だれかに話したくなる本の話

“知の巨人”がプロデュースした本屋

京都にある恵文社一乗寺店という書店は、とにかくユニークな書棚を作る。
 普通の書店の棚―いわゆる本の形態別(単行本、文庫、新書etc…)に分かれているような棚ではなく、テーマごとに、ハードカバーもソフトカバーも文庫も新書も一緒くたに並べられるのだ。

 筆者が初めてそこに足を運んだとき少し戸惑いを覚えたが、すぐに慣れると、とても本が選びやすいことに気づいた。書店員がお客に本当に読んで欲しい本を並べるという気概が感じられた。

 さて、場所は変わって、東京駅からすぐの丸善丸の内本店。その4階にある「松丸本舗」も、それに負けないユニークな書棚が展開されている。

 書評ブログ「千夜千冊」や『多読術』(筑摩書房/刊)などで知られる松岡正剛氏によってプロデュースされた「松丸本舗」という空間には、テーマ別に古今東西、様々な本がこれでもかと並べられているが、その幅はやたらと広い。古典文庫が燦然と並べられているすぐ脇に、少女コミックが置いてあったりする。
 一瞬、「なんだこりゃ」と思うが、ああ、そうか。マンガとか小説とか思想書とか、そういったジャンルで普通は本を分類するが、そのテーマやメッセージは1冊1冊違う。マンガと小説でも同じメッセージを発していることがある。そうしたジャンルの垣根を超えて、知のネットワークを構成しているのだ。

 『松岡正剛の書棚―松丸本舗の挑戦』(松岡正剛/著、中央公論新社/刊)は、その松丸本舗の魅力を、写真を多用してあますことなく伝える1冊。しかし、それだけではない。松岡正剛氏のお勧め書籍300冊、佐藤優氏、東浩紀氏との対談など、本好きが徹底的に引っかかるような仕掛けが満載だ。

 昨年10月、松丸本舗がオープンしたとき、丸善の社長である小城武彦氏は「本はインターネットを通じて買える時代が来ました。では、これからの時代に「リアルな場」としての書店はどうあるべきなのか、これをずっと考えてきました。その一つの答えが「松丸本舗」であります。我々の挑戦であります。世に問うものであります」とコメントした。

 丸の内地球環境新聞によれば、この松丸本舗の客単価は同店比で約2倍、そして客の平均滞在時間は約2〜3時間になるという。出版不況と言われるなか、本屋がいかに生き残るかが課題となっている。そのためには、松丸本舗のような思い切った改革も必要なのかも知れない。

 まだ松丸本舗に行ったことがない人は、まずは『松岡正剛の書棚―松丸本舗の挑戦』を読んで欲しい。きっと松丸本舗の面白さを感じ取ることができるはずだ。
(新刊JP編集部/金井元貴)