だれかに話したくなる本の話

川上未映子が『春のこわいもの』で書いた逃れられないオブセッション

『春のこわいもの』(新潮社刊)の作者・川上未映子さん

劣等感や恐怖、過去の失敗への後悔や虚栄心。
どんな人にも、思考や行動の隅々にこびりついて、暗に人生の筋道を定めているようなオブセッションがある。それらはあまり人に言えるようなものではなく、心に秘めたままでいることも多い。自覚していないこともある。

川上未映子さんの新刊『春のこわいもの』(新潮社刊)は、何歳になっても、人生の状況が変わっても、決して逃れられない個人的なオブセッションを様々な人の視点から書いた作品集だ。今回は川上さんにインタビュー。この本で書いた「こわいもの」について語っていただいた。

春のこわいもの

春のこわいもの

こんなにも世界が変ってしまう前に、わたしたちが必死で夢みていたものは――

感染症が爆発的流行を起こす直前、 東京で6人の男女が体験する、甘美きわまる地獄めぐり。ギャラ飲み志願の女性、深夜の学校へ忍び込む高校生、 寝たきりのベッドで人生を振り返る老女、 親友をひそかに裏切りつづけた作家……
かれらの前で世界は冷たく変貌しはじめる。
これがただの悪夢ならば、目をさませば済むことなのに……