ネットからリアルへ
O2O(オー・トゥー・オー)の衝撃
決済、マーケティング、
消費行動……すべてが変わる!
著者: 岩田昭男
定価: 1,680円(税込み)
出版社: 阪急コミュニケーションズ
ISBN-10: 4484132184
ISBN-13: 978-4484132181
- PART 1 O2Oの覇者を目指して、ウェブ事業者の激突が始まった
- CHAPTER 1 「端末基点マーケティング」のすすめ
- CHAPTER 2 「楽天」VS「アマゾン」、いよいよ始まった頂上決戦!
- CHAPTER 3 躍進する共通ポイント「Tポイント」
- INTERVIEW 1 日本人の半数が利用者。史上最強の共通ポイント誕生!
- CHAPTER 4 O2Oという大きなうねり―― ヤフー・ジャパンの挑戦
- INTERVIEW 2 O2Oの核になるのはヤフー・ウォレットだ!
- PART 2 O2Oで変わる、買い物の現場と決済業界
- CHAPTER 5 O2Oで変わる業種、変わらない業種
- CHAPTER 6 決済視点で読み解くO2O時代―― 決済は販促マターになる
- CHAPTER 7 O2O時代を牽引する新盟主たちの実力
- CHAPTER 8 スマートフォンを読取機で使う仰天発想――次世代のジョブズが描く未来
- CHAPTER 9 O2O時代のクレジットカード会社のあり方
- CHAPTER 10 O2O時代の賢いカード選び――カード+電子マネー+アプリ
ここ数年で、自分の買い物が変わったと感じている人は多いだろう。
ネットから割引クーポンを入手して実店舗で使ったり、実店舗で買い物をしたことで貯まったポイントをネットショッピングで使ったりと、消費活動において、ネットとリアルの壁はどんどん薄くなっている。
この状況をもたらしたのは、言うまでもなくスマートフォンの普及だ。
情報端末としての機能に加えて、それ自体で決済ができるため、ネットとリアルを自由に行き来する消費活動が可能になった。
ここに、大きなビジネスチャンスを見出したのが、ウェブ事業者たちだ。ネットショッピングの隆盛で収益を上げた彼らは、その勢いでリアル市場に進出しようとしている。
これがいわゆる「O2O」だが、言いかえると「リアルでの消費活動をいかに自社のサービス内に囲い込むか」ということに他ならない。
今回は、本書からそのための各社の戦略を紹介する。
■ ネットショッピングの雄、Amazonの弱点
ネット書店としてスタートし、今では食品や生活必需品まで揃えるAmazonだが、ネットでつかんだ顧客をどのようにリアルに送り込むかという点に関して、まだはっきりとした戦略を打ち出せていない。
弱点となっているのが、自社でクレジットカードを持っていない点。自社でクレジットカードを持っている楽天が、顧客にポイント面での好待遇を提示できることを考えると、遅れを取っている感は否めない
最近ではJCBと提携し、OkiDokiポイントでAmazonの商品を購入できるようになったが、同社のリアルへの進出はまだまだこれからだろう。
自社で開発し、好評を集めている、タブロイド型端末キンドルをその足掛かりとしたいところだ。
■ ポイント重視の楽天
前述の通り、楽天の強みは自社でクレジットカードを発行していること。この「楽天カード」は楽天市場、楽天トラベル、楽天オークションなど、グループ内のサービスを使うことでポイントが貯まり、次の買い物で使うことができる。日にち、曜日ごとに変わるポイント倍率やお得な情報をメルマガで告知するなど、細かい工夫も目を引く。
また、スマートフォンでクレジット決済ができる「スマートペイ」や、リアル店舗でもポイントが貯まる「共通ポイント化宣言」など、ネットからリアルへの取り組みで、楽天は次々と独自性のある戦略を打ち出しており、今後に注目だ。
■ ネットショッピングで掴んだ顧客を、ソフトバンクのスマホでリアルに送るヤフー
日本を代表する検索サイトを持つヤフー・ジャパンの柱はヤフー・ショッピング、ヤフー・オークション。ここで掴んだ顧客を、ソフトバンクモバイルと共同で提携するリアル店舗に送るモデルを確立している。
決済するカード会社としてJCBとクレディセゾン、ポイント事業者としてTポイントを運営するCCCと、有力企業と提携していることも強みだ。
ヤフー以外のサイトでもネットショッピングの支払や報酬の受け取りに使えるヤフー・ウォレットは、今後リアルでも使えるようになる予定ということで、もし実現したら大きな反響を呼ぶに違いない。
リアル進出を巡るウェブ事業者たちの競争はこれからますます激しくなるはずだ。
本書には、各社のユニークな戦略や取り組みが、関係者へのインタビューと共に取り上げられており、にわかに盛り上がっているこの新しい市場への理解が深まるはずだ。
もちろん、いち消費者として読んでもいいが、新たなビジネスチャンスを探しているビジネスパーソンやマーケターは特に得るものが多いはずだ。
(新刊JP編集部)
月刊誌記者などを経て独立。流通、情報通信、金融分野を中心に活躍するジャーナリスト。IT・ソフトウエアに関する評論や書籍を著すほか、クレジットカードについては25年来取材を続けているテーマであり、セミナーの講師も数多く務める。「岩田昭男の上級カード道場」で情報発信を続けるほか、All About(オールアバウト)の「クレジットカード」のガイドを務める