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解説

 職場の同僚や上司、学校のクラスメイトなど、誰でも身の回りに一人か二人くらいは、「この人は器が大きいなあ」と感心してしまう人がいるはずです。
 そういう人は、同じ場所にいるだけで安心できたり、不思議と言うことに説得力があったりと、際立った存在感があるもの。そんな魅力的な人は、普通の人とどこが違うのでしょうか。
 『超一流の、自分の磨き方』(太田龍樹/著、三笠書房/刊)は、言葉ではなかなか表現しにくい「人間的魅力」について、その正体を解説してくれます。それによると「器の大きな人」には、こんな特徴があるそう。どれもできそうでなかなかできないことですが、マネをしてみたら自分の魅力がアップするかも……!

「悪役」になることを恐れない

 誰だって人から好かれるに越したことはありません。でも、部下や後輩の成長のためにあえて厳しい言葉をかけたり、上司からの無理な要求にNOを突き付けたり、時には嫌われたり憎まれるようなことをしないといけないこともあります。
 自分の評判が落ちるのを恐れている人は、こんな時に「悪役」になることができません。いい格好ばかりしようとする人と、普段はいい人だけれど、必要とあれば悪役にもなれる人。どちらが魅力的かはわかりますよね?

「多様性」を受け入れる

 自分の考えに固執して人の意見を受け付けない人、誰もが異なった背景を持っていることを理解しようとしない人は困りもの。こういう人は「人間的魅力」とは対極です。
 他者への思いやりも、やさしさも、言葉の説得力も、あらゆることは「自分とは価値観も考え方も違う人の主張を受け止める」ことから始まります。だから、これができない人は、他人にやさしくすることも、説得することも、勇気づけることもできません。
 「自分が正しい」と思うと人の意見が耳に入らない人はあちこちにいます。自分の考えを持ちつつ、他の人の考えも取り入れられる人になりたいものですね。

ユーモアを決して忘れない

 誰かに何かを説明したり解説する時、あまりに真面目で通り一辺倒すぎると、相手が退屈してしまいます。そして退屈してしまったら、大事な説明も頭に残りません。コミュニケーションにはやはり適度なユーモアが必要なのです。
 生真面目な人ほどユーモアが苦手だったり、ユーモアを軽視していたりしますが、それでは対人関係で不要な摩擦を生むことになりかねません。ユーモアとは人の魅力そのものであり、物事をうまく運ぶために必要な能力。苦手だからといってそのままにせず、少しずつでも身につける努力をしておけば、いつか必ず身を助けてくれるはずです。

自分の「掟」を持っている

 いつでも自分らしく自然体でいる人は魅力的で、無理に自分を飾ろうとしないからこそ個性が際立ちます。こういう人ほど「これは絶対やらない」「これは毎日する」といった「自分のルール」「自分の掟」を持ってるもの。これがあるからこそ自分を見失うことなく、嫌なことは嫌ということができます。
 反対に、「自分のルール」がない人は、自分を律することができません。そうなると、その場の空気に流されてしまったり、嫌なのにノーが言えないということが出てきてしまいます。
 自分なりの魅力を出していくために、「これだけは守る!」という「自分の掟」を作ってみてはいかがでしょうか。

 『超一流の、自分の磨き方』では、「人間的魅力」を形成する「信念」や「折れない心」「存在感」といったテーマが有名人や偉人の事例を交えて解説され、「魅力」という言葉で説明しにくいものの正体が見事に解明されています。
 人間的魅力は何をするにしても土台になるもの。自分をいっそう高めるためにも、知識や技術だけではなく「人としての魅力」についても目を向けてみてはいかがでしょうか?

(新刊JP編集部)

目次

1章
こんな「人間的魅力」を磨く
2章
この「信念」をつくる
3章
こんな「折れない心」を育てる
4章
この「存在感」を高める
5章
この「人間関係力」を伸ばす
6章
こんな「充実感」を得る

プロフィール

太田 龍樹

1972年、東京都生まれ。
明治大学法学部卒業。ソニー生命保険(株)ライフプランナー。
NPO法人ザ・エンターテインメント・ディベート「BURNING MIND」理事。
数々のディベート大会で優勝し、現在、そのノウハウをビジネスパーソン向けに公開。
これまで企業・官公庁・大学などで、のべ一万人を指導している

インタビュー

――超一流の、自分の磨き方』についてお話をうかがえればと思います。この本では「人間的魅力」という漠然としたものの正体が説明されていてとても勉強になったのですが、太田さんが「人の魅力」について着目されたきっかけについてお聞きできればと思います。

著者近影

太田: アリストテレスは『弁論術』で、「ロゴス(論理)」「パトス(感情)」「エートス(人柄)」という説得のための三つの観点を考察しています。「人間的魅力」というのは三つめの「エートス」に近くて、要は話し手に対する信頼や安心感によって説得力が増すということです。「ロゴス」と「パトス」に比べて「エートス」の部分の話は、実は世の中にあまり流布されておらず、それについて考察された書籍も少ないので、私が取り上げることには意味があると考えた次第です。

――太田さんはディベートの専門家として、ビジネスパーソン向けにディベートのノウハウを指導されています。やはりディベートでも、説得力のある人というのは「人としての魅力」の部分も秀でているのでしょうか。

太田:ディベートはルールの中でやるものなので、正直ディベートに強い人が「人間的魅力」もあるかというと、そうとは限らないと感じています。一方で実社会に目を移すと、ビジネスの現場・交渉事には、基本的にルールはありません。そういう異種格闘技的な環境の方が「人間的魅力」が説得力に結びつきやすい。私はファイナンシャルプランナーでもあるので、その仕事でお会いする人々は非常に魅力的な人が多い。そういう魅力的な人ほど、やはり仕事でも成果を出しています。
個人的には、ディベートもより実社会と融合する形に変わっていくべきだと思って、私は“新しいディベートのあり方(ネオ・ディベート)”を提唱しています。

――「人間的魅力」の構成要素である「信念」についての章が特に印象に残りました。「信念」の大切さはわかっていても、それを貫き通すのは難しいことです。特に、嫌なことにノーが言えない人は多いと思いますが、こういった人にアドバイスをいただけますか。

太田:正直、信念というものは40代になって初めて芽生えればいいのかなと思います。というのも、20代、30代といった若いうちから信念を持とうとすると、周りの人々に、偏屈で意固地に取られるケースが多いのです。
そのうえで、「ノー」と言えない人へアドバイスをするとしたら、「理由を明確にすることを心掛けてください」ということに尽きます。なぜ「ノー」と言うのかという理由こそが、他者(周り)のことを考えている証(これを、他者意識を持つ、と言います)です。今ここで自分が「ノー」と言うことが全体の利益につながったり、相手にとって良いことだと示せれば大義が立ちます。「ノー」が言えない人はこの部分をあまり考えていないケースが多く、だから、周りの支持を得られないのでは、と考えています。

―― 大義が立てば「この人がノーというのも無理はない」となるわけですね。となると、大事になってくるのは「言葉の力」ではないですか?

太田:その通り、言葉の力は絶対的に重要です。感受性や価値観、教養などその人のバックグラウンドはすべて言葉に表れますから、「言葉の力」は即、「人間的魅力」につながっていきます。
ボキャブラリーも含め、そういった「言葉の力」というのは、人と会ってコミュニケーションすることで磨かれていきますから、人間関係はやはり大事なのです。

―― 今、「教養」という言葉が出ましたが、太田さんは「教養」も人間的魅力につながるものとして書かれていますね。これまで「教養」に縁遠かった人がこれからそれを身に付けるなら、どんなことから始めればいいのでしょうか。

太田:個人的には、「国語」と「歴史」が教養の2大アプローチだと考えています。まず国語は何をやるにしても基盤で、コンピュータにたとえるなら「OS」なので、間違いなく重要です。そして、歴史についても、先人達の様々な営みを知ることで、その営みを自分の活動へのヒントにできますから、こちらも大事ですね。
ただ、今から受験勉強をするというわけにはいかないでしょう。
どうやって国語と歴史を学んでいくかということですが、手っ取り早いのはテレビを観ることだと考えています。特にBS放送ですね。地上波では放送しないような歴史番組やインタビュー番組が多いのです。歴史番組を見ていれば、興味を持った時代や人物にまつわる本を買って読んでみようという意欲が出てくるものです。また、インタビュー番組でインタビュアーがどのように質問をしているのかを観察することは、国語力を高めるすごくいい勉強になります。
この本では、芸能人や有名人のエピソードを交えて「人間的魅力」について解説しているのですが、エピソードについてはBSの番組からの引用や、ヒントになったところがいくつもあります。

―― 特に歴史は、経営者が好んで学ぶイメージがあります。彼らは歴史に何を見ているのでしょうか

太田:人間心理は昔も今も変わりません。たとえば戦国武将が部下をどう動かしていたのかを知ることが、自分の仕事に活きるということはあるでしょうね。
それと、歴史というのは栄枯盛衰で、永遠に続くものはないことを教えてくれます。栄えたものは必ず滅んでゆく。その曲線を見て自分を戒めたり、逆に、どん底にいる場合、ここからトップに登りつめてやろうと決意することも、歴史は教えてくれるものだと思っています。

―― 「アウトローの魅力」についても書かれていました。近年いわゆる「異端」とされる人が減っておとなしい人が増えたと言われていますが、「異端であること」は個人として目指すべきものなのでしょうか。

太田:決して「異端であることを目指しなさい」というわけではなく、私が言いたいのは「自分が持っている個性が、人とうまく交わらない場合もある」ということです。
自分が持って生まれたものや本当にやりたいことが、他の人と衝突することは珍しくありません。むしろ、衝突は当たり前だと思った方がいい。そうやって人と違う自分でいること、あるいは人と違うことをやること自体、周囲から異端だとみなされることもあるはずです。そういった衝突を恐れずに、「どうやったら人と違うことができるか」を積極的に考えて頂きたいのです。それこそが「アウトローの魅力」につながってくると考えています。

―― 同じく「人間的魅力」を構成する「存在感」に関してですが、自分が能力に見合った評価を得られていないと不満を抱く人は多いものです。このように過少評価されてしまう原因としてどんなことが挙げられますか。

太田:身も蓋もない言い方かもしれませんが、どれだけ「政治」を意識できるか、ということだと考えています。
社会に出て働くとなると、年齢も背景も経験も違う人たちの中で仕事をせねばなりません。
自分が正しいと思っていることを言ったとしても、相手が同意してくれるとは限らないし、人によっては正論を言うほど不快に思う人だっているかもしれません。
「政治」という言葉を使いましたけど、要は「自分は周囲からどのように思われていて」「どうしたら周りの人が自分を認めてくれるのか」を考えなさい、ということです。
自分の周りにAさん、Bさん、Cさんがいたとして、それぞれ性格が違うわけで、まずは一人一人がどんな人かを見極めないといけません。それができれば、「Aさんには直接モノをいうより、Bさんから言ってもらった方がいい」「Cさんとは直接コミュニケーションをとるべき」という風に自分が評価されるためのコミュニケーションがわかってくる。お釈迦様も言っています、「人(ニン)を見て、法を説け」と。そうやって影響力を高めていけば、存在感が出てくるものです。
それと、今自分が置かれている環境だけがすべてではない、ということもわかって頂きたいですね。どんなに周囲の人々のことを理解しようとしても、必ずしも、あなたを理解してくれない周囲があるかもしれない。ダメなら他の場所に移って、心機一転頑張ってみる、という選択肢を考える視点も大切です。

―― 口数は多くないのに不思議と存在感がある人がいます。こういう人は他の人とどんなところが違うのでしょうか。

太田:またまたですが、「政治」をいかに意識できるかでしょうね。存在感のある人は他の人と何が違うのかというと、大概、とにかく一度交わした約束は絶対に守る人たちです。それが積み重なるとどうなるか。相手もこちらの頼みごとを聞かざるを得なくなるんです。西郷隆盛はその典型で、約束を絶対に破らないから、自分の頼みごとも聞いてもらえた。
約束を守るには行動が伴います。なんとしても約束を守ろうとする行動を繰り返していくと、相手も「こちらも行動で返していかないといけない」という状況になってくる。そうなったら勝ちです。自分の行動が相手にどんな効果を及ぼすかを考える、というのも一種の政治だと思います。
政治というと、面倒でドロドロしたものだと思われがちですが、学校にも会社にも、人間が集まる場所にはどこにでも政治は生まれます。だから、うまく利用していかねばならないのです。

―― 最後になりますが、読者の方々にメッセージをお願いできればと思います。

太田:この本が出来上がった時、私は3人の方に読んで頂き、感想をもらいました。 一人目は、定年間近の小学校の校長先生でした。「超一流とはいかなくても、『超二流の、自分の磨き方』なら自分には書けそうな気がする」と謙遜されていました。これは40代以上の読者にとって素晴らしい示唆で、この本を読むことで自分なりの人生訓を、独自に作ってやろうではないかといったきっかけにして頂きたいのです。
二人目は30代のやり手の編集者。「具体的な事例が多くて、やる気にさせられる」という言葉を頂きました。本のプロが見て、読むに値するエピソードであると言ってもらえたことは、読者にとって、有益である証左だと思います。
最後の一人は、高校3年生の若者です。「とにかく、わかりやすい。今後この本で書かれている困難が自分にも待ち受けているだろうから、その時にもう一度開いて読んでみたい」と言ってくれました。高校生でも、わかりやすく読んでもらえる本は、どんな年代の人にも読みやすい本だと考えています。
このように、様々な年代の人々が、それぞれ自分に役立つポイントを見つけてくれたことは、出版前にすごい自信になりました。

この本は「人間的魅力とは何か」について、50項目にまとめたものなのですが、本当は88項目・500ページ近く原稿を書きました。読者にとって、より役立つものに、そして面白いなぁと言って頂けるよう、約半分にカットして、その分密度の濃い本に仕上げました。
「人としての魅力」について、わかりやすく楽しく理解できると思いますので、ぜひご堪能頂き、ご自身の人生に、生活に活かして頂きたいと切に願っています。

(新刊JP編集部)