BOOKREVIEW
書評

 起業や独立に興味はあるものの、まだ自信がなかったり、リスクが頭をかすめてしまったりして、「一歩を踏み出せない」という人は少なくないだろう。
だが、いきなり起業や独立をしなくても、実質的にそれと同じくらいの経験を積み、自分のスキルや能力を開発するための方法はある。

 それは「企業のナンバー2になる」というもの。ナンバー2になることで社長の近くで経営を学び、時には社長に代わって経営判断から末端の業務指示までを行うことができる。つまり独立・起業の予行練習ができるわけだ。実際になれるかどうかは別にして、ナンバー2を目指すことに価値はある。

 しかし、中には「学ぶべきところがない社長」、「一緒にいてはいけない社長」もいることは、働いている人であれば重々承知だろう。『No.2という働き方』(日本経済新聞出版社刊)によると、次の4タイプは一刻も早く縁を切るべき「ダメ社長」なのだという。

1. 人の意見をまったく聞かない

 誰に何を言われても、まず「いいことを言うね」と返せるかどうかが、トップの「器」を見極める一つの方法だと、本書の著者、細島誠彦さんは語る。
 これは周りの意見を無節操に聞きいれるということではなく、ひとまず意見を聞いた上で、自分の考えと照らしあわせて、最終的な決断をできるかどうかという話だ。

 たとえば、入社したばかりで事業にについて右も左も分からない新入社員が、たまたま本質を突くことを言ったとして、「新入社員が何を生意気なことを」と端から聞く耳を持たないような社長とは縁を切ったほうがいい。

2. 自信がありすぎて、勘違いをしている

 細島さんいわく、「起業して、運よくトントン拍子で来た」社長に、このタイプが多い。自分の実力を過大評価し、周りを蔑ろにしてしまうこのタイプほど、社員に対して「お前らは、オレの言うことに従っていればいいんだ」という接し方をしてしまうという。

3. 経営者として物を考えるときの視点が低い

 社員が「全社レベル」で考えたうえで発言をしているのに、社長は「事業レベル」でしかものを考えていないという話は珍しくない。こういう視点が低いタイプの経営者だと、ナンバー2がどんなに素晴らしい提案をしても理解してもらえなかったり、トンチンカンなことを言ってくるのが関の山だ。

4. 経営理念やビジョンがない

 何かトラブルが起きたときに右往左往したり、「流行り」に流されるだけの意思決定をして、うまくいかなければ、あっさり方針を180°変えたり……。
 重要な局面で、戻るべき「根本となる考え」を持っていない経営者は社員を振り回し続ける。

細島さんは、自身も数社の「ナンバー2」として実績を積み重ね、さらには経営コンサルティングとして、数多くの企業の社長と間近に接してきた経験を持つ。だからこそ、経営者の能力の「欠落」部分を的確に見抜けるのだ。

単に「ウチの社長、ダメでさぁ」と愚痴をこぼすだけの人になるか、客観的に社長の「足りないところ」を把握して、自分自身を成長させる糧にできる人になるか。起業して成功できるのはもちろん後者にちがいない。

(新刊JP編集部)

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書籍情報

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No.2という働き方

定価 :
1,500円+税
著者 :
細島 誠彦
出版社:
日本経済新聞出版社
ISBN :
4532320542
ISBN :
978-4532320546

著者プロフィール

細島 誠彦

ほそじま・まさひこ
株式会社TransamManagementSystem代表取締役。
1968年長野生まれ。1993年中央大学法学部法律学科卒。ベンチャー・インキュベーション事業の会社において、管理本部長、経営戦略本部長、CFO、取締役を歴任。退社後に起業するも破綻。上場企業(CM制作会社)を経て、イベント事業を手がけるセイムペイジグループに入社。グループ数社の取締役に現在も就任中。2012年自身の経営コンサルティング会社である株式会社TransamManagementSystemを立ち上げた。

INTERVIEW
著者インタビュー

「5年で年収4倍」を可能にする出世コース

 風邪をこじらせて、数日会社を休んでしまったが、周囲のフォローもあって、滞りなく自分の仕事は進捗した。
そんなとき、同僚に感謝しつつも「自分はしょせん替えのきく人材にすぎないのでは……」と不安が頭をよぎったことはないでしょうか。

 結果的に仕事が忙しくなることの是非は別として、職場での能力的な存在感を高めて「替えのきかない人」になることは自分にためになることです。
『No.2という働き方』(日本経済新聞出版社刊)の著者である細島誠彦さんは、替えのきかない人材になるための一つの方法として、「組織の中でナンバー2を目指す」ことを推奨しています。
細島さんがいうナンバー2とはどのような存在なのかを中心にお話を聞きました。

著者近影

――まずは、本書のキーワードである「ナンバー2」がどのようなものを指すのかをお聞かせいただけますか。

細島: 通常、「ナンバー2」と聞いたら、専務取締役のようなポジションを思い浮かべる人が多いかと思います。

ですが、本書でいうナンバー2とは、そのようなものではありません。多忙な社長の代わりに、経営判断から末端の業務指示まで行なうことができる、いわば「その人がいないと会社がまわらない」というような存在を指しています。

――細島さん自身もナンバー2の経験をお持ちなのですよね。

細島: はい、新卒で入ったベンチャー企業で、入社五年目にCFO(Chief Financial Officer:最高財務責任者)という立場へ引き上げてもらい、事業面からも会計面からも会社に強い影響力をおよぼすようになっていました。
入社時は「月収18万円、ボーナスなし」、つまり年収216万円からのスタートでしたが、CFOになったころには年収800万円を超えていました。
ナンバー2は、実質的に経営をコントロールする立場にあり、社内外から一目置かれる存在です。替えのきかない人材であるがゆえに、もらえる給料は格段に高くなるというわけですね。

決して「給料をたくさんもらうためだけに、ナンバー2を目指しましょう」と言いたいのではありません。ナンバー2を目指すなかで人材価値を高めることができれば、転職も独立も可能になる。つまり、選択肢の幅が広がるのだということをお伝えしたいのです。

――先ほど冒頭で、ナンバー2とは「その人なしでは会社がまわらない」存在であるというお話がありましたが、もう少し具体的にいうと、どういうことなのでしょうか。

細島:社長が現場出身の人で、会計のことがまったく分からないというケースで考えてみましょう。
社長がどんなに素晴らしい事業アイディアを持っていたとしても、それだけだと金融機関はお金を貸してくれません。金勘定について納得の行く説明がなければ、お金を貸すほうとしては不安で仕方ありませんからね。

そこで、お金を借りる側に「うちの会社にはこんな仕事があり、これだけのお客がいて、このようにお金が入ってくる仕組みになっているが初期投資にこれだけのお金が要る」といったような話を論理的に説明できるメンバーが必要になる。

――その説明をするのが、ナンバー2の役割だということですか。

細島:その通りです。言い換えると、このようなメンバーがいなければ、会社はたちまち回らなくなってしまう。

これまで経営コンサルタントとして数多くの組織を見てきましたが、ナンバー2がしっかりしている会社ほど組織として強いという印象があります。

――逆にいえば、「ダメなナンバー2がいる会社は組織として弱い」とも言えるのかなと思ったのですが、いかがですか。

細島:たとえば、「イエスマン」をナンバー2に置くような会社は弱い組織であることが多いですね。それもそのはずで、イエスマンをナンバー2に置くということは、社長の「人を見る目」に問題がある証拠。ナンバー2にどのような人材を据えているかを見れば、その組織の質はある程度見えてくると言えるでしょう。

誰しも反対意見は聞きたくないものですが、経営をしていく以上、答えは一つではありません。経営者は、賛成、反対含めてできるだけ多様な意見を聞いた上で意思決定することが求められます。それなのにイエスマンを身近なところに置こうとするということは、「反論を避けたい」と意思表明しているようなもの。経営者失格と言わざるを得ません。

――つまり、ナンバー2はときとして「トップにノーを言う」ことが求められるわけですね。

細島:はい。ノーを言うということは、トップと戦うことにもなるので、相当な覚悟が必要です。でも、特別な才能は一切必要ありません。経営者の判断に対して、「正しい」と思ったときは従い、「正しくない」と思ったときは、待ったをかける。

ある種、当たり前のことを当たり前に全うすることさえできれば、誰でもナンバー2になれると考えています。

ビジネスパーソンなら知っておきたい 身になる乱読術

 書店にいけば、嫌というほど平積みになっている、ビジネス書や自己啓発本。最近、低迷しがちなモチベーションを上げようと、数冊買って読んでみるも、読んだこと自体に満足してしまい、結局何も変わらず終いということはないでしょうか。
「読んで終わり」にならないため、そして何より自らのビジネススキルを高めるためにも、読書の仕方には工夫を凝らしたいところです。

『No.2という働き方』(日本経済新聞出版社刊)の著者、細島誠彦さんはビジネスパーソンとしての価値を高めるために「組織の中でナンバー2になること」の重要性を説いており、さらには「ナンバー2として必要な能力は何か」を考えて読書することで、インプットの質が上がるとしています。

細島さん自身も実践しているというその読書法についてお話を聞きました。

――細島さんの場合、「こんなナンバー2になりたい」というイメージをどのように固めていきましたか。

細島: 身近なところに目標となる人がいれば良かったのですが、残念ながら当時の私はそのような環境にいませんでした。なので、もっぱら「本」を頼りに目標イメージを固めていきました。

子どものころから歴史小説を読むのが好きだったのですが、社会人になってからも、土方歳三や孟嘗君などが出てくる書物はよく読んでいましたね。

彼らは会社を経営していたわけではありませんが、巧みに組織を作り上げていった先達です。いざ自分が組織を作っていくという局面に立たされたときに、「土方なら、こんなときどう考えて、どう動いただろう」と想像しながら仕事をすることもありました。

――「本から必要な知識を得る」という意味では、ナンバー2としての必須スキルの一つである、マーケティングの学び方についても書かれていました。細島さんの場合、どのようにマーケティングを身につけていったのですか。

細島:マーケティングについては、全体像をつかむことが重要です。でも、既存の本一冊で全体像を学ぶのは難しい。フレームワークの説明に終始したもの、様々な種類のマーケティング戦略についてだけ言及しているもの等が多いからです。

私の場合、市場─戦略─戦術という一連の流れが見えてくるようになるまで、なるべく広い範囲を扱ったマーケティング本を乱読するという方法をとりました。全体像をつかもうとするなかで、自然と細かい内容についても色々分かっていきましたね。

――ただ、本を読むだけですぐに実践できるというほど、マーケティングは易しいものではないですよね。

細島:はい、マーケティングの特性上、本を読んだだけでは、なかなか実務に反映することができません。

こればかりは実践経験を積むなかで、「どうすればうまくいくのか」「なぜ、あのときは失敗したのか」「どのように売っていくべきなのか」といったことを肌感覚で理解していくしかありません。

その過程で、また分からないことが出てきたら本を読み、そこで得た知識を実践してみる……ということを愚直に繰り返して、徐々にマーケティングの全体像を理解していったという感じです。

――ナンバー2にとって、もう一つの必須スキルである「シンプルに考える」という力を伸ばすためには、どのような学習をすればよいのでしょうか。

細島:ロジカルシンキングを身につけるのがいいと思います。この分野は良書がいくつか出ていますので、まずはそれらを2、3冊読み、書かれていることを真似しながら、実務に反映させれば、すぐに身につくでしょう。

具体的には、「一つの課題を二つの課題に分け、そこからどんどん掘り下げて考えてみる」ということをやってみる。

自分の本の中でも書きましたが、たとえば「利益を最大化する」という課題があるのなら、それを「売上を最大化する」「コストを最小化する」という二つに分ける。そして、この二つをさらにどんどん掘り下げていくのです。

このようなトレーニングを繰り返すことで、普段何かを考えるときにも、「本質的に重要なこと」が二つぐらいパッと思い浮かぶようになります。

――先ほどマーケティングについてのお話のなかで、「実践でしか学べないこともある」とおっしゃっていましたが、若いころ、経験不足であるがゆえに犯してしまった失敗はありますか。

細島:組織を引っ張っていく身として「人とは何たるか」を理解していなかったこと、さらには根拠のない自信を持っていたこともあり、人と衝突することがとても多かった。これが失敗体験ですね。

いま思えば、当時の自分は人の感情を無視して、正しいと思うことをどんどん推し進めようとしていました。でも、組織として仕事をする以上、まわりの人とある程度のコンセンサスをとることが必要です。それに、人間の感情は複雑なもの。頭では正しいと分かっていても、感情的に頷きたくないということだってあります。

そのあたりを省いて、自分ひとりの考えで突っ走しろうとしたために、私が関わるプロジェクトがことごとく「火を噴く」というような状態でした。当時の上司からは、「言い方が悪いよ」とものすごく怒られたのを覚えています。 著者近影

――最後になりますが、読者の皆様へメッセージをお願いします。

細島:「仕事がつまらない」「毎日、同じようなことの繰り返しで、将来の見通しが立たない」「もっとお金をたくさんもらえるようになりたい」「独立したい」など、今の仕事に少しでも悩みを持っている方には、ぜひ本書を手にとっていただきたいですね。特に、今の仕事にやりがいを感じられないという方には参考になる部分が多いと思います。

ナンバー2を目指すことは、このまま嫌々仕事を続けるのではなく、いままでの仕事のやり方を変えることにつながります。つまり、本書に書かれていることを参考にして、実際に動くだけで、人生が変わっていくのです。

この本をきっかけに、読者の皆様が自らの目標を達成されることを願っております。

CONTENTS
目次

  1. 序章 / なぜナンバー2を目指すべきなのか
    • 会社で最も必要な人になりたくないですか?
    • どこでも通用する人になりたくないですか?
    • ひとつのことに秀でた人?
    • つまらない毎日からの抜け出し方?
    • 自分を変える働き方?
    • なぜナンバー1ではなく、ナンバー2なのか?
  2. 第1章 / 企業におけるナンバー2とは
    • ナンバー2にはどんなタイプがあるのか?
    • 立ち上げメンバーという資格だけのナンバー2
    • イエスしか言わないナンバー2
    • 能力は秀でているが、トップのために自分を殺せないナンバー2
    • 組織のために嫌われ役を買うナンバー2
    • トップを超える器量と能力を持つナンバー2
    • ときにトップと戦えるナンバー2
    • 企業におけるナンバー2とは
  3. 第2章 / ナンバー2の仕事
    • ナンバー2のポジションと役割
    • 会社の状態を瞬時に見抜く
    • 会社が儲かる確実な方法
    • 最高のパフォーマンスを引き出す
    • 成功への導線
    • 経営を知る
    • ナンバー2を目指すべき人
  1. 第3章 / ナンバー2の持つべき能力
    • トップより高い能力
    • 未来予知能力
    • ビジネスへの直結力
    • シンプルに考える
    • 哲学と思想
    • 天からの景色
  2. 第4章 / ナンバー2の持つべき心
    • 誰でも支える~忠誠心~
    • 好きでも戦う~戦闘力~
    • ときに無関心
    • 全体を見据える
    • 2人で戦っていくという心構え
  3. 第5章 / ナンバー2になるために
    • 俯瞰的視点ですべてを見通す
    • 日々の仕事をどうすればナンバー2になれるのか
    • 常に自分の意見をまとめる
    • 広く浅く、そして深く
    • 「思い込み」が世界を変える
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