新刊JPトップ > 特集 > 新刊JP FEATURING 小西正行『だから、社員がやる気になる!』

インタビュー

今日は宜しくお願いします。今回で3冊目の著書となりますが、経営者向けの本ということで、 まずは本書を書かれたきっかけを教えてください。

「今の時代っていろいろと暗い話題ばかりじゃないですか。不況とか、経済危機っていわれていて、経営者にとってマイナス情報がすごく多い。そうなると、どんどんネガティブな情報ばかりがすり込まれていって、最終的には経営者のモチベーションが下がってしまうんですよね。こういうご時世だからこそ経営者自身が元気にならないといけないんですが、結局やる気がない自分がいるわけです。経営者が元気がないと、組織、社員も元気がなくなるんですよね。「じゃあ、何でやる気がないの?」と問いかけると、その理由が必ずあるはずなんです。

で、そういった状況で自分の会社、1つは住宅リフォームの会社なんですが、そちらは設立以来 12年連続増収なんですよ。じゃあ、どうしてそういうことが可能なのかと考えたときに、それは自分が描いた願望であるとか、ミッションが社員にちゃんと行き渡っていて、理念が社員の潜在意識に刷り込まれているということが重要だと思ったんですね。その理念が、社員のやる気につながっている。そういう環境ができているからこそ、12年連続増収が達成できたのではないか、と。
私の会社は12年前に設立したんですが、まさしく平成大不況の真っ只中ですよね。なので、最初は中途採用も、やる気を出させるために、給与体系でモチベーションをあげていた頃もあったんですが、やっぱりダメなんですよね、それだと。今は理念やミッションを会社全体と共有していて、だからこそ皆がやる気になっているんだと思うんです。
最近、理念経営が再確認されている時代になっていますが、私の会社も理念がしっかり行き渡っていなかったら社員はやる気にならないと思いますね。そのためのノウハウや実践していることを本書にまとめています」

例えが悪いのかも知れませんが、戦後の日本は「みんなで日本を盛り上げていこう!」というミッションがあって、経済成長を果たしました。でも、今の日本は全体的に一人ひとりがバラバラになっていて、全体のミッションがありませんよね。でも、実は日本だけじゃなくて、企業、組織、チームといったところでも同じ傾向が出ているのかなと思ったのですが。

「それはあると思います。日本は第二次世界大戦でアメリカに負けて、GHQの占領下に置かれて。で、食べ物もなくて、『豊かな生活が欲しい!』といって必死に働いたんですよね。その結果、昭和40年前後から、東京オリンピックや大阪万博があって、新幹線が出来て。そういった中で産業が急成長して、田中角栄の日本列島改造論もその頃ですよね。でも、皆、ミッションを共有していた。
でも、現在はそれなりにやっていたら生きていける。そういう時代の風潮が、バラバラにしてしまっているのかなという気もします」

本書にもありますが、成長のあとに転換期というのがあって、そこで何かしらのアクションを起こさないと伸び悩んでしまうということがありますよね。

「やっぱり、ずっと上昇していくことはまずないと思うんですね。会社として、今の時期は伸びているからいいけれど、どこかで変わらなければいけない。どんなものでもそうですが、変化しきれなかったら衰退するんですよね。それが上手く変化できたら次のステージにあがっていけるし」

本書を読んでいて理念の共有はすごく重要だと思ったのですが、やはり大きな組織になってくると、同じ価値観を全員で持つというのは極めて難しいと思うんですね。そういう中で、組織とチームが一丸となる上で最低必要条件はありますか?

「確実にいえるのは、ミッションとか理念の存在ですね。経営する目的です。設立当初はお金儲けでいいと思うんですが、例えば業界自体が傾いてしまったりすると、お金が儲からなくなる。そこで目的が消えるんですよね。
伸びている会社は1つ、どこかのプロセスでその理念に共感できる仕組みを作り上げています。そうすると強いですよね」

そうなると、やはり理念に共感できるかどうかは採用のときに深く関わってくると思うんですね。本書にはそういう視点から具体的な採用戦略が書かれていますけど、この戦略方法を考え出したきっかけは?

「実はね、私、以前は社員の給与明細見せながら面接やってたんですよね(笑)」

いいんですか、それは(笑)!

「もちろん許可は取りましたよ(笑)。面接に来た人に「1年目の社員でもこんだけ貰えるんや」って言いながら面接してね(笑)。売り上げ至上主義の頃はそれでよかったんですが、やっぱりそんな結果がすぐ出せる人間なんていないわけだし、そうなると全体としてやる気がなくなっていきますよね。
で、理念経営に切り替えてから、どんなにスキルがあっても、技術が高くても、会社の理念に合わなかったら採用しないというところに切り替えたんですよね、採用も。すると、大分変わりますよね。あとは、入社後もそういうモチベーションを切らさないために朝礼とか行っていますし、あとは『コミュニケーションブリッジ』という冊子を使って社員教育をしています」

本書では、「社員1人1人のビジョンが大切」ということも述べられていますが、小西さんはどのようにしてご自身のビジョンを考えたのですか?

「24歳のときに、初めてナポレオン・ヒルの『成功哲学』という本を読んだんですよ。それがきっかけですね。それまで私は、高校を卒業してからずっと職人をやってたんですよ。下請けとかでね。で、とりあえず、毎日頑張ったらどうにかなるかなと思っていて、全く将来のビジョンとか考えたことなかったんですよね。仕事の目標や目的もあまりなくて、当時もう結婚はしていたんで、家族の生活を支えるという目標はありましたが、本当にウロウロしていたんですね。でも、そのナポレオン・ヒルの『成功哲学』を読んで、そこに書かれていたことにすごく感銘を覚えたんです。それは、全ての人がやっていたことが1つあって、それが「明確なビジョンを持っていた」ということなんですね。それが何年何月何日までにこうなるということを全員が思っていた、と。あ、自分はそれがないな、と思って」

そこからビジョンを持つ大切さに気付いた、と。じゃあ、もしその言葉に出会わなかったら、今の小西さんは…

「間違いなく今の自分はなかったですよ。あの本に出会わなければ」

ビジョンというのは経営者にとって最も重要ですよね。

「やっぱり、経営者の願望や夢以上には会社は大きくならないんですよね。それこそ、『だから社員がやる気になる』ではないですけど、経営者たる自分が『こんなことやりたい!こんなことやりたい!』とメモにたくさん残して言うんですよね。そのやりたいことに社員が共感して着いていく、と。社長があまりモチベーションが高くなくて「30億いけそうだけど、目標はほどほどにしとこうか」とか言っていると、働いている社員も、「え?いいの?」って感じでモチベーションが上がらないですよね」

現在は不況で、いろんな企業が経営難に陥っているといわれています。特に中小企業は波風がすごいと言われていますが、そういった中小企業が、この経済危機を乗り越えるためにはどうすればいいですか?

「私は、この不況は100年に1度のチャンスだと思っているんですよ。本当にですよ。だから、今年だけでも5店舗新たに出店しますし。
でも、周囲を見てみると、この不況をチャンスに思わずに、何もしない会社ってすごく多いんですよね。人材採用1つとってみても、大手のリストラ社員とかが新たに職を探そうとしていて、すごくいい人材がフリーになっていたりするんですよ。これは新卒も中途もです。
景気が良くなったら中小企業なんて見向きもされませんから、今、採用をやってなかったらアウトですよね。また景気がよくなったら、人はとれませんよ。それに今の時期は景気がよくないから、いい人材も条件面で折り合ってくれることがありますよね」

本書には「いつもチャンス!」ってありますよね。あれはすごく印象的な言葉でした。

「そう。いつもチャンスなんですよ(笑)。不況とあまり関係のない業界の人も、その波に押されて「今は動いたらアカン時期や!」ってなっているでしょう。
でも今こそ次を見据えて活動しないといけないんですよね。そういった会社は必ず伸びます。不況だから、じゃなくて不況だからこそ、です。だから、私は「100年に1度のチャンス!」っていうんですよ」

小西さんの会社ではこの「100年に1度のチャンス」をどう捉えていますか?

「今年は出店攻勢かけていますよ。あとは新卒の新入社員も30人、グループで40人強採用します。これは来年度に入社する子たちですね」

すごいですね(笑)。でもそういう姿勢だからこそ、社員もやる気が出てくるんでしょうね。では、本書を読んで欲しい方々は?

「一番はやはり経営者の方々ですね。さらに細かく言うと、経営理念がない会社とか理念をつくったけど、活用していない会社です。
やる気が出ているかどうかは理念、目的ですよね。それがあると、次にその目的をどう達成するかの計画。そして、こんな風に達成していきますよという戦略が必要です。その計画と戦略が社員に見えてないと、やる気がなくなるんですね。ビジョンがないということか、ゴールがないということになりますから。
理念もビジョンもなかったら、社員はゴールがないから自分のやっていることは分からなくなります。だから、計画が大切ですよね。計画と戦略と目標が全部あるから、頑張れる。それがないと社員にやる気にはなりません。企業経営の武器の1つが理念経営です。だから、なんとなくお飾りで理念をもっている会社の経営者に読んで欲しいと思います」

読者へのメッセージをお願いします。

「これまで多くの社員と関わってきて、1つ、経営理念というものを重要にやってきました。その中で、やる気になるモチベーションがやる気になる理由と言うものが経営理念とすごくリンクしているな、と思ったわけです。理念はやる気になる理由になれば、失う理由にもなる。そうした、12年間の経験を細かく書かせてもらっています。
やる気はモチベーションだと思うんで、動機付けってものをどんな金銭的動機付けなのか、理念的動機付けなのかってことをしっかり書かせてもらっていますので、是非読んでみてください」