だれかに話したくなる本の話

「読書に合う音楽」とは一体なんだろうか? ハッとしたある読書家の話

あなたは読書をしているときに、意図的に音楽を背景にかけているだろうか? もしくは、音楽が流れている空間の中で、読書を楽しむことはできるだろうか?

私の場合、自分の部屋などで本を読む時は音楽をかけないようにしている。

ただ、窓を開けていると聞こえてくるピアノの音だったり、外の通りを歩く人たちの話し声だったり、車のエンジン音だったりといった環境音はまったく気にならない。

また、ヴォーカルがない音楽であったり、洋楽であったりならば読書に集中できることもある。いわゆる「作業用BGM」というやつである。

あえて部屋で読書をするときに音楽をかけるなら、ヴォーカルレスでなおかつミニマムな曲がベストだ。

しかし、これはあくまで私個人の話である。

■この世界には、「読書の時間に合う音楽」というコンセプトを元につくられたCDがある

この世界には、「読書の時間に合う音楽」というコンセプトを元につくられたCDがある。

disk unionが主宰する読書用品ブランド「BIBLIOPHILIC」(ビブリオフィリック)からリリースされている“Music For Reading”シリーズのCDは、読書の時に聴く音楽をテーマに選者のこだわりの曲がセレクトされている。

そのシリーズ第1弾作品であり、内沼晋太郎氏セレクトのコンピレーションアルバム『カラオケカーク』は、ヴォーカルレスの音楽が詰まった一枚だ。本を読んでいても集中を妨げない、思索に耽られるシチュエーションを作ってくれる。

内沼氏といえば、下北沢の“ビールが飲める本屋”「B&B」の代表であり、日本を代表するブックコーディネーターとして知られる。この“Music For Reading”シリーズ「BIBLIOPHILIC」のプロデューサーも担当している人物だ。

そんな内沼氏はこのCDのブックレットで、こんなことを書いている。

本は無音でしか読まない、あるいは読めないという人もいる。ぼく自身も、活字の本の場合はヴォーカルがあると読めないし(だから今回のぼくの選曲にはヴォーカルものは入っていない)、特に難解なものの場合はインストでも気が散るので無音にするが、それ以外の場合はなるべく、いろんな音楽を聴きながら読む。単純に気持ちがリラックスするというのもあるけれど、もうひとつは前述のような、本と音楽がつながる瞬間が楽しいからだ。ある本を読み返すと、そのとき聴いていたある音楽が頭の中で鳴りはじめる。あるいはある音楽を聴くと、それを聴きながら読んでいたある本の世界が広がってくる。
(「カラオケカーク」ブックレットP1~2より引用)

本と音楽がつながる瞬間。

内沼氏は、事務所のアシスタントの机の上に置かれた一冊の小説――表紙には「ありがとう!」と書かれた付箋が貼られている――を見かけ、頭の中にダコタ・スイートの「イージー・ステップス」が流れてくる。

『カラオケカーク』の1曲目に収録されているその曲は、彼がその小説を読んでいるときに聴いていた音楽だったという。

■ある本とある曲がつながる瞬間は誰の元にもあるはずで

あの本の表紙を見ると、あの曲のあの音色が頭に流れ出す。または、あの音楽が流れてくると、あの名作のことが頭によぎる。

こんな話を思い出す。

読書家の友人Aが引っ越しをするというので、手伝いをしにいった。小型の段ボールが8畳程度の部屋いっぱいに積み重なっていて、「これ、何が入っているの?」と聞いてみると、本だという。

ほとんどの本は段ボールに入れられていたが、部屋の隅に、数冊ばかり、彼が手持ちする本が重なっていた。私が一番上にあった沢木耕太郎氏の『深夜特急』に手をのばすと、彼は「それ読むと、これを聴きたくなるね」と言い、スマートフォンを取り出して、日本のロックバンド・ROSSOの「Rooster」を流し始めた。

友人Aはかつてインドを旅していたのだが、その最中の長距離移動で、「ROOSTER」を聴きながら『深夜特急』を読んでいたのだという。

「『深夜特急』も『ROOSTER』もその時の気分にフィットしていたんだよな。だから今でもインドの熱気に浸りたいときは、聴きながら読んでいるよ。それに、本って初めて読んだときの自分と対比できるじゃん。だから、あの時の自分から今どう成長したかとか考えるよね」

「読書に合う音楽」はそれぞれによって違うし、いつどこで出会うかは分からない。

なんとなく喫茶店で本を読んでいる時にかかっていた印象的な曲が、いつか読書の時間を彩ることもあるだろう。

普段はあまり音楽を聴きながら読書をすることは私だが、内沼氏や友人Aが語るような「本と音がつながる瞬間」をいつか感じたいと思っている。

探すという感覚ではない。偶然にやってくるという感覚を待つのだ。

(新刊JP編集部/金井元貴)

Music for Reading from Karaoke Kalk By Shintaro Uchinuma

Music for Reading from Karaoke Kalk By Shintaro Uchinuma

心地よい音楽とともに読書を楽しもう

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金井元貴

1984年生。「新刊JP」の編集長です。カープが勝つと喜びます。
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audiobook:「鼠わらし物語」(共作)

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