だれかに話したくなる本の話

基準値スレスレの食品は安全か?

でに多くの方がご存じのとおり、今回の原発事故による放射能汚染で懸念されるのは、大気中に放出された放射性物質による外部被ばくと、放射性物質に汚染された水や食物による内部被ばくです。
 特に放射性ヨウ素やセシウムなどによる内部被ばくは、子どもを持つ親なら神経質にならざるを得ず、極めて重要な心配事となっています。

 政府は水や食品に暫定規制値を設けることで、汚染された食品が市場に出回るのを防ごうとしていますが、理学博士で、核化学が専門であった故・高木仁三郎氏の著書を新装版として緊急出版した『新装版 食卓にあがった放射能』(渡辺美紀子/共著、七つ森書館/刊)を読むと、こうした政府の取組みが全く不十分で、放射性物質の特性がわかっていない、またはわかっているにも関わらず目をつぶっていることがわかります。

 放射性物質の影響でがんや白血病になるリスクを考える時、まず前提としてわかっておかなければいけないのが、放射性物質に「しきい値」はないと考えられていることです(大量の放射性物質を浴びた際に起こる急性障害には、やけどや脱毛などの症状が出る目安となる値があります)。晩発性障害が心配されるので、“浴びた放射線量が○○マイクロシーベルト以下なら、がんや白血病になる心配はない”と言えないことを示します。

 これを踏まえると、政府が食品や水に暫定規制値を設けるということは、しきい値のないものに無理やりしきい値を作ってしまっている、ということです。これを設けたおかげで、暫定規制値が一キロあたり500ベクレルの食肉の場合、501ベクレルはダメで、499ベクレルならOKということになってしまいます。
 高木氏は本書の中で、チェルノブイリ原発事故時の、汚染された輸入食品に対する日本政府の対応をひいて、このことについての警告を発しています。当時の日本では、基準すれすれで検査をパスした食品が市場に出回っていたと考えられます。それと同じことが、今起こっているのです。

 本書は初版から20年前後経過しているにも関わらず、文章は新鮮で、原子力に詳しくない一般人でもわかりやすく書かれている点や、内容の正確さが評価されており、ほぼ同時期に出版され、やはり新装版として再登場した『新装版 チェルノブイリ原発事故』、『新装版 反原発、出前します』(共に七つ森書館/刊)と共に、改めて注目を集めています。

 自分の子どもを少しでも放射能から遠ざけ、守るためにも、原子力や放射能について、メディアの情報に惑わされず、正しい知識を持ちたいもの。
 正しい知識に基づいて、考えうる最悪の事態に備えることは、今や親のつとめなのです。
(新刊JP編集部/山田洋介)