書評BOOK REVIEW

 ビジネスシーンにおいて、服装や持ち物が印象を大きく左右すると頭では分かっていても、いざ服や持ち物を選ぶとなると、何を選べばいいか分からず困ってしまう人も少なくないはず。

 ただ、こういうことは「ファッションセンス」の問題ではなく、いくつかのポイントを押さえているかどうかが重要になります。『「結果を出す男」の服、「認められる女」の服、「その他大勢」の服』(西村有紀子/著、サンマーク出版/刊)では、「結果を出すための服選びにはセオリーがある」として、

  • 「結果を出す男」の服
  • 「認められる女」の服
  • 「その他大勢」の服

 という三つの観点から、ビジネスシーンにおける服選びについて、成功例と失敗例を紹介・解説しています。ここでは、人の印象を左右する要素のひとつである「色」に関するセオリーを三つご紹介しましょう。

■「金属の統一感」を意識する

 男性であればスーツとシャツ、女性であれば靴や鞄の色といったように、身につけるアイテムの色の組み合わせはどんな人でも気にするはずです。
 その一方で多くの人が見落としてしまいがちなのが「金属の色の組み合わせ」です。たとえば男性であれば、ベルトのバックルがシルバーであるにもかかわらず、腕時計はゴールドというような組み合わせをしてしまいがちです。これでは相手にちぐはぐな印象を与えてしまいます。

 本書によれば、金属類の色味が合っていると、相手に安心感を与えることができるそう。欲をいえば、「ベルト」と「腕時計」だけでなく、「指輪」や「鞄の金具」などの色も合わせると、さらにいいようです。

■勝負服の色の選び方

 あなたには、お客さんとの商談や交渉の場に必ず着ていく「勝負服」はありますか? もしあるとしたら、その服は何色でしょうか?
西村さんによれば、こうした場こそ、色がもつイメージを積極的に利用すべき。逆にいえば、ここぞという時の色選びを間違えるのは致命的なミスといえます。

このようなシーンに着ていく服としては。
男性…紺か黒のはっきりした色
女性…白やグレー、パステル系などのやさしい色

 などがおすすめ。
 紺や黒などのはっきりした色は「意志の強さや自信」を伝える効果があり、男性と男性が交渉する際にはプラスに働きます。ただ、女性が男性にプレゼンテーションする際に紺や黒の服を着ていると、強気すぎる印象となり煙たがられてしまうことも。その点、パステル系の色は物腰の柔らかさを連想させ、余計な衝突をすることなく、男性の懐にスッと入る上で最適な色といえます。

■「黒」が持つパワーをフルに生かすには

ビジネスシーンにおいて、「黒」は何かと使い回しがきく便利な色。色づかいについて散々迷った挙句、「無難な色を…」と黒を選んだ経験はありませんか? でも、黒をそういう消極的な使い方で終わらせてしまうのはもったいない。私たちが思っている以上に、「黒」には多くの力が秘められています。
 たとえば、黒は「謙虚さ」を象徴します。相手に対してへりくだるシチュエーション……得意先を接待するときや、先輩から研修を受けるときなどには、「黒」がうってつけ。相手に好印象を与えることができます。
 ちなみに「完璧なへりくだりスタイル」を作り上げたいときは、「無地の黒スーツ+白シャツ+紺のネクタイ」という組み合わせが最適だそう。覚えておけばいざというときに役立ってくれるはずです。

 本書では他にも、「ヒールの高さ」「ネクタイの太さ」「柄モノの取り入れ方」「スーツの素材」などで相手への印象を変える秘訣を教えてくれます。
 モノを選ぶ目に自信がないと、服もカバンもアクセサリーも買った後で堂々と着こなせません。その意味で、本書は「見る目に自信がない人」にとって教科書になってくれるはずです

(新刊JP編集部)

プロフィールPROFILE

西村有紀子(にしむら・ゆきこ)

株式会社Ar&co.代表取締役。ミスインターナショナル公式デザイナーであり、パーソナルブランディストとしても活躍中。
國學院大學文学部史学科卒業後、三井海上火災保険株式会社に女性営業の第一期生として入社。入社2年目には2000人以上の営業社員がエントリーするキャンペーンで全社第1位となる。25歳で独立後、専門学校でデザインとパターンを学び、自身の結婚を機にウエディング業界に疑問をもちウエディングドレスショップをオープン。15年連続でウエディングドレスの各誌の人気ランキング1位に選ばれる。世界四大ミスコンの審査員やドレスデザイナー等を務める。2012年ミス・インターナショナル日本代表、吉松育美さんの世界大会用の衣装を担当し、世界No.1グランプリを獲得。着た人がどう見えるかといった「効果・効能」を重視したデザインは、ドレスに止まらずザ・カハラ・ホテル&リゾートや、ヒルトン・ホテルズ&リゾートの制服などでも採用されている。また最近では、ホテル椿山荘東京や富士重工業株式会社、東京税理士会などの企業研修で「見た目が人にどのような影響を与えるか」の講演をビジネスマン向けに行い好評を得ている。 著書に『年齢逆転本』(大和書房)など多数ある。

CONTENTS 目次

  1. 「結果を出す男」 服で自分の強みを可視化する
  2. 「結果を出す男」 服をオーダーする
  3. 「結果を出す男」 スーツが体にフィットしている
  4. 「結果を出す男」 ポケットに物を入れない
  5. 「結果を出す男」 パンツがスリム

INTERVIEW 著者インタビュー

 あなたはいつも、初対面の相手の人柄をどのように判断しているだろうか。その時話した内容そのものだけでなく、話す時の表情や仕草、服装など、見た目に関する情報をもとに判断することも多いはずだ。
 もちろん、あなたがそうしているのと同じように、あなた自身も周りからのそのように判断されている。かねてから言われているように「見た目」はいいに越したことはない。

『「結果を出す男」の服、「認められる女」の服、「その他大勢」の服』(サンマーク出版/刊)の著者、西村有紀子さんは「あなたの実力に見合った評価が得られていないのは“見た目”が原因」だとしている。つまり、評価を上げたいのであれば、そのための見た目を整えればいいというわけだ。特に服装は、すぐにでも対処できるため効果的だ。
 そこで今回は、見た目の印象を変える上で即効性の高い服の選び方について、西村さんにお話をうかがった。

著者近影

―まずは本書の執筆経緯を教えていただけますか。

西村:日頃からアパレルの仕事に携わっておりますので、服については一般の方よりも注意が行くのですが、仕事で結果を出している人、成功している人、人気のある人、人間関係がスムーズな人にはビジュアルにおいて共通点があると気付いていました。そのノウハウを知っていれば、格段に仕事がやり易く、目標到達が今まで以上のスピード感で実現できるという実績もいくつも見てきました。そろそろ、それを分かり易く伝えられる本を出したいなと思いはじめたタイミングで、たまたまご縁があり出版させていただくことになりました。

―本書を拝読し、ファッションにおいて「色」という要素が果たす役割は小さくないことを痛感するとともに、「国によって、色彩感覚は異なる」という話を思い出しました。本書に書かれていること(「金属の色を合わせる」「交渉時に身につけるべき色」など)は、外国人を相手にビジネスをするようなシーンでも有効と考えて問題ないでしょうか。

西村:たしかに、色についての認識や、文化的な背景は世界各国では様々です。日本においてもかつては“紫”は天皇以外が身に付けてはいけない禁色(きんじき)と位置付けられるなど、色は階級を表す時に用いられていた時代もあったように、歴史、風俗によって持つ意味が違ってきます。本書にまとめさせていただいているのはあくまでも日本の色彩文化の認識としての共通感覚に基づいたものであり、外国を意識したものではありません。同じ色を見た時の印象は、各国の歴史的、文化的背景に寄るところが多いため、あえて日本に特化したもので書いています。
 ただし、取引先や友人など外国人と接する時はあらかじめどの国の人とお会いするのかが分かっている場合には、洋服の色形に限らず、食文化や行動のタブーにいたるまで、基本的なことは調べてそれを踏まえて面会に臨むことが望ましいでしょう。厳密に従うかは別として、相手に不快感を与えない装いというのは、場所が日本国内ではなく、特に相手の国の中である場合は、ビジネスパーソンとしてマストです。

―本書のプロローグでは、見た目を変えることにより、一年で営業成績を伸ばした男性の例が紹介されています。見た目を変えたことによる効果というのはすぐに実感できるものなのでしょうか。また、仕事の成果以外のところで効果を感じることができる点がありましたら教えていただければと思います

西村:彼の場合は、取引クライアントの担当者の対応がすぐに変わってきました。おそらく、オーダースーツが仕上がり、シャツ、ネクタイ、靴、鞄、髪型を同時期に変え、1ヶ月以内に相手からの対応が丁寧なものに変わったと実感していました。
 そして、彼は10年以上の間、彼女がいなかったのですが、外見が変わったことで自信を持った結果、それから3か月以内に彼女ができ、近々結婚もするそうです。あわせて、思い切って転職も勧めてみたのですが、結果的には年収が2倍になる外資系企業に転職が決まりました。

―本書には、「『結果を出す男』ほど、ファッションの効果を熟知して『自分が相手にどう思われたいのか』から逆算して服を選ぶ」という一節があります。
 頷ける部分がある一方で、ファッションに苦手意識を持ち続けてきた男性のなかには「自分は相手にどう思われたいのか逆算すること」を難しく感じ、「やっぱりセンスが必要なのでは…」と挫折してしまう人がいるかもしれないとも感じました。そういう人が「最初の一歩」を踏み出すには、まず何を考え、何をすべきですか。

西村:職場や、取引先、知人友人の中でロールモデルとなりそうな、職業やポジションにしっくりくるビジュアルを表現できている人物がいれば、その人の服の選び方や持ち物のチョイスを真似してみる、またはどこで買っているのか、ブランドなどを聞いてみるというのがいいと思います。メーカーやお店が特定できると、方向性を掴み易くなります。ネクタイや小物などを買う時には職場などにいるセンスのいい女性にアドバイスをもらってみることもお勧めです。

―本書では、「色、柄、形、組み合わせ、着こなし方、お手入れ方法」など、様々な観点からのアドバイスが書かれています。このなかで、最も難易度が低いもの、高いものはどれでしょうか。理由もあわせて教えてください。

西村:難易度が低い物は、形です。一見もっとも難しそうに感じるかもしれませんが、男性も女性も、体型に過不足なくピッタリとフィットしていることがポイントです。スーツはオーダーにすれば良いですし、女性も簡単なお直しに出せば済みますので、難易度は低いです。一方、難易度が高いのは、柄だと思います。機能ではなくファッション性を問う部分は好みの問題もありますので、若干難しめです。

―本書では「髪」から「足元」まで、文字通り全身どのパーツについても、気をつけるべきポイントが紹介されています。ややナンセンスな質問かもしれませんが、たとえば、これまで見た目にまったく気を遣ってこなかった30代半ばの男性が、大きく印象を変えたい場合、どのパーツから優先的に変えていくのが効果的なのでしょうか。

西村:まずは、髪型でしょう。人と会ってコミュニケーションを取る時には必ず顔を見ます。髪型は顔のフレームに当たります。髪型の印象で、誠実にも不誠実にも、清潔にも不潔にも見えます。パッと見の好感度に大きな影響を与えてくるところが髪型ですので、ここを変えることでその人の印象が劇的に変わります。
 いちど試しに「〇〇さんみたいな印象がいいなぁ」と思えるタレントさんを見つけ出し、その写真を持って、美容室を訪れてください。もちろん、頭の形や紙の質、量などによって違うので、全く同じにはなりませんが、かなりの部分で方向的に似た感じに仕上がります。
 ただし、その場合は、少し値段が高くてもセンスと腕の良い美容室を訪れることがポイントです。なぜならリクエストをしても美容師さんに腕が無いと、理想の髪型は実現しないからです。

―本書では「女性が『色』で勝負するのに対して、男性がこだわるべきは『形』」と書かれています。これはなぜですか?

西村:男性のスーツなどの場合、奇抜すぎる色は難しいです。元々テキスタイルにバリエーションが少ないこともありますが、シルエットが体にジャストフィットしていると、隙の無いきちんと感が生まれやすく、コンセプチュアルな装いが作り易くなります。
 一方、女性の服はきれいな色のものでもきちっとしたスーツやワンピースなどもあり、女性に求められる美しさ、華やかさを表現できるので、男性よりもカラーで勝負しやすい環境にあるからです。

―本書では度々、「店員さんの提案をうまく取り入れる」ことの重要性についても触れられています。そこでおうかがいしたいのですが、的確な提案をしてくれる店員を見つけるためには、どのような点に気をつければよいでしょうか。

西村:まずは、店員さんの着こなし自体がこなれていてカッコいいこと。対応が親切であること。この2点があれば大抵良い提案をしてくれます。

―本書を特に読んでほしい読者層は、どのような方ですか。

西村:服にあまり興味がなかったが、何とかしたいと思っている。いまひとつ周りと比べて仕事の成果が出ていないと感じている。もっと早く目標を達成したいと思っている。異性からの好感度を上げたい。そんな思いを持っているビジネスパーソンですね。

著者近影

―最後になりますが、本インタビューの読者の皆様へメッセージをお願いします。

西村:仕事の成果が出る。仕事がやり易い。認められやすい。高収入になる。それらを一番短期間で実現する手助けとなるのがビジュアル戦略です。最終的に人は中身が大切ですが、とっかかりはビジュアルで判断されてしまうのが現実です。
 好印象で導入部分を突破できれば、仕事の評価は変わってきます。たかがビジュアル、されどビジュアル。戦略的なビジュアル作りは、最終的には自分のマインドの変化にもつながり、今以上に自信に満ち溢れた自分自身に生まれ変われます。いますぐ取り掛かれるワンランク上の自己プロデュース法を大いにお楽しみください。
(了)