「宝くじで1等が当たったら…」。そんなことを考えたことがある人は少なくないはずです。しかし、もし1等があたったとして、本当にそれで幸せな生活を送ることができるようになるのでしょうか。「お金は人を狂わす」、そんな言葉を耳にしたこともあるはずです。
どうして、人はお金に惑わされ、狂わされるのか。それは、お金との向き合い方を知らないから。
『The Money 7つの原則 ~私たちは幸せなお金持ちになるために生まれてきた~』(サンクチュアリ出版/刊)の著者である竹井佑介さんは投資の世界で日夜、お金というものと向き合ってきた人物です。
今回、新刊JP編集部は竹井さんにインタビューをおこない、お金との正しい付き合い方を中心にお話をうかがいました。
(インタビュー・構成:神知典)
― 本書を執筆した動機について教えてください。
竹井:
お金の基本は「信用」であるということを知っていただきたいということですね。というのも、自分の銀行口座残高の範囲内だけで人生計画を立ててしまう人が少なくないように思うんです。
― それは一体どういうことですか?
竹井:
今は口座残高が少なくても、銀行などをふくめ、周囲からの信用を集めることができれば、自分の会社や事業を興すことは可能です。つまり、お金持ちになることと、世の中から信用を得ることはほぼ同じなのです。
もし、思うようにお金が集まらないのなら、「まだ世の中から信用を得られていないんだ」と考えるべきです。お金には水のような側面があって、高いところから低いところへ流れて、行き着くべきところに行き着く。本当に意義のある事業やプロジェクトであれば、お金は自然と集まるはずなんです。
ただ、だからといって自分の貯金残高を上げなくてもいいという話ではありません。残高は信頼の指標ですから、もし思うようにお金が集まらない場合は、「あなたは何かを変えるべきだ」というメッセージとして受け取るべきでしょう。
― 「何かを変えるべき」の「何か」とは、具体的にどういうものなのでしょうか?
竹井:
大まかに二つのパターンがあります。まずは「新しいやり方を模索しなさい」というもの。もうひとつは「一馬力から多馬力へ飛躍しなさい」というものです。
― 「新しいやり方」は分かるのですが、「一馬力から多馬力へ」とはどのような意味なのでしょうか?
竹井:
これは、多くの人の力を借りなさいということです。自分ひとりでがんばっても、物事は大きく発展しませんから。
― お金からのメッセージに気づき、人生の方向性を立て直している人に共通してみられる特徴はありますか?
竹井:
感謝の気持ちを持っていることです。それが薄れて、周囲に失礼な態度ばかり取るようになると、お金も遠ざかっていきます。
お金はこれまで様々な人の手にわたり、巡り巡ってあなたのところにやってきました。例えば、10円玉を見ていただくと、「昭和50年」と書いてある。つまり、このコインは40年にわたって、たくさんの人を喜ばせてきたわけです。その流れの果てに自分がいるということを考えれば、自ずと感謝の気持ちが湧いてくるのではないでしょうか。
― そうした人たちがいる一方で、お金に執着して失敗してしまう人もいます。その執着心はなかなか拭えないものだと思いますが、どのように対処すればいいのですか?
竹井:
「お金がないことは不幸せだ」と思う人もいますが、お金のありなしを幸せの基準にしてしまうと、どうしても執着せざるを得ません。さらに問題なのは、そう思っている人の多くは、自分がお金に執着しているとは感じていないことです。
ですが、お金を持つことと幸せはイコールではないですよね。お金と自分の目標や指針と切り離せている状態を、私は「お金に対してニュートラルである」と表現しています。
― ニュートラルになると、どのような行動をするのでしょうか。
竹井:
お金の使い方が変わりますね。アンドリュー・カーネギーさんは「金持ちのままに死ぬことは不名誉なことだ」という言葉をのこしていて、実際、カーネギーホールの寄贈をはじめとして、事業で得た利益をどんどん世の中へ還元しました。
稼ぐことも重要ですが、それ以上に「どう使うか」が重要です。「鶏が先か、卵が先か」という部分もあるんですが、「世の中のために使いたい」」と思っているうちに、気づいたらお金への執着を手放せていたということはあり得ると思います。
― 竹井さんご自身でもそういった経験はありますか?
竹井:
私は熊本の天草出身なのですが、裕福になるにつれて、「自分がいまここにいるのは、地元のおかげ」という気持ちが強くなり、結果、地元に寄付するようになりましたね。
いま、天草は急激に過疎化が進んでいます。実家に帰るたびに、家族や友人から地元の窮状を聞かされることが増えました。そこで、家族への仕送りから始まって、神社の復興費を出したり、最近では「花火大会の開催費が足りない…」という話を聞いたので、数十万円ほど寄付したり、昨年は地域振興のために500万円ほど寄付しました。
― 本書のキーワードのひとつに、「富保有意識」というものがあります。これはどのような意識なのでしょうか?
竹井:
お金のパワーをコントロールする意識です。
― 本書には、自分で富保有意識を測る方法について書かれていますが、ここで具体的な測り方を一つ、教えていただけますか?
竹井:
そうですね、「過去何かを諦めたときのストレスレベル」というものがあります。自分がこれまでに諦めた夢や目標について振り返ることで、その人が耐えられるストレスレベルを明らかにするのです。
例えば、まわりにいる起業家志望の人を見ていると「もう少しがんばれば成功できるのに」というところで努力をやめてしまうケースが多いなという印象です。理由は「家族から反対されて」とか「借金するのがこわくなった」などそれぞれなのですが、途中で何かを諦めてしまった人のその後を見ていると、一見異なるシチュエーションでも、よく見ると同程度のストレスレベルがかかると諦めてしまうことが分かります。
つまり、人それぞれ耐えられるストレスレベルの上限が決まっている。ところがこれは「ストレスレベルが低いなら、高くすればいい」と簡単にコントロールで きるようなものではないと思っています。
― では、富保有意識は基本的に変動しないものと考えたほうがいいのですか?
竹井:
そういうことではありません。「これまでに人生を激変させた決断と行動」によって富保有意識は測れますので、逆に言えば今後の決断と行動によって レベルを上げることができます。人生は「選択したこと」と「選択しなかったこと」によって決まりますが、何かを選択することには常にリスクがつきものです。言い方を変えれば、リスクのとり方によって人生が決まる。そこで、自分のこれまでのリスクのとり方を振り返ることで、その人なりの富保有意識が分かるのです。こういった決断力や判断力というのは、場数を踏むほど精度は上がっていき、またチームを作ることによってより高い富保有意識を構築することができます。
― では、竹井さんの富保有意識のベースとなっているお金の価値観は、どのように育まれたのでしょうか?
竹井:
不漁のためものすごく貧しい時期があり、親や周りの大人たちはお金持ちを妬む発言をすることが多かったんです。そのせいか「お金持ちは悪」と思うようになりましたね。また、生活の苦しさゆえに喧嘩が絶えないという悪循環も目の当たりにしていたので、子ども心に「いつかいっぱい稼げるようになって親に仕送りしよう」と自分以外のために稼がなければならない理由があったことも大きかったです。
でも、こうして振り返ってみると、お金の価値観はいくらでも変わるものだと実感しています。ネガティブなイメージを持った時期があったからこそ、色々な経 験を重ねるなかで「お金自体に良し悪しはない。増えたり減ったりした状況をどう 捉えるかが重要なんだ」と強く思えるようになった気がしますね。
― お金にネガティブなイメージを持たなくなったきっかけはありますか?
竹井:
21歳のときに、ある大企業でたまたまアルバイトをすることになったことが縁で、その会社の副社長と知り合ったんです。その方は当時、福岡を拠点に仕事されていたのですが、地元の人が困っている姿を見つけると、地域でバザーやチャリティイベントを開きそこで集まったお金をポンと渡して支援をしていた。それが一度や二度ではなかったんです。その方と出会っていなかったら、いまだにお金持ちに対してネガティブなイメージを持ちつづけていたかもしれません。
お金にニュートラルでいると、ポジティブとネガティブ、どちらの方向にも自分を傾けられるんです。そして、この両面を深く知ることこそが、上手に付き合っていく上で重要なのかなと思いますね。
― 最後に、読者の皆様へメッセージをお願いします。
竹井:
お金は、どこからでも集まってくる可能性があるということを知っていただきたいですね。いま手元にお金がないからといって、まったく卑下することは ありません。色々な人が力を借したくなる計画を立て行動すればいいだけの話なんです。自分のこれまでを振り返っても、お金がなかったからこそチームができて、自分の力以上の仕事ができたという面もありましたから。お金は必要な時に必要なところへ必要な額だけ集まってくるものなのです。
(了)