BOOKREVIEW

社畜からでも逆転は可能 人生を劇的に変える「3K」とは?

人生において、してはいけない生き方はあるが、コレ!という正しい生き方はないのかもしれない。こつこつ努力をしていくのも、最短距離で一気に突き進むのも、好きなことだけをするのも、すべて正しいのだろう。

とはいえ、好きなことをしてお金を稼いでいる人には注目が集まりやすい。自由に人生を謳歌しているように見えるし、それでお金を稼いでいるならばならおさらだ。しかし、そういった本を読んできて思うことがある。彼らは、とにかく読者が気づきを得る言葉を使うのが上手なのだ。

表紙から刺激的な一冊

だったら「仕事」やめちゃえばぁ…!?』(麻雅八世著、合同フォレスト刊)は、すでにタイトルから刺激的だ。「だったらやめちゃえば?」の「だったら」の前に入る言葉は、おそらく各々の今の仕事に対する不平・不満や将来への閉そく感だろう。

そんな心のわだかまりを具現化していくかのように、畳みかけるようにして本の冒頭でもバッサリと現実を見せるのである。

=====(以下、26ページより引用)
会社に自分の時間を切り売りするということは、自分のために使える時間が減るということ。
自分のために使える時間が減るということは、自分のやりたいことができなくなるということ。
すなわち自由がなくなるということなんだよ。
もっと言えば、人生そのものがなくなっているわけだよ。
働きづめで毎日睡眠5時間なんて人、時々いるよね。
その分、自由になっている人がいるんだよ。
そう、その人の会社の社長だね。
=====

社長が本当に自由であるかどうかはさておいて、自分の時間が他人に吸い上げられているという感覚を、普段口に出すことはないとはいえ感じている人は多いのではないか。

それは「思い込み」に対してのカウンターである。自分が今まで当たり前だと無理に思い込んでいたことにドロップキックをくらわせ、今の生活のままで本当に良いのだろうかと考え直させる力をこの文章に宿しているのだ。

「2勝8敗」でも最後には成功する、著者の人生

著者の麻雅氏は大学4年生の卒業式の3日前で退学届を提出したという。就職する気はまったくなく、そのままアルバイトで貯めた70万円を使ってアメリカへ。ビジネスのタネを探しに行った。

「アメリカで流行っているもので日本にはないものを販売すれば儲かるんじゃないか」(77ページより)

約半年、アメリカ大陸をフラフラした後、今度はフォトグラファーを目指し、27歳で広告代理店の写真部に準社員として入社。経験を積んで29歳で「麻雅」として独立を果たす。31歳で広告代理店を設立し、考えていたビジネスモデルを「2勝8敗」のペースで実践していく。

時には借金が1億3000万円まで膨れ上がることもあったという。でも、そこで挑戦した化粧品販売の代理店や、英語教材の販売事業があたりビジネスを軌道に乗せた。47歳のときには自分が働かなくてもお金が入ってくる仕組みをつくり、今なお第一線で活躍している。

人生を変える「3K」

こうして麻雅氏の半生を振り返ると、紆余曲折あったことが分かる。「自由に生きるためには、これだけの覚悟と経験が必要なんだ」と怖気づいた人もいるはずだ。でも、本の中にいる当の本人はいたってマイペースなように感じる。

それは、「小さな夢や小さな目的を持つ」ことから始まり、先を見て歩き続けていっているだけだからなのかもしれない。

「気づく」
「決める」
「行動する」

これが、麻雅氏が提唱する人生を変えるステップ「3K」だ。

この3つのステップは、自分の意思が多分に反映されるものである。ようは、自分で考える力がなければ、自由にはなれないし、好きなことをして生きていくことはできないのだ。好きなことをして成功を収めた人たちが読者たちに刺激的な言葉を使うのは、それくらい強い言葉でないと、そこに気づいてもらえないからなのかもしれない。

今の会社や今の仕事に満足していれば、この本は読まなくてもよいのだろう。しかし、この書籍名に対峙したときに、「このままじゃ幸せになれないかも」「これで本当に良いの?」という想いが生まれたのならば、麻雅氏の言葉に直に触れてみてはいかがだろうか。その後に続くステップを実行できる力を得られるはずだ。

(新刊JP編集部)

PROFILE

麻雅 八世

株式会社シャレックス代表取締役。一般社団法人JPサクセス理事長。1954年、東京都狛江市生まれ。高校生のときにサラリーマンにならないと決意。退路を断つために、大学を自主退学。24歳で渡米。帰国後は東京写真専門学校に通い、27歳で大手広告代理店の写真部に入社。29歳でフリーカメラマンとなり、31歳で株式会社シャレックスを設立。広告、雑誌等の編集制作、さまざまなビジネスモデルを実践。その結果、銀行からの借金が1億3000万円となる。しかし、その後はじめた事業で借金を返済。続いて、販売を手掛けた教材が売れ、約6億円の売上を稼ぐ。現在は、講演活動のほか、能力開発&心理学のセミナーを通して多くの人に学びを与えている。また、心理学トレーナーの資格も取得し、その人に合わせた分析やアドバイスを行っている。モットーは、「時間を売らない生き方」を多くの人に広めること。

CONTENTS

  1. 第1章 キミの会社の時給はアルバイトより安いかも
  2. 第2章 このままでは大変なことになる!?
  3. 第3章 ボクはこうして時間を売らない生活を手に入れた
  4. 第4章 考え方を変えれば人生が変わる!
  5. 第5章 成功するためにいますぐやるべき12のこと

INTERVIEW

会社で正社員として働いている人にとって、給料は当たり前に毎月支払われる労働への対価だ。だが、経営者やフリーランスからすれば、「毎月お金が入ってくる」というのは幻想であって、毎月ごとが勝負となる。

『だったら「仕事」やめちゃえばぁ…!?』(合同フォレスト刊)の著者である麻雅八世さんは、大学を自主退学したあとに24歳で渡米、その後カメラマンとして広告代理店やフリーで活躍し、31歳のときに広告・編集制作の会社を起業。さまざまなビジネスモデルを考案、実践し、その後始めた教材販売事業で成功を収めたという異色の経歴の持ち主だ。

そんな麻雅さんの生き方は、限りなく能動的で、限りなく自由なように見えるが、一体どのようなことを考えているのだろうか? お話をうかがった。
(新刊JP編集部)

「難しいから2ページ読んでやめた」という本にはしたくない

著者近影

――まず、『だったら「仕事」やめちゃえばぁ…!?』というタイトルが非常に印象的ですね。

麻雅:特にこの「やめちゃえばぁ…!?」の部分ですよね。語尾に「ぁ」を付けた理由は、「提案」を込めたのが一つ、それと「指示」の余韻を残したかったのが一つです。

――このタイトルはご自身でつけられたのですか?

麻雅:「仕事やめちゃえばぁ…!?」は僕が考えました。「だったら」という言葉は実はちょっと違うものだったのですが、お世話になっている出版社の取締役から「だったら」という言葉を使ったらどうだろうと言われまして、しっくりきたので採用しました。

――「だったら」の前に自分で言葉をあてはめられますよね。このタイトルにドキッとする人は多いと思います。

麻雅:まさにそこですね(笑)。

――文体もすごく若々しいです。どのような人に読んでほしいと考えて書かれたのですか?

麻雅:決して若い人だけというわけではなく、20代から40代の仕事をしている方々に。もちろん、50代の方々にも手にとってほしいです。実際に読まれた年配の人から「もっと早く読みたかった!」と言われました。

――問いかけるような文体でとても読みやすかったです。

麻雅:僕自身そういった本が好きですし、今、出版業界で本離れが進んでいる理由に、「本が読みにくい」というものがあると感じているんですよ。いくら良いことが書いてあっても、2ページくらい読んで「これはちょっと読むのがメンドウくさいな」と思われて読まれなかったら意味はないですし。

「口あけて待っているだけの人に成長はありません」

――この本を通して伝えたかったことはなんですか?

麻雅:「時間を売らないで生きた方がいいよ」ということですね。僕は62歳になるのですが、これまで一度も「就職」をしたことがないんです。大学を退学したあとも、当時大卒の初任給が10万円くらいだった時代に月30万円以上は楽に稼いでいたし、毎日満員電車に乗って通勤している人たちを見て、「何でそんな辛いことをしているんだろう」という素朴な疑問が浮かんでいました。

それを分析していくと、彼らは自分の技術や能力を提供していると思っているけれど、実は多くの人は自分の時間を売って作業しているにすぎないんです。そしてそのまま定年退職となったときに、その後のことを全く考えられなくなって、燃え尽き症候群に陥ってしまう。そうならないための「他人に時間を売らない生き方」があるし、それは少し勉強すればいくらでも見えてくるんです。

――「社畜は奴隷や家畜よりも悲惨」という言葉は突き刺さるものがあります。ただ、社畜であることはすごく楽なことでもあると思います。

麻雅:そうなんですよね。

――社畜の何が問題だと思いますか?

麻雅:自分の会社で、与えられた仕事をこなしていて満足、または生き甲斐となっているならば、それは社畜であっても問題ないんですよ。会社の進むベクトルと自分の生きるベクトルが合致していれば、そこに満足感があるわけですからそれはそれで良いと思います。でも世の中を見ると、ほとんどの人は会社のベクトルとは違う方向にやりたいことがあって、給料のために社畜になっているように思います。それなら、別の生き方はたくさんあるはずなので気付いてほしい。

――それは会社に入って働く以外の稼ぎ方や生き方を知らないということでしょうか。

麻雅:童謡の「ほたるこい」という歌に「あっちのみずは にがいぞ こっちのみずは あまいぞ」という歌詞がありますよね。あの中に出てくるほたるは、「こっちの水は甘い、あっちは苦い」といわれても、その水を実際に両方なめてみないと味が分からないわけです。人間もそれと同じで、自分の場所が苦いのか、甘いのか分からないんです。

一ヶ所に居続けると、苦くても慣れてしまうんですよ。人間は安心と自由を求めるものですが、社畜はとりあえず安全ですし、土日だったり家に帰った後だったりと、わずかながら自由な時間がある。それに慣れてしまうのがすごく怖いことで、だんだんと行動にも起こさなくなるんですよ。

――そこから抜け出せなくなってしまうわけですね。

麻雅:成功するための習慣ってよく語られますけれど、逆に成功しない習慣もあるんですね。それをずっとやっていれば、もちろん成功はしません。習慣は誰がつくるかというと自分の中の潜在意識ですが、その潜在意識が心地よいものを習慣化します。成功しない習慣が心地よいと感じてしまったらますますそれを強化しますから、それは成功から遠ざかるだけですよね。

――麻雅さんから見て、「やりたいことをしている人」はどんな人だと思いますか?

麻雅:僕の周囲にいる人たちですね。経済的な自由があり、時間も自由に使える人たちです。

――経営者の視点から、どのような働き方をしている社員を評価しますか?

麻雅:経営的な思考を持っている社員でしょうか。アイデアが出せる人です。「俺は言われた通り働いているから、給料くれよ」という態度の人はいりません。僕は「もらう」という言葉が嫌いなんですよ。口あけて待っているだけの人に成長は多分ないですから(笑)。それに僕とはベクトルが合いません。ベクトルが合っている人は多分いずれ独立します。そのときは応援しますね。リクルート創業者の江副浩正さんみたいな感じですね。

――そういう人をどのように見分けるのですか?

麻雅:簡単ですよ。一つ質問すればいいんです。「将来やりたいことがありますか?」と。だいたいその場で具体的に答えられる人は2%くらいですね。そういう人は常にその夢を頭の中で描いていますから即答できます。描いていない人の場合、いきなり聞くとその場で作ろうとするのですが、見ていれば口だけだと分かりますよ。

ビジネスモデルを生み出す力はどう身に付けたのか?

――将来やりたいことがないという人は多いです。

麻雅:本の中にも書きましたが、日本が平和過ぎるのも原因の一つだと思います。

――だからでしょうか、東日本大震災が起きたときに、自分の人生を見つめ直したという人は多かったように思いますね。

麻雅:そうですね。人生をガラッと変えた人もいましたし。それまでは、とりあえず食べられるし、安全に暮らせていけましたから。

これから日本はすごく悪くなっていくと思いますが、そのときに自分なりの目的や目標がなければパニックになるでしょうね。

――麻雅さんが考える「大成する人」の特徴はなんだと思いますか?

麻雅:これは「大成」の定義にもよりますが、サクセスという意味で考えるのであれば、どんなタイプのサクセスでも、楽しむことに集中ができる人ですね。実はサクセスにも性格によってタイプがあり、経済的に成功を収めた人、豊かな人間関係を築けた人、努力して評価を得た人でも、皆それができています。よく人は「集中しろ」なんて言うけれど、これはちゃんちゃらおかしいですね。そもそも興味のないことに集中できるはずがありません。

――お聞きしたいことがありまして、麻雅さんはたくさんのビジネスモデルを作られてきましたよね。なぜそんなことができるのでしょうか。

麻雅:一つはいろいろ経験することですね。例えば、僕が今までやってきたビジネスの中で、唯一既存のモデルを使ったのが広告代理店業なんですが、校正やデザインなんかも自分でもやるわけです。当時はそれがビジネスだったからやっていたけれど、当時の経験があるから、こういう風に本を出すことに抵抗がないわけです。

また、当たり前を前提として始めるのか、全く新しいことにトライするのかで全く違います。いろいろなことをやっていると、一度脳を通過した経験はその段階で取りかかれますから、もちろんプラスになります。

転職しようか悩んでいる人に麻雅さんはどう声をかける?

――なるほど。では、ビジネスモデルを新しく作るときはどのようにして考えるのですか?

麻雅:心理学的な話をしますと、0からアイデアを生み出すことが得意な人はある一定数いて、まさにGoogleなんかはそういう人を採用しているわけですね。だから、革新的なことができる。私もそういう性格なのですが、その質問についてはロジカルに答えることが難しい。一言でいうなら「思いつき」「気付き」でしょうか。

日常的にやっていることは、例えば日経新聞を開いて、紙面をパッと見る。そこにある新しい情報を見つけて、裏からもイメージして、もし自分が関わるなら、どのくらい継続できるか、どのくらい規模感かを考えます。その上で、やるかやらないかはノリで決めてしまいますね。

――そういった情報をビジネスにつなげることができるわけですね。

麻雅:そうですね。ポケットがいっぱいあるんです。

――また、この本のタイトルに引っかけてお聞きしたいのですが、もし目の前に、転職しようかどうか悩んでいる人がいたらどのように声をかけますか?

麻雅:これはね、悩んでいるのならば「転職するんじゃない」と声をかけます。迷っているのなら、「転職しろ」と言います。悩むのは心の問題で、悩む姿を他人に見せることによって助言を求めるのですが、結局は何も行動しない人がほとんどです。迷っているというのは、すでに答えは出ているけれど、しがらみがあってなかなか決断できないという状態のことです。でも答えはすでに出ていますから、やれよ、と言いますね。

――悩んでいる状態で答えを出させることはしない、と。

麻雅:しないですね。それは本人にとっても、私にとっても、意味のないことですから。

――ちょうど就職活動まっただ中の時期ですが、この本は就活生にとっても刺激があるように思います。

麻雅:絶対にこの本は読まない方がいいと思いますよ(笑)。もし読むならば、自分のやりたいことがはっきりと決まっている状態で、その上で就活をしている人ならば、良いと思います。就活するしか選択肢がないという人は、その前に「本当にそれしかないのかちゃんと探してみたら?」と言いたいですね。

著者近影

――このインタビューの読者のみなさまにメッセージをお願いします。

麻雅:最初にも言いましたが、時間を売らずに生きましょう、ということですね。もっと言えば、人生を売ってはいけませんよ、と。自分の人生なのだから自分で作っていきましょう!

どんなことがあっても、その後に「エイヤ!」で決断すれば、ほとんどなんとかなります。それは年齢関係ありませんから。

(了)

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