BOOK REVIEW 書評
「行列のできる法律相談所」(日本テレビ系)をはじめ、弁護士たちが法律について分かりやすい説明をしてくれるテレビ番組が人気になり、ずいぶん弁護士という存在は身近なものになりました。
しかし、何かあったときにすぐに頼れる“かかりつけ”の弁護士がいるという人は、少ないのではないでしょうか。私たちの日常生活の中には、常に訴訟リスクが孕んでいます。ぼったくり、痴漢冤罪、隣人問題、離婚訴訟など、挙げればキリがありません。
『頼る力 99%のトラブルが解決! かかりつけの法律相談所へ』(合同出版/刊)は、もしものことがあったときに、どう弁護士に頼るべきかを、都城上町法律事務所支配人である吉田章美さんが執筆した一冊。自分に合った弁護士の見極め方や、相談する際に気を付けるべきことなど、初めて相談に行くときに知っておきたいポイントが丁寧に解説されています。
遺言状に名前が書いてあっても…弁護士を立てずに敗訴
「訴訟」と聞くと遠い世界のように思える人も多いでしょう。ところが、訴訟のタネは至る所に埋まっているものです。
本書によれば、日本国内で争われている民事訴訟の地裁判決は年間で約6万5000件にものぼるそうですが、そのほとんどはありふれた日常の中で起きたものです。本書で挙げられているケースをいくつか紹介しましょう。
例えば遺産相続の場面で、親族同士が揉めて泥沼化することがあります。
養子であったものの遺言状にも遺産相続人として名前が書かれていたAさんは、他の遺族から不当を訴えられ、弁護士を立てずに裁判で争うことになります。相手方はしっかりと弁護士を立て、次第にAさんを追い詰めていき、結果的にAさんは遺産を相続できない結果になるのですが、吉田さんに言わせれば「力士と小学生が同じ土俵で戦うようなもの」。遺言状に名前が書いてあるとはいえ、法律の専門家に勝つことはそうできません。
また、交通事故に遭遇したときに、弁護士に相談したことで保険会社から1.5倍の損害保証金を得られたケースもあるそうです。
法律は私たちを守るものであるとともに、時には敵になって襲いかかってくるときがあります。そんなときに頼りになるのが弁護士という存在であり、彼らとの付き合い方を知っておくことは非常に大事なことであるはずです。
ただ、いざ弁護士に相談する際に「本当にこの人でいいの?」と不安にかられることもあるでしょう。「弁護士は経験値の高さがポイント」「弁護士選びもセカンドオピニオン」など、弁護士の選び方についてもしっかり教えてくれます。
弁護士に相談するかしないかで、天と地ほど結果が変わってくることがある以上、ノウハウを知り、うまく弁護士に頼るのが得策だといえるでしょう。本書を読めば、弁護士や弁護士事務所の存在がより身近に感じることができるはずです。
CONTENTS 目次
- まえがき
- 弁護士に相談するのは後ろめたいことですか?
- 「頼る」ことで、絶望が希望に変わる瞬間
第1章 人生は「頼り方」で9割決まる
- ひとりで耐えるのは美徳ではない
- 今なぜ「頼る力」が必要なのか
- トラブル解決はその道のプロに頼るのが正解
- 小さなトラブルも相談を
- 不毛ないさかいの幕引きは法律の達人にお任せ
- 弁護士に相談するのは恥ずかしいことではない
- 弁護士の使命は人権擁護
第2章 かかりつけの弁護士を持ちましょう
- かかりつけ弁護士に相談するとモヤモヤがスッキリ
- 個人商店主やフリーランスにもかかりつけ弁護士が必須
- かかりつけ弁護士はボヤを大火事にしない
- 人ごとではない! 100万円の借金が1000万円に?!
- ある日突然、訴えられたら?
- 犯罪から身を守るには、法的な知恵をつけるしかない
第3章 頼りになる弁護士、頼りにならない弁護士
- 弁護士はどこで探すの?
- 弁護士を選ぶ基準は自分との相性
- 弁護士によって得意分野がある
- 女性は女性の弁護士に相談するほうがいい?
- 弁護士選びもセカンドオピニオン&サードオピニオン
- ドラマみたいに口達者な弁護士ばかりじゃない
- 弁護士は経験値の高さがポイント
- Column 「イソ弁・ノキ弁・タク弁・マチ弁・ブル弁」とは?
第4章 もしも“法律カフェ”があったら
- カフェでおしゃべりするように、気軽に法律事務所へ
- 相談前に揃えておきたい4つのもの
- 1 弁護士への質問メモを用意する
- 2 時間経緯のメモを用意する
- 3 人間関係図を用意する
- 4 証拠になりそうなものを持参する
- 弁護士にはどんどん質問しましょう
- 気になる弁護士費用について
- 着手金とは?
- 成功報酬(報酬金)とは?
- 経済的利益とは?
- 示談、調停、裁判――段階ごとに着手金が必要
- 「着手金+成功報酬」以外の費用とは?
- タイムチャージ制
- 手数料制
- 完全成功報酬制
- 弁護士報酬が払えないときはどうするの?
- 加害者に弁護士費用を払ってもらえないの?
- 弁護士は途中でチェンジできるの?
第5章 離婚から相続、借金問題まで、相談は百人百様
- 訴訟のタネは身近に潜んでいる
- 戦い方を知らないと、1億円の相続もゼロに?!
- 交通事故は弁護士に頼むと、もらえるお金が1・5倍に?!
- 保険会社は弁護士に勝てない?
- 和解金でゴネると損をする?
- 自己破産するとどうなるの?
- 弁護士が代理で交渉する任意整理
- 過払い金は弁護士に相談すると本当に戻ってくるの?
- 借金で自殺を考える前に弁護士に相談を!
第6章 こんなに簡単にお悩み解決!~トラブル解決事例10~
- トラブル事例① 〔債権回収〕先物取引でだまし取られた退職金を取り戻せ!
- トラブル事例② 〔債権回収〕取引先から不良債権を回収せよ!
- トラブル事例③ 〔共同経営解消〕顔も見たくない相手と無事に和解
- トラブル事例④ 〔借金〕住宅は手放さずに民事再生で債務が5分の1に!
- Column 赤ちゃんを元夫から取り戻せ!
- 「水利権」を奪回せよ!
- トラブル事例⑤ 〔相続〕不当相続を是正して、平等に配分!
- トラブル事例⑥ 〔相続〕遺産独り占めを企んだ弟に負けない!
- トラブル事例⑦ 〔離婚〕夫の不倫でドロ沼離婚へ
- トラブル事例⑧ 〔離婚〕無口な夫の反乱、熟年夫婦の離婚劇
- トラブル事例⑨ 〔借金〕10年来の借金が時効でゼロに!
- トラブル事例⑩ 〔交通事故〕弁護士に頼んで事故の損害金が大幅アップ!
終章 もっと頼って楽になりましょう!
- 司法試験を学び続けた10年
- 人生は思い通りにならないからこそ楽しい
- 弁護士は法律に頼って人を守る法の代理人
PROFILE プロフィール
都城上町法律事務所 支配人
1949 年、大阪府富田林市生まれ。高校卒業後、日本勧業銀行(現みずほ銀行)に就職するが、1年半後に大阪教育大学に入学し、教員免許を取得。
卒業後、大阪の公立小学校の教員を5年間務める。28歳で弁護士と結婚。出産後、教師を辞め、育児をしながら夫の法律事務所を手伝う。
弁護士として夫を支える存在になるため、司法試験の勉強に邁進するが、7年後に断念。その後、メンタルヘルスのカウンセラーの資格を取得。法律とメンタルヘルスの知識を生かし、現在は宮崎県都城市にある夫の法律事務所の支配人として活躍。