BOOKREVIEW - 書評 -

「お金持ちになったらこんなことをしてみたい」
「お金に余裕ができたらこれを買いたい」
などなど、今よりもっとお金持ちになりたいという願望は誰もが持っている。

当然、「どうすればもっと稼げるか」という発想になるわけだが、「お金持ち」からするとこの発想はまちがいだ。お金持ちになりたかったら、稼ぎ方よりも使い方に気を配るべきなのだ。

世界最強! 華僑のお金術 お金を増やす「使い方」の極意』(大城太著、集英社刊)は世界のビジネスシーンで名を馳せる「華僑」がお金に対してどんな意識を持っているかがつづられている。

たとえば、お金にまつわる以下の二択。あなたならどちらを選ぶだろうか。

■財布には「大金を入れている」?or「その日使うだけしか入れない」?

財布に余分なお金が入っていると無駄遣いしてしまうから、普段は財布に数千円しか現金を入れないという人は多いのではないか。
これは節約という意味では正しいが、「使おうにも使えないようにする」ということは「お金と向き合うのを避けている」とも言える。これではお金に対する感覚が磨かれていかない。

対して、華僑は最低でも財布に10万円は入れる。
常に大金を持ち歩くことで、急にお金が必要になった時にも対応でき、またいつビジネスチャンスが巡ってきても逃すことがないようにしているのだ。

■「自分へのご褒美を買う?」or「買わない?」

日本人はよくちょっとした贅沢をする時に「自分へのご褒美」という言葉を使うが、これはともすると衝動買いや浪費の言い訳になりがちだ。

もちろん華僑も贅沢をすることはあるが、「ご褒美」という感覚は一切ない。彼らは普段の自分よりハイレベルな場所に行ったり、自分にはまだ不相応なものを買うということを、「将来の自分のためのレッスン」だと考える。
つまり、いずれはその場所やものにふさわしい人間になるために、お金持ちの体験を買っているのだ。

■「買い物は値切る?」or「定価で買う?」

日本人は一般的に、買い物をする時にあまり値切らずに定価で買う。「いや、自分は値切る」という人も、せいぜいが近所の商店であって、ブランドショップや百貨店でも値切るという人はまずいない。「高い店では恰好をつけたい」という心理が働くからだ。

ただ、こうした場所で値切る客を、店側は「みっともない」と感じるかというとそうでもないようだ。著者の大城氏によると、高級店で物おじすることなく値切る客は、「そこそこお金を持っていて、買い物に慣れている」と判断されるという。そして「上客になる」と見なされれば値切り交渉もやぶさかではない。

いかに頭を使って交渉するか。華僑は普段の買い物からゲーム感覚でお金に関するスキルを鍛えているのだ。

本書を読むと、経済的に成功している華僑ほど、「お金をいかに稼ぐか」ではなく「稼いだお金をどう使うか」を考えることによって、「もっと稼げる自分」を作っていったことがわかる。

稼いだお金を日々何となく消費しただけでは、手元に残るものはあまりに少ない。
「毎月給料がいつの間にかなくなっている」という人は、華僑のお金への意識から学んでみてはいかがだろうか。

(新刊JP編集部)

PROFILE - プロフィール -

著者近影

大城 太

(おおしろ だい)
アジアでビジネスを展開する6社の代表。ビジネス投資家、不動産投資家、医療法人理事など活躍の場は多岐にわたる。学生時代から「社長になってベンツに乗る」という目標を掲げ、外資系保険会社、医療機器メーカーで営業スキルを磨いた後、独立・起業。

起業にあたりお金儲けを学ぶため、華僑社会では知らない者はいないと言われる大物華僑に師事。厳しい修行を積みながら、日本人唯一の弟子として「門外不出」の成功術を伝授される。独立後、医療機器販売会社を設立。社長1人アルバイト1人で初年度より年商1億円を達成。

その後、若き華僑のパートナーを得て医療機器メーカーを設立。現在は実業のかたわら、華僑の教えを学び実践する「知行塾」を主催。著書に『一生お金に困らない「華僑」の思考法則』、『失敗のしようがない 華僑の起業ノート』(共に日本実業出版社刊)がある。

CONTENTS - 目次 -

  1. はじめに
  2. 序章 人生を変えた大物 華僑との出会いと大切な教え
  3. 第1章 お金を合理的に考える
  4. 第2章 お金を道具として使う
  5. 第3章 お金の運を引き寄せる
  6. 第4章 お金の器を広げる
  7. 第5章 お金持ちと付き合う
  8. 第6章 お金で安心・安全を買う
  9. おわりに

SPECIAL - 大城太×中谷彰宏 スペシャル対談 -

スペシャル対談 写真

中谷:この本でまずおもしろいのは、「お金を使う技術」という言葉を使っているところですよね。「稼ぐ技術」とはよく言うけど「使う技術」とはあまり言わない。
お金を使うということはほとんどの人にとって「娯楽」であって、そこに技術という発想はない。そもそもお金について、多くの日本人は全般的に技術という発想が希薄だと思う。

大城:ありがとうございます。たしかに日本人はお金を扱うことを技術として捉えることは少ないですね。

中谷:お金を稼ぐということで言えば、稼げない人はよく「元手がない」ということを言い訳にします。「華僑=元々お金持ち」というイメージがあるわけだけど、実際はそんなことはなくて、元手がないところからスタートしてお金持ちになる人も多いです。

だから、元手がないからお金持ちになれないというのは間違いなんだけど、そういう言い訳を言う人の共通点として、不思議と「好きなこと」をやろうとするんです。

大城:「好きなことで生きていきたい」というのは、先生への相談や質問にも多いでしょうね。

中谷:この本にも書いてある「稼ぎ方はどうでもいい」ということですね。好きなことを仕事にしようと探している人というのは、稼ぎ方にまでこだわってしまっているわけだけど、そうなるとお金というのはなかなか稼げない。

僕の実家は僕が小さい頃から、それこそ「華僑の商法」や、「ユダヤの商法」といったことを叩き込むんです。世の中の体制がどう変わろうが、財産を没収されようが生き延びていけるように、ということで。それで最終的に行き着くのは「稼ぎ方にはこだわらない方がいい」ということです。

それと「お金の話」は「時間の話」でもあります。この対談を読んでいる人の中には、もしかしたらまだ残業して残業代が入ることでやっと生活ができているという人もいるかもしれない。でも、これに甘んじていると、いつまでも抜け出せなくなってしまう。

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大城:残業している時間で未来のためにできることがある、ということですね。

中谷:そう。残業代は自分の未来のお金をもらっているだけで、その時間に勉強することもできるし、事業を興すことだってできるかもしれない。残業は未来の可能性をお金に変えているとも言えます。

残業は基本的に1時間いくらという風に計算するから「時給労働」なんです。だから仕事の密度を薄めれば薄めるほど稼げてしまうわけだけど、薄めるにも限度があるから、一定以上は稼げない。

笑ってしまうのは、「お金持ちになりたい」という人に「いくら稼ぎたいの?」と聞くと「やっぱ時給いくら以上ですかね」って答える人がいるんですよ。お金持ちになりたかったら早く時給労働を抜け出して、人がやらないこと、人ができないことをやってお金を稼いでいかないといけないのに。

会社ということでいうと、「中国では部下が上司におごる」というのはこの本で初めて知りました。日本で取り入れるとなると、メンツの問題が出てくる。これはどうしたらいいんだろう。

大城:そこはもう、「普段お世話になっているお返しで、ごちそうさせてください」ですよね。上司のメンツは守らないといけません。

中谷:いかにスマートにおごれるか、というのも一つの力量ですね。単にお金を出せばいいわけではなくて、目上の人に対してメンツを潰すことなく、感じ悪くならないようにしないといけないわけだから。

それと、上司に限らず、自分よりお金を持っている人の行きつけの店を知るっていうのも大切なこと。それも、一度行ってみるだけじゃなくて、その場に馴染むようになるまで通ってみるというのは大事な先行投資です。

「ちょっといい店で食事をする」というだけだと時間とお金の無駄だけど、それをワンランク上の人と知り合うための費用だとか、勉強代にする意識は持っておくべきです。

大城:「お金に対する意識」ということですと、日本人の中にも意識の差はあるのかもしれません。たとえば、関西と関東でも違っていて、関西では買い物をする時に値切るのが一つのコミュニケーションのようになっているのですが、東京の人はあまり値切らないですよね。

中谷:関西はその意味では海外に感覚が近い。会社員時代、ロケでニューヨークに行ったことがあって、その時に先輩が、日本より安いからということで一眼レフのカメラを買おうとしたんです。で、僕に値切り交渉をやってくれないかと頼まれました。

ニューヨークの店で、大体日本円で6万円くらいだったんだけど、先輩にいくらくらいで手を打ちますか、と聞いたら「2万円」と。

「さすがに2万はきついだろう」と思いつつ交渉に行って、店員が「ディスカウントするよ、いくらなら買う?」と言うものだから「2万円」といったら「冗談じゃない、帰れ」と。それはそうだよね。6万円のものを2万円で売れと言っているんだから。

でもね、こちらが帰ろうとすると今度は引き留めて「5万5000円でどうだ」と言ってくる。で、こっちは変わらずに「2万」と言うと、また「帰れ」とくるわけです。また帰ろうとすると引き留められる。

こっちも楽しくなってきちゃって、交渉を続けたら2万近くまで値切れたの。で、ついに2万でどうかとなった時に、店員が上司に相談しに行ったんだけど、上司がその店員のことをすごく怒るわけですよ。「そんな値段で売るんじゃない」と。で、戻ってきて「上司がダメだと言った」と言ってくる。結局、最初から最後まで、上司が叱るのも含めて全部芝居なんだよね。

ここまでくると「値切り交渉」も一種のエンターテインメントです。だから、値切ることに抵抗を持つべきじゃないし、値切られることに抵抗を持っちゃいけない。そうやってお金の感覚は磨かれていくわけだから。

大城:確かにそうかもしれません。しかし、先生はそうやって先輩に仕事以外のところで何か頼まれることに抵抗はなかったですか。今だったらほとんどの人が理不尽だと感じて断りそうな頼まれごとでしたが。

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中谷:理不尽とは思っていなかったですね。そういう無理なお願いをこなすことで絆ができたし、工夫して解決する力をつけさせてもらえたんじゃないかな。

大城:今の時代は先輩が後輩にそういう頼みごとをしにくくなっていますよね。部下からすると「自分は会社から給料をもらっているのであって、先輩や上司からではない」ということなんでしょうけど。

中谷:僕は32歳で会社を辞めたんですけど、それまで毎年会社の忘年会の幹事をやっていた。自分なりに楽しんでやっていましたね。もちろん無償労働だけど、それが良かった。「タダ働きの楽しみ」って僕はあると思う。

忘年会は会社から予算が出るわけだけど、幹事やらスタッフは事前準備が大変だから、忘年会が終わったらスタッフだけで打ち上げをやりたい。でも、さすがにその予算は会社からは出ないから、「じゃあ忘年会で売上を出そう」となるわけ。

その場が盛り上がってなおかつ売上を作るとなると、「これはもうオークションしかない」と。ならば、みんなが盛り上がるような目玉商品がないといけない、ということでダッチワイフを買ってきて、職場のマドンナ的な女性社員から借りてきたブラウスとスカートを着せて出品したら、盛り上がった。

こういうことは、まったくのタダ働きなんだけど、こういう「仕事じゃない仕事」があるっていうのは、会社員の楽しみでもあるんじゃないかな。

大城:「先輩との絆」のお話がありましたが、やはり人間関係や人脈は「お金」という視点で見ても大切です。先生は今まで誰かに騙されたりしたことはありますか?

中谷:もちろんあります。でもね、騙される人というのは、人間関係のベースを「信頼」においているんです。こういう人は9敗しても後で大きな1勝がある。

ある老舗ホテルの話でね、お客の中には豪遊するだけして料金を払わずに帰ってしまう「スキッパー」もいると。彼らは一見してそういうことをする人間には見えないから、ベテランのフロントマンでも騙されてしまう。優秀なフロントマンほど騙される。面白いのは、そんなに優秀じゃないフロントマンはあまり騙されないんです。なぜかというと、常に「あの人怪しいんじゃないかな」と疑ってかかるから。

もちろん、あからさまに胡散臭い人に騙されるフロントマンはいないわけだけど、一見きちんとしている人に対して、信頼をベースにするという基本姿勢はフロントマンとして必要なことだから、それで騙されても総支配人は咎めない。

大城さんは経営者だけども、経営者というのは誰しも一度は騙されますよ。そこでくじけてしまう人は経営者に向いてない。

大城:なるほど。最後に「お金を増やすために必要な考え方」についてお話したいです。不景気な時ほど貯金に走る人が増えるといいますが、華僑には「お金は生きている間に使うもの」という意識があります。

中谷:お金が増えない人というのは、自分のところに来たボールを逃がすまいと抱きかかえてしまう。つまりお金が目的になってしまっている。

でも、お金というのはサッカーボールと同じで、ゴールを狙うための道具なんです。だから使って回していかないといけないんだけど、そのことを感覚的にわかっている人は少ない。だから、僕は「マイナス金利」というのはすばらしいと思いますよ。これからは、口座にお金を預けておくと毎月手数料を取られるようになるかもしれない。「お金は目的でなく道具」という観点からはこれが当たり前なんです。

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