―まず、本書『「旨い」仕事論』を執筆するきっかけから教えて頂けないでしょうか。

永田雅乙さん(以下、永田) この本は私にとって3冊目になるんですが、本当に自分の書きたいことを書きたいなと思ったんですね。
もちろん今までの2冊も書きたいことを書いてはいます。ただ、少し納得がいってないのも事実で、1冊目(『リアルマネーとハートマネー』)は出版できた満足感はあるのですが、私が口述してライターさんが書くという口述筆記という形で書きました。でも、みんな一生懸命書いているのに、そういう出し方は良くないと思いまして、2冊目(『あたりまえだけどなかなかできないサービスのルール』)は逆に自分の手で書いたんです。この本は2万部ほど売れたんですが、ちょっと編集の方や出版社さんの言うことを聞きすぎた感がありまして(苦笑)。
で、読み返したときに、一般の方々からはどう見られているんだろう、という疑問があるんですね。自分は外食コンサルティングとしてのキャリアも長いし、業界でもトップにいますが、外食コンサルティングって、一般的な目からいえばニッチじゃないですか。だから、今回は一般の方々に向けて書きたいと思って執筆しました。

―Amazonのレビューを見てみると、「切り口が斬新」「シリーズ化して欲しい」など、非常に好意的な声が多いのですが、それらの声をどう受け止めていらっしゃいますか?

永田 シリーズ化については、ゴマブックスさんに企画書をもっていったときは、ちょっと極端ですけど『「旨い」仕事論』の10巻までを書いてもっていったんですね。そうしたら、「10巻まで出すには難しいかも知れないけど、シリーズ化を前提に出しましょう」ということになりまして。なので、実は『「旨い」仕事論 2』が3月末に出るんですよ。

―読んでみると、普通のビジネスパーソンの方も非常に学べる内容ばかりだと思いました。

永田 私はいつも本を書いているとき、悩みがあるんです。それは、どうしても本が書店の料理のジャンルか業界コーナー(外食産業)の棚に置かれてしまうんですよね。いろいろな方に読んで欲しいのに、気づくと、料理本の棚にあるんです。
本書は特にそうなんですけれど、いつも一般の人に役立つことを意識しながら書いているんですが、「一般の人にも役立ちますね」と料理関係の本だと思って読まれているとショックですよね。書き方とかタイトルの付け方は考えないといけないなと思っています。

―本書は鉄人・道場六三郎さんをはじめ、天才中華料理人・長坂松夫さん、若手のフレンチシェフ・北岡飛鳥さんのお三方のお話が載っていますが、それぞれの印象を教えて頂けますか?

永田 3人とも長い付き合いですので、第一印象からかなり変わっているかも知れないんですが、道場さんはとても謙虚な方ですね。私に対しても敬語ですし、いつも勉強、修行とおっしゃいます。長坂さんは本当に気が良い方です。人間的に深くて、相手のことを思いやり、立場を重んじながら接してくれます。北岡さんは私と同い年なんですけど、すごく自由奔放で優しいですね。

―永田さんが思う本書の魅力はどういう部分にあると思いますか?

永田 今回の本は90分で最後まで読めるように書いたのですが、読者が1メッセージでいいから、一生心に残るようなメッセージがあればいいと思って書きました。だから、雑誌の対談より重く、本よりは軽いという印象を受け取ると思います。
あと、この3人ってジャンルは和洋中、全員それぞれ違うし、年齢もバラバラですよね。だから言っていることもそれぞれ違う。でも、私はどの人も言っていることは全部正しいと思っているんです。その人にとっては紛れもなく「正解」なんですから。その「正解」は十人十色で、人によって合う、合わないがあっていいと思うんですね。
だから読んでいる方は、この本には3人で計45個の格言を載せているんですが、その中から自分のとって合う格言を見つけて欲しいと思いますね。

―永田さん自身が仕事をしている中で見つけた「旨論」はありますか?

永田 私は「たらいの水の法則」という考え方を大事にしています。たらいに水が入っている状態で、「水を自分のほうに集めてください」と言われたとき、どうします? 多分、多くの方は自分のほうに寄せようとするんですよね。ただ、そうすると、向こう側にどんどん水は逃げていって、前よりも少なくなります。逆に逆方向に水を押してあげると、自分のほうに水が倍になって戻ってくるんです。
つまり、自分成功をしたいのであれば、自分の成功を追い求めるよりも周囲にいる人の成功の手助けをするということが重要なんです。自分が笑顔でいたいのであれば周囲の人を笑顔にしたりね。だから、その「たらいの水の法則」は意識していますね。

―どんな方に本書を読んで欲しいと思っていますか?

永田 基本的には20代後半から30代の男性に読んでもらおうと思って書いています。でも途中から女性や普段本を読まないような方も意識して、手に取りやすいようにしました。表紙もソフトですよね。いいデザインでしょ?

―3月末に出版予定の『「旨い」仕事論 2』ではどんな方を取り上げていらっしゃいますか?

永田 今回は3人を取り上げましたか、次回は4人になります。あと、今作の反省点もあるので、それを生かしてインタビューをしているのと、実は、今回取材をしているときに写真のカット数が足りなくなって。もともとあまり写真を使う予定ではなかったんですよね。だから、その部分も計算してやっています。それだけでもさらに良い本になっていると思います。
メンバーは、まずフレンチ料理の老舗店「シェ・イノ」の井上旭シェフ。「乃木坂神谷」「銀座神谷」の天才和食料理人の神谷昌孝さん。で、中華が若手で、女性で、自分でお店…「美虎(みゆ)」というお店をやっていらっしゃる五十嵐美幸さん。あとはパティシエで、川島なお美さんと結婚された鎧塚俊彦さんですね。この4人を取り上げています。

―最後に、新刊JPの読者のメッセージをお願いできればと思います。

永田 今、不景気などで精神的に楽な世の中ではありません。けれども、人生、生きるためにはどうしても働かないといけませんよね。そうなったとき、やはり仕事はやりがいのあるものであったり、楽しいものに変わらないと、自分が幸せになることができないと思うんです。
例えばモチベーションの上がり下がりの振れ幅が小さくなって平穏に暮らせるという状態は、1つの幸せのポイントであると思います。そういうとき、(モチベーションが)落ちる振れ幅を抑えるには、確固たる理念や心の支えになる言葉がいくつあるかがポイントになります。
こんなときこそ先輩方の教えや他の業界の人たちからの学びが大事になると思うので、気楽に本書を読んで、自分の軸を太くするための言葉を得ていただけたらと思います。

―ありがとうございました!

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旨い仕事論/本イメージ

書籍情報

  • 書籍名:旨い仕事論
  • 出版社:ゴマブックス
  • 著者名:永田雅乙
  • 価格:1,365円
  • ISBN-10: 4777112195
  • ISBN-13: 978-4777112197

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目 次

  • まえがき
  • 第一章 和
  • 最強の鉄人、
    そして現代の名工 道場六三郎
  • 第二章 洋
  • フランス料理の新潮流、
    三ツ星レストラン修行最長記録
    保持 北岡飛鳥
  • 第三章 中
  • 22歳で総料理長に就任、
    天才中華料理人 長坂松夫
  • おわりに