なぜ、あなたの薬は効かないのか?
薬剤師しか知らない薬の真実
定価: 798円
著者: 深井 良祐
出版社: 光文社
ISBN-10: 4334037860
ISBN-13: 978-4334037864
カゼをひいた時や、体のどこかが痛む時、あるいはお腹を壊した時など、私たちは日々「薬」のお世話になっています。
しかし、ほとんどの人は薬のどの成分が体にどう作用するかといったところまでは知らず、薬局で渡されるがまま服用しているはず。これは実はとても危険なことなのです。
「副作用のない薬はない」などと言われるように、「薬」と「毒」は表裏一体であり、現在は薬として使われているものの中には、かつて毒として使われていたものもあります。こうした薬の二面性を知っておかないと、よかれと思って服用した薬の副作用で苦しむことになる可能性だってあるのです。
■「血液をサラサラにする薬」を過剰摂取すると…
脳卒中や心筋梗塞は、血管の中に血栓ができ、脳や心臓の血管を詰まらせてしまう病気です。これらの病気の治療に使われる「ワルファリン」は、血を固まりにくくして血栓ができないようにする薬なのですが、合成された当初はネズミを殺す「殺鼠剤」として使われてきました。
私たち生物は体のいたるところで内出血が起きています。通常は体に備わっている止血作用によって、その出血はすぐに止まるのですが、「ワルファリン」は血を固まりにくくしますから、摂取したネズミは内出血が止まらなくなって死んでしまうわけです。
これは人間も同様です。「ワルファリン」を過剰摂取すると、脳出血や消化管出血などを起こすリスクが高まります。この薬は特に有効域(血液中の薬物濃度が低すぎず、高すぎず、という域。低すぎると薬としての効果がなく、高すぎると副作用が出てしまう)が狭いため、服用量を厳密にコントロールしなければならないといいます。
■元は毒ガス!?「抗がん剤」の起源
ドイツで開発され、第一次世界大戦で使用された「マスタードガス」という毒ガスも、今は抗がん剤、つまり薬として使われています。
1943年、多量のマスタードガスが積まれた船が沈没し、多数の死傷者が出るという事故がありました。この時マスタードガスを浴びた死傷者には、白血球が減少しているという目立った特徴があったといいます。
白血球とがん細胞には共通点があり、それは「増殖速度が速い」というもの。それなら、マスタードガスを使えば白血球と同じく細胞増殖が速いがん細胞も殺せるのではないか、と考えられて開発されたのが、マスタードガスと似た構造を持つナイトロジェンマスタードという抗がん剤なのです。
ちなみに、正常な細胞はあまり増殖しません。しかし、髪の毛や生殖器細胞など、活発に分裂する細胞もあるため、「増殖速度が速い」細胞を叩く性質がある抗がん剤は、こうした細胞までも破壊してしまいます。これが、抗がん剤の副作用なのです。
本書は、薬剤師である深井良祐さんが、薬が効くメカニズムや副作用、薬剤師を有効活用する方法など、知っておくと役立つ薬の知識を授けてくれます。
風邪薬や花粉症の薬など、普段何気なく服用している薬にも副作用はあり、飲み合わせによっては重大な事態を引き起こしてしまうこともあります。
本書には、そういった薬の知識が網羅されており、自分の健康を自分で守るために必須の一冊です。
【第1章】薬が作用するメカニズム
1-1 薬とは何か
1-2 受容体と酵素
1-3 病気になる理由
【第2章】どんな薬にも副作用がある
2-1 副作用のない薬はこの世に存在しない
2-2 毒と薬
2-3 風邪薬にも落とし穴
2-4 自己判断の危険性
【第3章】体の中での薬の動き
3-1 吸収と分布
3-2 代謝と排泄
3-3 効き目を予測する
3-4 薬物間相互作用、個体差、人種差
4-1 新薬と副作用
4-2 薬害とドラッグラグ
4-3 ゼロリスクの罠
【第5章】ジェネリック医薬品の利点と欠点
5-1 先発医薬品とジェネリック医薬品
5-2 ジェネリック医薬品をめぐる世界の状況
5-3 生物学的同等性
5-4 有用性の高いジェネリック医薬品
【第6章】薬剤師を有効活用するには
6-1 一般用医薬品の注意点
6-2 お薬手帳と在宅医療の意義
6-3 「対面」の重要性
あとがき
薬剤師。1986年岡山県岡山市生まれ。岡山大学薬学部卒業後、同大学院で創薬化学(メディシナルケミストリー)を専攻し、修士課程を修了。
在学時に薬学系サイト「役に立つ薬の情報~専門薬学」(http://kusuri-jouhou.com/)を開設。月110万PV以上のアクセス数をほこる(2014年2月現在)。難解な学問と思われる「薬学」を一般向けに分かりやすく解説し、情報発信を行う。
医薬品卸売企業の管理薬剤師として入社後はDI(ドラッグインフォメーション)業務・教育研修を担当。独立後、現在は薬剤師として臨床にも従事しつつ医療系コンサルタントとして活動している。