BOOKREVIEW - 書評 -

「好きなものが買えない」「結婚できない」「老後が怖い」などなど、お金の悩みは深い。

その原因については人それぞれ思い当たることがあるだろう。
「給料が上がらないから」と会社のせいにしてしまうのは簡単だが、その前に自分の生活を振り返ってみよう。
給料が高かろうが低かろうが、いつも手元にお金がないとこぼす人はいる。「金持ち」か「貧乏」かは所得の高低が決めるわけではないのだ。

以下は『世界の超一流から教えてもらった「億万長者」思考』(稲村徹也著/日本実業出版社刊)で紹介されている「貧乏メンタル」な人の特徴だ。思い当たる点が多いなら、収入以前に「自分で自分を貧乏にしてしまっている可能性がある。

  1. 無理をして食費を切り詰める
  2. 中古品や型落ち品が好き
  3. 他人の能力や手柄を認めない
  4. 現状を維持したがる(収入が下がった時も相応の生活レベルには下げたがらない)
  5. 住居が格安物件なのに車は高級車
  6. 高級車を所有したことがないのに、所有したことがあるかのように車の良さを話す
  7. 冠婚葬祭や季節イベントに多額の出費をする
  8. 自分が物質的に得を感じることにしかお金を出さない
  9. お金を粗末に扱う(支払う時に店員に投げるように渡すなど)
  10. 高額(高級)商品を正規ルートで買った経験がない
  11. 利用経験もないのに高級店や高級品の知識だけ豊富
  12. コンビニや100円均一での買い物が多い
  13. 収入の使い道が雑に決められている(貯蓄に回す余裕を作れない、借金を作りやすいなど)
  14. 環境の変化を嫌って地元から出たことがない
  15. 貧乏自慢をする
  16. 他人にジェラシーを感じやすい、他人を蹴落とそうとする
  17. 何事によらず、がめつい
  18. 借りたものをきちんと返却しない

 これらはすべて「貧乏人マインド」の人の行動だ。
 「無理をして食費を切り詰める」のは、数十円の節約のために将来の健康を犠牲にする行為であり、「中古品や型落ち品が好き」なのはそれらを探す手間によって生産的な行動をする時間を奪われている。「貧乏」の原因は低収入だけではない。大部分は自分のマインドと行動習慣にあるのだ。

 もちろん「貧乏人マインド」があるからには「億万長者マインド」もあり、これらを取り入れて生活の中に組み込むことで、貧しくなる一方だったサイクルは逆回転をはじめることになる。

 本書では、ジェイ・エイブラハム(全米一のマーケティングコンサルタント)、JTフォックス(世界トップクラスのウェルスビジネスコーチ)、ロッキー・リャン(中国で大成功を収めた起業家)、アンドリュー・カーネギー(鉄鋼王)など、古今東西の偉人たち94の名言や人生哲学を参照しながら、人付き合いやお金の使い方、仕事の方法など多岐にわたって「億万長者マインド」「億万長者の行動パターン」「人生の成功哲学」を解説していく。

お金に悩まされっぱなしの自分を変えたいならば参考にしてみてはいかがだろうか。

(新刊JP編集部)

PROFILE - プロフィール -

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稲村 徹也

(いなむら てつや)
X-MARKETING株式会社代表。経営コンサルティング業、集客、マーケティング、人材教育業、投資会社などを経営。
石川県金沢市生まれ。2000年続く能登比咩神社の家系の末裔。21歳で人材アウトソーシング業創業。全国展開、株式上場を目指し年商20億円の企業にまで成長させる。当時、銀行の貸し渋りや、規制や制限の問題で、資金が続かず倒産。30歳で億単位の借金を背負う。
その後、再スタートをきり、経営コンサルティング業業や集客、マーケティング、人財教育業、投資会社など各々億単位の年商をあげる複数の会社を経営。現在は、欧米や中国などの世界の超一流人と公私ともにかかわりながら、自らの学びや経験を交えたビジネスセミナーも開催している。今、最も力を入れていることは、海外一流講師から次世代リーダーまで幅広い人物のプロモーターや、海外富裕層を相手にビジネスを展開しているロッキーリャン氏との投資会社の経営。日本のレベルを世界基準にすることを自分の使命として活動している。

CONTENTS - 目次 -

  1. はじめに
  2. 序章 成功に不可欠な「億万長者マインド」を知ろう
    • 富を生む発想と行動が「億万長者マインド」
    • あなたも身につけられる「億万長者マインド」
    • 絶対に捨てたい「貧乏人マインド」
    • データで見る日本と世界の「億万長者」
    • 富を得る最初のステップが「マスターマインド」
    • 効果的なマネー吸引材となる「謙虚な姿勢術」
    • 自己欲求から自分を解き放つ「共存共栄術」
    • 「自己欲求」より「他者欲求」を考える
    • マネーを誘う重要な思考回路が「他者欲求」
    • メリットだけを活用したい「自己欲求」
    • 共存共栄が原動力となる「イノベーション」
  3. 第1章 超一流の成功者たちのマネーセンスに学ぶ! 富と名声を手にした人物たちの「お金の哲学」
    • 明確にイメージしておきたい理想の「成功者像」
    • 主体的に設定したい「自己収入」
    • 知っておきたい起業家の類型「マネーツリーフォーミュラ」
    • 成功に近づく一番のキーフレーズ「目標設定術」
    • 初めは小さく徐々に大きくして達する「最終目標」
    • 成功哲学の初歩としての「積極的心構え術」
    • 具体例を見て学ぶ「目標設定術」
    • 成功するために身につけたい「経営者マインド」
    • 先に知っておきたい成功を目指せば現れる「ハードル」
    • 経済学の古典たちも勧めている「成功術」
    • ベストセラーを読み解くカギにもなる「億万長者マインド」
    • ジェイ・エイブラハムの最適化発想「掛け算思考術」
    • 今のうちに復習しておきたい「エクセレントカンパニー」
    • COLUMN 多くの気づきを与えてくれる超一流の「マネー格言」
  4. 第2章 成功に必要な億万長"ビジネス"マインドとは? 超一流が意識している仕事の進め方
    • マネーを生む実質的な主力としての「ビジネス哲学」
    • 物理学と融合したゴールドラットの「経営哲学」
    • リチャード・ブランソンに見る事業展開「5つの秘訣」
    • 自分の信念に忠実でシンプルに徹した「KISS戦略」
    • 新規参入にこそチャンスが広がる「スピード成功術」
    • 相反するようでしていない「慈善とビジネス」
    • 成功のために養いたいビジネスでの「コペルニクス的転回」
    • 創造的破壊を訴えるフィリップ・コトラーの「イノベーション」
    • 常に、より正確な選択をするために必要な「注力注視ポイント術」
    • 優先すべきは決められている「売り上げと利益」
    • COLUMN 成功と巨富を手にしたリーダーたちの「ビジネス格言」
  1. 第3章 「億万長者マインド」で成功を引き寄せる習慣術 こんな生活習慣や意識づけが成功をつかみとるための足掛かり
    • 常に頂点を意識した「世界ナンバーワン思考術」
    • 成功への大きな一歩を生み出す「もうたくさん! リスト術」
    • 日常的な習慣にしたい自分に問いかける「成功クエスチョン術」
    • ハッキリと認識しておくべき「習慣の本質」
    • 習慣として今すぐマスターしたい「貯蓄思考術」
    • 名著で復習する「成功哲学の原理原則」
    • 成功哲学と意外な共通点を持つ「禅思想」
    • 成功のための習慣を気づかせてくれる「孔子の教え」
    • 素早い反省と成長を促してくれる「自己理解術」
    • 成長のための養分となり得るメリットとしての「懊悩術」
    • 大切さを改めて認識できる「習慣の格言」
    • COLUMN 超一流成功者たちが実践してきた「日常生活の格言」
  2. 第4章 ミリオネアに教わる人脈作りの極意 今すぐ実践したい超一流の「対人関係の作り方」
    • ここまで意味が異なる「信用と信頼」
    • 人間関係の礎としての「信用と信頼」
    • 動くべきは自分か相手か?「リーダーシップ論」
    • 近未来のために覚えておきたい「リーダーシップの資質」
    • 偉大なリーダーになるための「7法則」
    • リーダーが磨くべき上級テクニック「褒賞術」
    • 人間関係にこだわって組織したい「最強のチーム術」
    • ぜひ学びたい実践型の交渉テクニック「ゲットモア術」
    • COLUMN 成功者は常に人に囲まれる「交際と交渉の格言」
  3. 最終章 超一流から見ならいたい「人生哲学」の法則
    • 超一流成功者たちが共通して持つのは高い「問題意識」
    • 常に課題と向き合う成功者がのこした「問題意識の格言」
    • 成長を絶え間なく渇望して成長を遂げるための「成長進捗術」
    • 知識と体験と行動力のバランスを教えてくれる成功者たちの「人生の格言」
    • 人生哲学の根本にある法則は「信念」
  4. おわりに
  5. 本書に登場する人物
  6. 参考文献

INTERVIEW - インタビュー -

――『世界の超一流から教えてもらった「億万長者」思考』についてお話をうかがえればと思います。この本では「億万長者のメンタル」と「貧乏人メンタル」が明確に違うことが指摘されています。まず、お聞きしたいのは「億万長者」はどのようにして「億万長者メンタル」を身につけていくのかという点です。

稲村:まず知っていただきたいのは、「億万長者」というと高学歴なイメージがあると思いますが、実際には8割方が中卒、高卒だということです。
高校を卒業して大学に入った人が4年間何を学ぶかというと「どう安定して生きるか」というための知識なり技術です。そして、就職して安定した生活をしていきます。

これに対して、高卒の人は学校を卒業すると同時に就職して、大学に行った人より4年早く働き始める。同い年の大学生が卒業するまでの間に仕事の現場のことは大抵身につきます。こうした低学歴の人の仕事としてよくあるのが、いわゆる「3K」の職場なのですが、こういう仕事は人がやりたくないことをやるので給料は比較的いいんです。若いうちは同世代の人よりもお金を持っていることが多いのに加えて、職場環境は職人社会で上から頭ごなしに言われますからね。早く独立したいという気持ちが芽生えやすい。

著者近影

――たしかに、「3K」の代表のように言われる建設業を見ると、若くして独立する人は多いように思います。

稲村:ええ。そして独立・起業をして会社が回り出すと収入が増えますから、何をするかというと投資を始めます。そうなると付き合う人が変わってきますし、投資は5年先10年先のことを考えられないとできませんから、先を見る目が養われてゆく。

こういうことをしていく過程で、「独立・起業した社長」は「実業家」へ変わっていくわけです。そうなると、気になるのは自分の「低学歴」です。だから、低学歴で成功した実業家ほどセミナーなどに学びに行きます。仕事を通して学んだり、セミナーで学んだりしているうちにどんどんマインドが成功者のものに変わっていきます。

――「億万長者」というと、他人を出し抜いて成り上がったというイメージを持たれがちです。稲村さんの知り合った億万長者たちにこういったタイプはいなかったのでしょうか。

稲村:他人を出し抜いたり、自分のことしか考えない人は、たとえ一時的にお金持ちになってもすぐ潰れてしまいます。長く成功しつづけていくためには、やはり人格的な要素はすごく大切なんです。
この本の中でジェイ・エイブラハムやブライアン・トレーシーといった「億万長者」の名言を紹介しているのですが、30年以上成功しつづけている彼らのような人にだって落ちる時期はあったはずです。でも、彼らはその逆境に耐えられる。なぜかというと彼らは人格者であり、そういう人は困った時に周りの人が助けてくれるからです。

さらに言うなら、一流の人ほど誰かを助ける時に、お金を貸したり与えたりするのではなく「人」を紹介します。ビジネスで失敗するのは端的にいえばお金がなくなるからですが、お金がなくなりそうな人に対しては、お金を貸すよりも人脈を紹介してあげて、新しいビジネスのチャンスが生まれるようにする。その方がレバレッジが効くことを知っているんです。これは一流の人とそうでない人のマインドの違いだと思いますね。

――書店に行くと、億万長者や一流の人の考え方や行動について書かれた本がたくさんあります。それらの本と稲村さんの本にはどんな違いがあるとお考えですか。

稲村:成功者のマインドや行動パターンだけでなく、「センス」や、僕がこれまでに学んできた「成功のカギ」についても詳しく書いている点です。
世の中に腐るほどある「成功法則」や「成功本」ですが、はじめて出版されたのは約400年前で、最初の50年間は、成功のカギを「人格」に置く本ばかりでした。つまり「良き人格であれ、誠実であれ」という本です。そして、その後の350年間は「スキル」で、「お金持ちになるためのテクニック」というような類ですね。
この流れが今も続いているわけですが、どうして「これをやれば成功する」というスキル本が今もなお数多く出版されて、それらを読んで実践しても効果がない人が多いのかというと、それらのスキル自体は役立つものだったとしても、本を読んだその人に合っていないからなんですよね。本には人によって向き不向きがあって、向いていない本に書いてあることを実践してもうまくはいきません。ぜひこの本を読んで自分に合った「成功のカギ」を見つけていただきたいと思います。

――稲村さんがこれまで読んだ中で印象に残っている「成功法則」についての本で、印象に残っているものはありますか?

稲村:一番に来るのはナポレオン・ヒルの『思考は現実化する』です。それと『自分の人生を無駄にするな!』という松阪麻樹生さんの本が好きですね。

昔、アルバイトでバーテンダーをしていた時に、これらの本の中の言葉をそっくりそのまま同僚やお客さんに話していたことがありました。当時19歳くらいだったのですが、老け顔なので30歳くらいに見られていたんです。そんな風貌だったので、本で読んだことを話しただけなのに、僕が自分の言葉でしゃべっているように受け取られて、みんなすごいと感動してくれるんですよ。本当の年齢を明かすと、さすがに受け売りだとバレてふざけるな、となりましたが(笑)。

著者近影

――先ほど「センス」という言葉が出ましたが、本の中でお金に関する「センス」について書かれていましたね。億万長者や成功者たちがお金に関していいセンスを持っているとすると、「悪いセンス」とはどのようなものなのでしょうか。

稲村:「計画性がない」という点でしょうね。自分がどれだけ使っているかを正確に把握していないというのもそうだし、どんなことにお金がかかるかということも計算していない。
たとえ、年収が300万円だったとしても、10年で3000万円、30年で9000万円です。何が言いたいかというと、今現在お金がないというのは、賃金が安いからというよりもお金に対する計画性がないからだということです。計画がないから、給料全額とはいかずとも、使わなければ貯まっていくはずのお金が全部流れて行ってしまう。

――「人脈」についての章では、リーダーシップについて重点的に書かれていました。やはり経済的に成功を収めるにはリーダーシップは欠かせないものですか?

稲村:リーダーシップについては誤解されているところがあって、A地点からB地点までみんなを引っ張って連れていくことがリーダーシップだと思われがちなのですがそうではありません。
リーダーシップというのはA地点からB地点まで行くことについて、メンバーを「その気」にさせられるかということです。これはすごいことで、もし周りの人をその気にさせることができるのだったら、経済的成功が手に入りやすくなるのはまちがいないでしょうね。

――また「他者欲求」のことは「マネーを誘う重要な思考回路」と書かれていました。この考え方がどのようにお金に結びついていくのでしょうか。

稲村:正確に言うなら、自己欲求を満たしつつ他者欲求も満たすということです。
会社経営に失敗する人というのはたいがい自分が満たされればそれでいいというタイプで、相手に勝たせたり、相手に先に何かを与えるという考えはありません。
かくいう私も20代の頃は自分が勝つことしか考えていなかったので、30歳の時にまんまと失敗して億単位の借金を抱えてしまったことがあります。600人いた従業員は全員辞めてもらわないといけませんでした。
「他者欲求」と「自己欲求」を両方満たすためには、まず相手に勝たせてしまえばいい。そうすれば必ず自分の方に返ってくるということに気づいたのはその時でしたね。
今となってみると、当時誰かがアドバイスをくれる人がいたら、もっと早く気づいていた気がします。この本が当時の僕のような人にとってアドバイスになればいいなと思いますね。

――稲村さんとしては、本を読んだ読者の方々に、いずれは自分でビジネスを起こしてほしいと考えていますか?

稲村:そういうわけではありません。起業に向く人もいれば向いていない人もいます。起業は向いていないけど投資は向いているという人もいるでしょうし、人にものを教えるのが得意という人もいるでしょう。自分に合うものを見つけてやっていってほしいと思います。

それと、僕の本を読んだリアクションとしてやっていただきたいのは、自分なりの成功哲学を作るということです。成功哲学は一つではなくて、人それぞれあっていい。時代によっても成功するために大切なことは違うでしょう。
僕の本を読んで、自分に本当の意味でマッチする、自分だけの成功哲学をぜひ見つけていただきたいですね。

――本書を特に読んでほしい人はどんな人だとお考えですか?

稲村:まずこれから大人になっていく子どもたちに読んで欲しいですし、これから不景気になるとわかっているけどどうしていいかわからないサラリーマンやOLの方々にも読んでもらえたらいいなと思っています。

それと、何かをやりたくてウズウズしている人や夢を叶えたい人ですね。こういう人に読んでもらえたら行動を起こすきっかけになるのではないかと思っています。

――最後になりますが、そういった人に向けてアドバイスやメッセージをいただければと思います。

稲村:一流といわれる人はそうでない人とどこが違うかというと、とにかく諦めないんですよ。自分がやろうとしていることが他の人から「そんなの無理だよ」といわれても挫けないどころか、却って「そんなに難しいことなら何としてもやってやろう」となる。こういう人は難題を欲しているんですね。難題であるほど解ければビジネスになるから。

どうしたらそんな人になれるのかといったら、「この人のようになりたい」という自分にとっての「ヒーロー」や「メンター」を決めることが大事です。

著者近影

最後にアドバイスとして「どうやったら自分に合ったメンターを見つけられるか」についてお教えします。セミナーに行って、講師に「どうしたら自分は成功しますか?」と率直に聞いてみることです。当たり前ですがこれは大抵のセミナー講師は困る質問で、答えられません。質問者について何も知らないわけですから。でも、逆に言えば、もし答えられたなら、その人はメンターとしてあなたに合っているかもしれません。その答えについて納得できたなら、その講師をメンターにしていいと思います。

中谷彰宏×稲村徹也 スペシャル対談

■体験しないとわからない!経営者が一番鍛えられる瞬間

中谷:僕は本を読む時、まずは著者のプロフィールから読みます。それで、稲村さんのプロフィールを見たら、自身の倒産経験について書かれていました。

経営者が一番鍛えられるのは、会社を立ち上げる時と倒産した時です。本で読んだりしたことと、実際に倒産した経験から学べることばまったく違います。そういうリアルな経験をしてきた稲村が、経営コンサルタントとして活動されているなかで、「次の決算が乗り越えられない、このままいくと倒産する」という人に対してどんなアドバイスをしますか?

稲村:当たり前のことかもしれませんが、会社が倒産する一番の原因は売上があがらないことです。じゃあ、なぜ売上があがらないかというと、経営者自身が営業をしないことなんです。創業当時は自分が営業に回って売上を立てていたはずなのに、だんだんと部下に任せきりになってくる。

部下の営業マンと、決裁権を持つ経営者では、営業先の対応は違います。初心に戻って経営者自ら営業に回る覚悟で会社を復活させるのか、それとも倒産という形で一度失敗してからリスタートするのか、そういう社長の「本気度」は問うでしょうね。

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中谷:倒産させずに復活させるとなると、従業員に辞めてもらって大幅に人員削減をするとか、従業員の給料をカットといったことも必要でしょう。冷徹な経営者なら普通にできることかもしれないけど、なかなか言い出しにくいものじゃないですか。

稲村:そこはズバッと言うしかないと思います。会社の経営状態が良くないということは、従業員であれば大体の人はわかっているでしょうしね。

これまでの経験からいうと、給与カットについてはほとんどの場合は納得してくれます。もちろん、カットした分は今後業績が回復した時には支払うべきです。

中谷:ただ、リストラを例に出すなら、会社がこのままだと倒産するという時、気持ちの優しい経営者ほど、難しい。「自分が生き残るために従業員を切った」という立場になるのが辛くて、従業員を辞めさせるよりも、倒産したほうがまだ楽だと考えたりしますよね。結局給料を払えなくなるなら「潰れたから、ごめんね」の方がまだ楽という。

稲村:それもありますが、自分の経験を考えてみても、倒産してからリスタートした方が割り切って仕事ができる面もあるんですよね。
ただ、僕の場合は、倒産して億単位の借金があるところから新しいビジネスを始めたのですが、4畳半のアパートの一室でやっていたので求人を出しても全然来てくれない(笑)。

中谷:倒産した人に対して日本は厳しいですよね。アメリカでは一つの経験として見てくれるけども、日本では「失敗した人」という烙印を押されてしまう。
どうして、もっと華々しい話をしないで倒産の話から始めたかというと、これから起業をしようという人たちのほとんどが、いずれ一度は倒産の危機に瀕するからです。

稲村:リスタートして15年経ちましたけど、僕もこれまでに何度もそういう状況になりました。

■借金への抵抗感が成長を阻害する!?

中谷:稲村さんの本にはミリオネアになる人の考え方が書かれています。まず、ミリオネアになるには投資をしないといけないわけですが、今会社員の人がやっている投資といったら、自由に使えるお金の中から本を買って読んだり、株を買ったりといったことでしょう。
ところが、ミリオネアになるなら自分で事業を興す必要がある。必然的に借金をして投資せざるを得ないわけです。この借金に関して免疫力が弱い人が多い。借金することに自体にドキドキするタイプはミリオネアにはなれない。

稲村:そうですね。負債を持っている会社でも上場はできるし、他の会社を買収することもできます。ビジネスには借金はつきものなんですけどね。

中谷:経営というのは余剰金でやるものではありません。お金を借り入れて、借りた分の利子を払ってでも儲けを出すことです。「借金を負わない範囲で何かできないか」と考えてしまう人は起業には向いていない。

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稲村:今、だいたいの人は大学まで行くじゃないですか。そこで何を学ぶかというと、安定するための知識なり方法を学ぶ。だからリスクに対して臆病になってしまうのかなと思います。

中谷:安定してしまうことの負の側面というのは、その安定した水準を下げられなくなってしまうことですね。生活水準や経済的な水準が下がるのが怖くなってしまう。
資本主義経済は上下する景気の波によって成り立っています。その波の上にいるということをわかっている人はそこまで安定にこだわらない。事業のために借金というリスクを負うことに恐怖感はないので。アメリカや中国と比べて、日本には借金が怖い人がはるかに多い。

■稼ぎたかったら「サラリーマン思考」をやめること

中谷:稲村さんは『世界の超一流から教えてもらった「億万長者」思考』で、億万長者になる人の思考について書かれていますが、億万長者になれる人となれない人の境目はどこにあると思いますか?

稲村:先程もお話ししましたが、安定を求めるという意識は変えていくべきでしょうね。あとは、やると決めたことを続けられるか。

中谷:日本の被雇用者側の性質として、収入が上下するのをすごく嫌がりますよね。だからがんばった分の査定給よりも基本給を欲しがる。基本給があがってその代わり査定給がつかなくなっても、それでいいと言う。そうすると、どうすればもっと稼げるかという考えはなくなってきますよね。これは、いいことではないと思う。

たとえば、ホテルは対照的で、ウエイターの基本給は安いんだけど、チップがあってウエイターやドアマンは結構それで稼いでいます。結果、総支配人よりも収入が多いといウエイターもいるくらいです。

彼らはどうしたらもっとチップをもらえるかを常に考えるから、10年前に一度来たきりの人でも顔を覚えていたりします。僕は、シンガポールのあるピアノバーに毎年ロケで行ていたんですけど、その店にはカラオケがあるんです。そこのスタッフが前年に僕が入れた曲を覚えていて驚きました。

そうやって記憶しておくことでチップにつながるということ知っているんです。そのように日々稼ぐ方法を考えていると、次第に感覚が自営業的になるというか、経営者の頭になってくる。

稲村:すごいですね。日本にはチップ制はなくて、一定額のサービス料を取るだけですから寂しいものがあります。

対談写真

中谷:昔は「心付け」を受けていましたが、今はそれもどんどんなくなってきていますね。今は渡そうとしても断られてしまう。お金を稼ぐために必要なはずの自営業者の感覚がマヒしている社会になっています。

そうなると、資本主義の世界で搾取される側になってしまいますよね。これまでは日本の国内で搾取する側とされる側がいたわけだけども、一国まるごとが搾取される側になる。これは危険なことです。

稲村:引っ越し業者には残っていますよね。

中谷:残っていますね。あらゆるサービスの値段がものすごく下がっている代わりに落差がすごいんですよ。すごく安くてサービスがいいところと、すごく安いけど酷いところとに分かれてしまっている。だから、いい仕事をしてくれた人には、基本料金とは別に心付けを渡すという文化が残っているんです。

■「一流」になれる人、なれない人、その決定的な違い

中谷:億万長者になれるかなれないかの違いは「続けられるかどうか」だということでしたが、「一流になれる人となれない人の違い」についてはどう考えますか?

稲村:失敗についての考え方ではないでしょうか。たとえば経営者であれば、倒産はしなくても大きな失敗を何度もするはずです。その失敗から糧にして自分が変わっていけるかだと思います。日本はどちらかというと成功した体験を自慢する人が多いのですが、本当に価値のあるのは失敗の方だと思います。

中谷:早いうちに失敗をできる人は強い。日本人は失敗を避ける傾向があって、セミナーなどでも「できるだけ失敗をしないで成功するにはどうすればいいか」というような質問がくる。

稲村:僕の場合、失敗したことで謙虚になれました。20代でビジネスを始めたのですが、若かったですから粋がっていたところもあったんです。それで30代で失敗して億単位の借金を作ってしまった。そこでようやく謙虚になれたというか、困った時に助けてくださいと言えるようになった。それまでは言えなかったんです。

そうなると、助けてくれる人が現れるもので、自分よりもレベルが高い人が力を貸してくれるようになりました。そういう力添えのおかげでリスタートできました。

中谷:最後に、この本を読んだ人から出るであろう質問を代弁します。本に書かれていることを実践して億万長者の思考を身につけたとして、実際に億万長者になるまでにどれくらいかかりますか?

稲村:今自分でビジネスをしている方だったら、早ければ2、3年で効果が出るのではないかと思っていますが、謙虚にやっていっていただきたいですよね。謙虚さがないとたとえうまくいっても、同じスピードで落ちてしまいます。

稼げる人とそうでない人は時間の感覚がちがっていて、稼げない人ほど成果を焦ってしまう。稼げる人は7年先とか10年先にゴールを設定して地道に努力できるんです。

この本では、ビジネスでサバイバルしていくための考え方を書いています。いわゆる「成功哲学本」には300年くらいの歴史があって、はじめの50年間は成功するための思考について書いていたのですが、あとの250年は実際的なスキルやノウハウについての本が主流になっています。こういった本を読んで成功している人もいますが、最終的に破産している人も多いんです。成功するために本当に必要なのは、表面的な知識やスキルではなく、行動の根幹にある考え方なんです。

(新刊JP編集部)

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