書評

 会ったこともない人や、知らない会社を訪問して、モノを買ってもらおうというのですから、「飛び込み営業」の難しさは営業マンでなくてもわかります。
 ところが、誰がやっても難しい飛び込み営業を嬉々としてこなし、実際に売りまくる営業マンが中にはいて、傍目から見ると「どうやったらそんなに売れるの?」と不思議に思えるものです。

 本書は、そのカラクリが明かされているという意味でなんとも興味深いのですが、飛び込みで売りまくる営業マンというのは、「実際に飛び込む前」にオフィスの見た目や設備から驚くほど多くの情報を得ていることがわかります。その洞察力はまさに探偵顔負けです。

自販機がある会社を狙え!

 飛び込みの営業マンが会社にセールスをかける場合、多くは社長がすべての決裁権を持っているような中小企業です。だから、飛び込む会社の「社長の性質」を、営業マンはいろいろなものから洞察します。たとえばテナントではなく、小さくても自社ビルを持っている会社であれば、まずチェックするのは「自動販売機」の有無なのだそうです。
 自動販売機はほとんどの場合、飲料メーカーの営業マンに頼み込まれて設置するものです。つまり、入口付近や駐車場に自動販売機がある会社は、営業マンにお願いされて社長がOKした証拠。
 自動販売機が2台以上あり、なおかつそれが別の飲料メーカーのものであれば、その会社の社長は「押しに弱いタイプ」だと判断できるのだそうです。

「セールスお断り」の貼り紙が意味するもの

 会社によっては、入口に「セールスお断り」の貼り紙をしてあるところもあります。
 普通ならこの貼り紙を見て、「見込みなし」と判断して退散しそうなところですが、優秀な飛び込み営業マンからすれば、これは「チャンス」。
 わざわざ「セールスお断り」の貼り紙をするくらいですから、当然その会社の社長はセールスが嫌なのですが、このケースもまた社長自身が「押しに弱い」ことを表していることが多いといいます。
 とはいえ、貼り紙がしてある以上そのまま飛び込んでみても門前払いを食うだけですから工夫が必要です。特に、「スーツにアタッシュケース」といった、どこから見ても営業マンという服装はNG。ジャンパーを羽織ったり、作業着で訪問したり、バッグではなく資料を挟んだバインダーだけ持っていくなど、通常の営業マンらしくないところを見せると効果的だといいます。

3コールで電話に出ない会社はオススメ?

 また、飛び込む前に電話をすることも、相手先の情報を仕入れるために有効です。
 たとえば、3コール以内に誰かが出るようなら、ある程度の規模があり、事務員も配置されている会社。小さな会社ほど電話に出るのが遅くなる傾向があるようです。
 そして、もし小さな会社だと判断したなら17時以降にテレアポをしてみるのがオススメ。
 こういう会社は17時以降、事務員が退社してしまい、電話対応に不慣れな従業員が電話に出ることになります。彼らはセールスを断り慣れていないため、「○○ですけど、社長いますか?」と、いかにも社長と親しい人間のような演出をすれば、あっさりと社長に電話をつないでくれることが多いのです。

 もちろん、飛び込み営業で売り上げをあげる営業マンのテクニックはこれだけではありません。相手方のオフィスや社長の外見、そして商談中、彼らはあらゆるところを観察して、手練手管を使って商品を売ります。観察力と洞察力には、営業マンはもちろん、そうでない人も純粋に感心してしまうはず。
 自分の仕事に取り入れれば、思いがけない成果を得られるかもしれません。

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