だれかに話したくなる本の話

メディアが伝えない日本の真の問題

村上龍のエッセイが面白いのは、メディアの報道において意識的に、または無意識にうやむやのまま表現されている事象を、誰にでもわかる言葉で暴き、文字通り“ミもフタもない”状態にしてしまうからだ。

■草食系男子
 例えば『“草食系男子”が急増中!』などという特集が雑誌等で特集されていた時期があったが、『草食系』『肉食系』といった言葉は結果的に、その背後にある「個人・社会の欲望の退化」という事実を隠してしまった。

■普天間基地移設問題
 また、今年話題となった普天間基地の移設問題についても、どこに移設するのかという議論ばかりで、肝心の「冷戦は終わっているのにどうして沖縄に米軍基地が必要なのか?」 「そもそも沖縄の米軍基地はどこで起きるどんな事態を想定しているのか?」という議論はほとんどされなかった。

 村上氏のエッセイは、そういった社会的な事象に隠された本質を突く。

 今回発売される『逃げる中高年、欲望のない若者たち』(KKベストセラーズ/刊)は、雑誌『メンズジョーカー』(同社/刊)で連載された村上氏のエッセイに書下ろしを加えて書籍化したもの。
2009年後半〜2010年の話題、つまり政権交代にはじまり、普天間基地問題、W杯などのトピックを取り上げながら、今の日本が抱える問題をシャープに切り取っていく。
 
 書下ろしの「21世紀のビートルズ」には、昨年の政権交代の際に村上氏がニューヨークタイムズに寄稿した英文のエッセイ(インターネット上で話題となった)の原文(日本語草稿)も収載されており、こちらも注目だ。

 今、巷で起きている問題の奥にあるものは何か? そして、どうすればそこに届くまなざしを持てるのか?
 日常がサバイバル・ゲームに擬されるような現代を生きる上で、ぜひとも読んでおきたい一冊だ。
(新刊JP編集部)