だれかに話したくなる本の話

天野敦之氏「企業の使命は人を幸せにする価値の創造」―新刊出版を記念してトークセッション開催

生まれてから死ぬまで全く「仕事」や「労働」にかかわらずに過ごすことは現代社会においてはほとんど不可能だといえる。当然、所得を得るために我々は働くわけだが、自分が働くことによって世の中に与える影響について考えたことはあるだろうか?

 この問いかけはそのまま企業が世の中に与える影響という問題に重複する。

 ただひたすらに利潤を追いかける姿勢で活動していた企業や個人が行き詰まっているのは現在の経済危機の状況において明らかであり、今後「どんな企業が生き残るのか?」という問いの答えは大きく変わるだろう。

 会計入門書のスタンダードとして認知されつつあるベストセラーシリーズ『会計のことが面白いほどわかる本』(中継出版)の著者として知られる天野敦之氏は、新刊『君を幸せにする会社』(日本実業出版社)で今後の企業の在り方、個人の働き方への明確な指標を示す。

 そして、1月8日、久米繊維工業社長で『考えすぎて動けない人のための「すぐやる!」技術』の著者でもある久米信行氏が明治大学で受け持っている講義に、ゲストとして天野氏が登場。本書の出版を記念したトークセッション(対談授業)が行われた。

 基調講演で天野氏は今後の企業と個人の労働に関しての持論を展開。特に、企業の存在の目的に関しての天野氏は、「人を幸せにする価値の創造」という言葉で表現した。

 企業が得る利益はその対価である。「今回の危機は価値を創造することなく、つまり人を幸せにすることなく人から奪うことで利益を得てきたツケが回ってきた。利益を奪い合う経済はもう限界で、今後は新たな価値を創造し、幸福を与えあう経済スタイルに移行しないと人間社会そのものが継続不可能になる」という同氏の言葉は、現在のこの経済状況下であまりにも説得力がある。

 続けて行われた久米氏とのトークセッションでは、天野氏の著書のテーマでもある『君を幸せにする会社って、本当にあるの? どんな会社なら君や社長、働く人、取引先、お客様が幸せになるのだろう?』をキーワードに、天野氏の質問に久米氏が答えるという形で行われた。

 そこでは、現行の企業体制の中に見え隠れする限界や、他人を食い物にしない経済への移行はすでにちらほらと始まっているということが話され、満席となった教室内の聴講生たちを大きく頷かせていた。

 『君を幸せにする会社』は老舗旅館の2代目であるクマ太郎が悪戦苦闘する中で本当に大切なことに気付いていくという寓話形式のもと、企業のありかた、人材の扱い方、個人の労働へのアプローチを描いている。経済・社会の激変期である今こそ、ぜひ読んでほしい一冊だ。
(レポート/山田洋介)