書籍紹介
突然ですが、『論語』という書物についてどんなイメージを持っていますか?
「高校の漢文の授業で出てきた昔の偉い人が、なんだかためになりそうな難しい話をしている話でしょ?」
「論語を好んで読んでいる人なんて、真面目で堅物な人か、もしくは暇を持て余した老人くらいしか想像つかないよ」
このくらいのイメージかも知れません。
確かに、いきなり「論語」を読むのはハードルが高いでしょう。しかし本書、『論語物語』は今までとは全く異なる本なのです。
もう一度言いましょう。本書は、「論語」を学術的に現代語訳した多くの本とは全く違っています。どの点が違うか。それは、孔子の言葉からイメージを豊かに広げて、「新たな」物語としてリメイクした作品なのです。
そのため、難解で読みづらかった「論語」が物語形式で楽しく読めます。時に、皮肉とユーモアたっぷりの孔子の言葉が心を打ち、時に孔子にたしなめられる弟子の姿に共感を覚えるでしょう。
「論語」や中国の古典が好きな人にとっては新たな発見を得ることができるでしょうし、逆にその方面に明るくなく、原文では辛いという人には入門の一冊として最適です。
そして何よりも、価値観の混乱した現代において、人生に迷い、もっと考えたいと思っている人にはお勧めの一冊なのです。
なぜなら、乱世のなかでの鋭い人間観察から築き上げた孔子の思想の真髄を伝えようと紡ぎ出された物語は、人生に対して、けっして観念的ではない新たな示唆を与えてくれるのですから。
著者プロフィール
下村 湖人(しもむら・こじん)
作家、教育者、教育哲学者。
1884年、佐賀県に生まれる。17歳ころから「内田夕闇」の筆名で文芸誌に投稿し、年少詩人として全国的に知られるようになる。1909年、東京帝国大学文学科を卒業し、1911年、母校の佐賀中学校で教鞭をとる。唐津中学校長などを歴任したのち、日本統治下の台湾へと渡った。台中第一中学校校長、台北高等学校校長となり、1931年に教職を辞任。1933年、大日本青年団講習所長に就任し、在任中に小説『次郎物語』の執筆を開始する。1937年に講習所所長を辞任し、文筆活動と全国での講演活動に専念、昭和前期の青少年社会教育に大きな影響を与えた。1938年、「論語物語」を出版。1955年、逝去。主な著書に、『現代訳論語』『この人を見よ』などがある