書籍情報
- 定価:
- 1200円+税
- 著者:
- 岩出 雅之 (著), 森 吉弘 (著)
- 出版社:
- 集英社
- ISBN-10:
- 4087860515
- ISBN-13:
- 978-4087860511
解説
受験やスポーツ、出世争いなど、私たちの生活は「勝負」によって優劣が決まることばかり。人が集まるところにはどうしても競争が生まれる。生きている以上、人は「勝ち負け」という評価からは逃れられないのかもしれません。
では、どうしたらいいのでしょうか。「勝ち」はともかく、負けないためにはどうしたらいいのでしょう。
本書の著者である、全国大学ラグビーフットボール選手権大会において現在、前人未到の6連覇を達成し、快進撃を続ける帝京大学ラグビー部を率いる岩出雅之監督は、負けない方法はある、と言います。
本書では、厳しい勝負を重ねてきた岩出監督が手にした、人生に待ち受けるあらゆる「勝負」に負けないための哲学が明らかにされています。
それは、難しい考え方などではありません。今日から誰もが行える「作法」として、どうしたらいいのかまで、わかりやすく解説された内容となっています。
◆まずは周りの環境を整える
石の転がった未整備のグラウンドでラグビーをしたら、勝負に勝つどころか大ケガにつながりかねません。これは、どんな勝負にも言えることで、たとえばゴミやいらない書類が散乱した仕事机では、他の人より大きな成果を出す前に、まず集中することが難しいはず。ケアレスミスで自滅することもあるでしょう。
勝負には、何の気兼ねもなく勝負に没頭できる「環境」が必要です。これを日ごろから整えておくことが大切です。
◆体調を「数値」で把握する
体調が悪いとなかなか物事に集中できませんから、多少の波はあるにしても体調を可能な限り一定に保っておくことは、「勝負」のためには不可欠です。
体重や体温、睡眠時間などは数字として把握することが可能です。これらや食事内容を記録しておけば、「自分がどんな時に調子が良くて、どんな時に悪いのか」を自分の感覚に加えて、客観的に把握することができ、コンディションを保ちやすくなります。
◆エキサイトしない、落ち込まない
体調が一定に保てるようになると、自然と精神面も落ち着いてきます。大切なのは、興奮しているわけではなく、落ち込んでもいない「フラット」な精神状態を保つこと。一時的にエキサイトすることや、落ち込むことがあっても、自分自身の力ですぐにこの「フラット」な状態に戻せるようになれれば、安定して力を発揮できるはずです。
◆「振り返るクセ」をつける
1日を終える前に、自分のその日の行動や思考を細かく振り返ると、自分が思う以上にいろいろなことを考えたり、動いたりしていたことがわかります。そしてそれらには「こうすればよかった」という反省点や改善点も必ずあることに気づくでしょう。
これを毎日続けた人と、そうでない人との違いは、時間が経つごとに明らかになっていきます。そして、いざ勝負となったらどちらが勝つかは明白です。
◆丁寧に生活する
毎日を「丁寧に生活する」ということも作法の一つです。
これは何か特別なことをしろというのではなく、むしろ当たり前のこと当たり前にするだけです。ゴミが落ちていたら拾う、人に会ったら挨拶をする、などという「当たり前」を意識して徹底するようになると、普段の自分がその「当たり前」を思ったほどできていなかったことに気づくでしょう。
ここで紹介したことは、勝負に負けないための作法の一つである「自分づくり」の基本中の基本です。
本書では、「自分づくり」だけにとどまらず「チームづくり」「人材育成」についても、ラグビー界を代表する名将の哲学が明かされており、組織で生きる人にとって最高の教材となるはずです。
目次
- はじめに
- 勝ち負けは、結果にすぎない
- 帝京大学のチームづくりは「自分づくり」から
- 作法0 常に行う「超基本」
- 「作法」とは何か
- なぜ「作法」が必要なのか
- 〔作法0〕自分をニュートラルに保つ5つの基本
-
- 環境を整える
- 身体のコンディションを整える
- マインドのコンディションを整える
- 振り返りをすぐに行う、何度も行う
- 丁寧に日常生活を送る
- 〔作法0〕では、行動の習慣化をめざすのが目標
- 作法1 自分を知り、自分をつくる
- 「幸せ」とは何か
- 幸せの第一段階「授かる幸せ」
- 幸せの第二段階「できる幸せ」
- 自己実現こそ「できる幸せ」の究極の形
- 幸せの最終段階「与える幸せ」
- 「自分づくり」は「自分を大切にする」ことから
- 余裕ができなければ周囲が見えない
- どのように「自分づくり」を進めるか
- 自分の強みと弱みを把握するには
- 自分の「ニュートラルな状態」を知る
- 自分を見つめることは難しい
- 感性をくするぐるところから始めよう
- めざすのは「気骨」のある人間
- 「気骨」に必要なもの
- 〔作法1〕では、余裕を生むことが目標
- 自分づくりの次は仲間作り
- 岩出雅之×森吉弘 対談1
「時代が変わっても、人間の本質は変わらない」~現代の若者像とは? - 対談の前に―編集部より
- 人は今も昔も変わらない
- 「今の若者は~」という言い方は間違っている
- 「ハングリーであること」は、人間の本質
- 自然に移行できるような環境を設定する
- 人間の本質は変わらない。ただアプローチが違う
- 作法2 「負けない」極意
- 「負けない」極意とは何か
- 勝ち負けで大切なこととは?
- 「負けない」状態とは何か?
- 勝ったときでも考える
- 「真ん中に立つ」ことの大切さとは
- 悲観と楽観は同じ線上にある
- 悲観的に準備し、楽観的に実践する
- 気迫と集中力があればいい、というわけではない
- マニュアルに沿って行動しながらも、マニュアルにとらわれない
- ピンチを楽しむ心境とは
- 「瞬間」を楽しむ
- 見えないことを気にし始めるとプレッシャーになる
- 過去を手放して、未来を見据える
- 心の体力をつける
- 相手を知る
- 相手よりも少し上を目指す
- 気迫をつくるトレーニング
- 感情だけではダメだが、感情がなくてもダメ
- 作法3 「負けない」仲間づくり
- 社会が求めることとは
- 「仲間のため」の落とし穴
- その行動は、「献身」か「貢献」か
- 勝者の裏にはたくさんの敗者がいる
- 勘違いするリーダーとは
- しっかりした行動の手本をつくる
- 余裕をつくる
- 隙間を埋める
- 「リスペクト」を捉え直す
- 尊敬のジャージ
- 楽しく、厳しく、そして温かく
- 意識するのは、仲間との付き合い方
- 岩出雅之×森吉弘 対談2
リーダーに求められるのは「マメであること」~リーダーシップとは? - 「俺についてこい!」というリーダーは時代遅れ?
- 誰でもリーダーになれる。なる可能性がある
- リーダーを選ぶ段階から、仲間づくりがスタートする。
- リーダーに必要な、もっとも大切な能力とは?
- リーダーの新しい形とは何か
- 作法4 長い人生で「負けない」ために
- 「自分で考える」ことの大切さ
- 5W1Hを意識して、行動を振り返る
- 「考える→わかる→できる→楽しい」のサイクルを続ける
- 「想像」と「創造」は違う
- 人生を25年区切りで考える
- プランニングがあるから「過去」に意味が生まれる
- 勝ってもいい、負けてもいい
- 心の逃げ道をつくる
- 守ることは4つだけ
- 〝ねんざ〟をしないで生きる
- 誠実な人は、最終的に必ず力をつける
- 岩出雅之×森吉弘 対談3
「未来に続くキャリア」はどうつくる?~本物のキャリアとは? - 20代のキャリアは、40代50代のための〝支度〟
- うれしさも、悔しさもエネルギーに変えられる
- 「負けない」ために必要な強さを身につけるには?
- 必要なのは、自分の「できること」を探すこと
- 社会で求められる知性は、計画と挑戦から生まれる
- おわりに
- 今回の敗戦で見えてきたこと
- この負けが、未来の準備に変わる
- 厳しさだけが、真の強さをつくるわけではない
著者プロフィール
岩出 雅之
帝京大学ラグビー部監督
帝京大学医療技術学部
スポーツ医療学科教授
1958年生まれ。和歌山県出身。1980年日本体育大学体育学部卒業。同大ラグビー部ではレギュラー、主将。1978年全国大学選手権優勝の原動力となった。高校ラグビー日本代表監督を経て、1996年より帝京大学ラグビー部監督。2009年、全国大学選手権で優勝。創部40年目にして初の大学日本一へ導く。以来、現在まで全国大学選手権史上初の6連覇を達成。2015年2月の日本選手権大会1回戦では、社会人チームのNECに勝利。悲願だった「打倒トップリーグ」を達成した。
森 吉弘
帝京大学総合教育センター准教授
帝京大学八王子キャンパス
就職・キャリア支援委員会副委員長
1967年生まれ、愛知県出身。1993年、慶應義塾大学経済学部卒業。NHKにアナウンサーとして入局、2008年まで勤務。1992年、大学在学中に後輩を集め、就職はもとより、長い人生で「自分だけの生き方」を見つけるための学びの場「森ゼミ」を立ち上げる。23年目の現在も国内外でゼミを展開、社会で活躍できる人間の育成に尽力。帝京大学では2008年より「森ゼミ」で培った教材を活かし、キャリアやコミュニケーションをテーマに講義・ゼミを受け持つ。