自分の恋人の男性がお金にだらしない人だった場合、貯蓄や投資への意識を持ってもらうためにどういった働きかけをするのが有効なのでしょうか。
青柳:
これは難しい問題で、どんな人でも物心ついたころからお金を使ってきていますから、それぞれその人なりのルールや習慣があるんですよ。それを外からの働きかけで変えるのは難しいです。それなら最初から自分と似た金銭感覚を持っている人を探すという方が早いと思います。
ただ、もし相手が自分と感覚が合わない人だった時どうするかということを考えると、まずは話し合うことですね。これは日々の無駄遣いがどうこうという細かい話ではなくて、将来どうしたいのかということや、このままいくと先々大変な思いをするという意識を共有するということです。それが二人の間で固まっていけば、「将来こうしたいから今はこうしましょう」という女性側の提案を男性は受け入れやすいはずです。ただやみくもに「月1万円節約してよ」といっても反発されるだけですから、長期的な計画を見せることで男性側の視点を変えてあげることが大事なのではないかと思います。
― たとえばこれから「婚活」を始める場合、相手の金銭感覚は気になりなるはずです。相手の男性が浪費家かどうか見分けるポイントはありますか?
青柳:
収入が多い人の方が、案外貯金ができていないという現実があります。たくさん稼いだ分たくさん使っていては、お金は貯まりませんよね。
たとえば年収が1億円を超えるとか「突き抜けている人」は、多少浪費していても手元にお金が残るのかもしれませんが、普通の会社員レベルだといくら収入が多いといってもそこまではいかないはずです。そういう人が「突き抜けている人」のマネをすると、せっかく稼いだお金を使い切ってしまうことになります。
会社員なのにむやみにブランド物を持っていたり、やたらとプレゼントをくれたり、食事が毎回高級店だったり、という人は、やはり分不相応な支出をしていることが多いのではないでしょうか。
仕事上の経験でいえば、30代で1000万円以上貯蓄があるような人は、見た目は地味で、時計や服も同じものを長く使うタイプです。収入が多い少ないは、あまり関係ないのです。
― 男性には趣味に惜しみなくお金をつぎ込んでしまうタイプの人がいます。こういう人に「お金の管理の重要性」をわかってもらうためにはどんな働きかけがいいのでしょうか。
青柳:
趣味は趣味であっていいんですよ。もちろん、できるだけお金のかからない趣味の方がいいんでしょうけど、そこは個人の問題ですから。
大事なのは、「趣味にはこれだけお金をかけられる」ということをきちんと話し合うことです。お金を貯めたり運用していくにあたって「コミュニケーション」はすごく大事で、どんな目標を持ってどんな貯蓄・運用をしているかというのは共有しておいた方がいいですね。この本でも「コミュニケーション」については一つの章を使って解説しています。
― 貯蓄するにしても投資をするにしても、家計の「支出」をしっかり管理することが重要です。無駄な出費をしがちなものがありましたら教えていただきたいです。
青柳:
これは人によるので一概には言えないのですが、家計簿をつけていただくと、何に使ったかよくわからない「使途不明金」が実はかなりあることがわかるはずです。そういったものが一体何に使われたお金なのかを突き止めると、節約の糸口が見つかると思います。
女性であれば化粧品を必要以上に買っていたり、高額なサプリメントにお金を使っていたりということが多いですね。本人は必要だと思って買っているからなかなかその出費を削るという発想にならないのも特徴です。
― 次は結婚した後のことをお聞きしたいです。結婚すると多くの場合、家計を一つにまとめますが、この時に注意すべきことはありますか?個人的な体験ですが、急に自由になるお金が減って不自由な思いをしました。
青柳:
これがまさにコミュニケーションにかかわることで、家計を一緒にすることの意味を話し合って理解することが大切です。なぜ二人の家計を一緒にするのかというと、将来使うお金や老後のお金を作っていきたいからですよね。その目標さえ共有していれば、いくら貯金して、お小遣いはいくらで、ということは自然に決まっていきますし、不満は溜まりにくいはずです。
もし、家計をまとめた途端に自由になるお金が減ったなら、それは今までが使い過ぎていたと考えるべきです。将来のことを考えずにお金を使っていたものが、将来の計画に沿ってお金を使うようになったということで、むしろ「正常に戻った」ということだと思います。
― 家計をまとめた時、どちらが主に管理するかという問題が出てきます。一般的に女性が管理する方が多いように思いますが、こちらについてはどのようにお考えですか?
青柳:
肝心なのは二人が納得するかどうかということで、情報共有さえできているならどちらがやっても問題はないはずです。
ただ子育てに関しては、何にいくらかかるかということは女性の方がわかっていると思いますし、生活品の買い物は奥さまが行く場合が多いので、お金の管理は奥さまがする方が何かと便利なのかなとは思います。
もちろん、先ほどお話ししたように、貯めているだけでは将来に対して十分な備えができないはずです。これをわかっていないと、奥さまががんばって切り詰めて倹約して貯金をしたのに、いざ老後になってお金が足りないという事態になってしまう。その時になって「お金の管理を任せていたのに何で貯金ができていないんだ!?」と奥さまの責任にされても困ってしまいますよね。だからこそ運用の大切さを夫婦ともに認識して、貯金だけでなくて運用していくための勉強が必要なんです。お金を管理するのが奥さまであれば、奥さまが運用まで引き受けられればそれがベストだと私は考えています。
― 投資を始めたいという人に、まずどんな種類の投資を勧めていますか?
青柳:
初心者の方には投資信託を勧めています。投資信託での積立てですとか、毎月一定額を運用に回していくというスタイルですね。
― 預金の利子率ではお金が増えないから、という理由で投資を始めるからにはやはり利回りが気になります。
青柳:
やり方はいくつかあるのですが、私は年間10%の利回りでやっていけるように教えています。
預金の利子率を見慣れていると、10%はすごく高いように思えますが、投資の世界では特別に高いわけではありません。ミドルリスク・ミドルリターンといったところで、きちんと学べば誰でもそのくらいの利率で運用していくことは可能です。
― 運用の利回りというのは、どの銘柄を選ぶかにかかっているわけですか?
青柳:
そうですね。ひとくちに「投資信託」といっても、日本で購入できる投資信託の銘柄は、少なくとも3000本くらいはあるんです。そのなかでどれを選ぶかという話になるのですが、私の基準だと運用していい銘柄は1%、30本ほどです。
― 「運用してはいけない銘柄」はどういう理由でダメなのでしょうか。
青柳:
端的に言えば「利益が出ない」ということです。投資信託をやっている人はたくさんいますが、大半は誰かに勧められた銘柄を何となく買って運用していて、自分で見極めて選んでいる人は少ないですね。
たとえば、銀行や証券会社に行くとおすすめの銘柄を教えてくれますけど、その銘柄でどうやって利益を出していくのかということは、聞いても教えてくれません。投資をする側からすると、「なぜおすすめなのか?」という根拠がわからないわけで、それを何となく鵜呑みにして投資をすると、「気がついたら損失を出していた」ということになりがちです。少なくとも自分の知識と基準で銘柄を選べるくらいの勉強は必要です。
― しかし、他の家事や仕事と両立しないといけませんから、あまり投資に時間を割けない人も多いのではないでしょうか。
青柳:
私が指導しているのは長期投資なのですが、長期投資は一度投資したら大体2年から3年はそのままほったらかしなんですよ。せいぜい月に一度チェックするくらいで、毎日投資のための時間をとらないといけないというわけではありません。だから、時間がかかるのは、最初に投資する銘柄を選ぶ時と、それまでの勉強ですね。勉強について言えば、週末を使って週に3時間程度、4~5か月勉強していただいて、半年くらいで実際に投資を始められるように指導しています。
―最後になりますが、結婚を控えた女性や、結婚したばかりの女性の方々にメッセージをお願いできればと思います。
青柳:
大きな矛盾なのですが、女性は結婚前にお金のことを話すと、「はしたない」「がめつい」などと言われる割に、結婚した途端にお金のことを全部任されてしまったりします。
急に任されることで戸惑う人はたくさんいるはずで、思うように貯められなかったり、運用ができなかったり、どのくらい貯めればいいかわからないという不安が全部女性にきてしまいます。とにかく一人で悩まないようにしていただきたいですね。
この本ではお金についての基礎知識を解説していますが、それだけでなく、パートナーとのコミュニケーションや子育てのアドバイスなど、大事なことなのに学ぶ場がないことについて広く扱っています。
ぜひ読んでいただいて、一人で悩みを抱え込まず、自分でできないことは誰かに相談できるようになっていただきたいですね。